クラス経営がうまくいかず、心が折れそう……という先生へのアドバイス|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」

連載
沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」

国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

「ダンシング掃除」や「勝手に観光大使」などのユニークな方法で子供たちの「やる気」を引き出すカリスマ教師「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生。「5年生の担任です。異動後、クラスの経営がうまくいかず、クラスを乱す子もいて、どうしてよいかわかりません。心が折れそうなとき、どんなことに力を入れて日々を過ごせばよいのでしょうか」 という、「くまくまこ」さんからの質問にアドバイスいただきました。

ぬまっち連載
撮影/下重修

自分以外の人間が、自分の思い通りにならないのは当たり前

クラスの経営がうまくいかないとき、つい「自分はこんなにがんばっているのに、どうして子供たちは自分の言うことを聞いてくれないのだろう」と考え、悲観的になってしまいがちだよね。

でも、そういう思考に捉われているうちは、何も変わらない。

自分目線で考え始めると、何事もうまくいかなくなってしまう。

そもそも「子供は先生の言うことを聞くもの」「子供は先生の想い通りに動くべき」と思っているのであれば、それが間違い。

なぜ自分の思うように子供が動いてくれないのか。

その理由は、あなたに教師としての力がないからではなく、子供も一人の人間であり、自分とは違う他人だからだ

たとえ家族であっても、自分以外の人間は、自分の思う通りには動いてくれないものだよね。

つまり、自分と違う人間が、自分の思い通りにならなくても当然なんだ。

他人に期待すると減点が増えるが、期待しないと加点が増える

子供も学級経営も、自分の思い通りになるはずだと思っているから、マイナス面ばかり気になってしまう。

しかし、実際には思い通りになることもあれば、ならないこともあるよね。

予想以上に悪くなることもあれば、予想以上にうまくいくこともある。

いずれにせよ、他人に期待していると減点ばかりになるけれど、期待していないと加点することが多くなる

例えば、保護者が何度も子供に「洗濯物はちゃんと洗濯かごに入れてちょうだい」と言っても、子供は洗濯物をあちこちに散らかして、なかなか洗濯かごに入れてくれないという場合。

なぜ子供は保護者の言うことを聞いてくれないのか、その理由は、両親を困らせたいからではなく、その子はお母さんでもお父さんでもないからだ。

洗濯したことがないから、洗濯の大変さがわからないし、洗濯をする前に、洗濯物を拾い集めなくてはならない苦労も想像できないだけ。

最初から思い通りに動かなくても当たり前だと思っていれば、うまくいかなくても「そうくるか。しかたがない。じゃあ次はどう伝えよう」とプラス思考で考えられるし、多少でもうまくいったら「おお、今日はすごいね。やるじゃん」とほめてあげられるはず。

荒れの原因は早めに取り除く。注意事項やお願い事は朝の時間がおススメ

その上で、クラスが荒れていると感じたら、荒れている原因を探り、その原因を取り除く努力をする必要があるだろう。

例えば、小学5年生くらいの子供たちの場合は、いつも優しい先生よりも、悪い行いをした子供がいたらちゃんと叱ってくれる先生のほうが人気があったりする。

また、話合いの時間が無駄に長かったり、帰りの会が長いと不満が溜まりやすいのも高学年の特徴なので注意が必要だ。

ちなみにボクは、注意事項やお願い事、お説教系の話はできるだけ朝の時間にするようにしている。

朝に注意や指導をすると、その日一日はある程度子供もがんばるから、帰りの会では、前の日よりもできたことや改善した点をほめてあげられるので、子供たちも気分よく帰れる。

でも、帰りの会で注意や指導をすると、クラスの雰囲気が悪くなり、子供たちも嫌な記憶が残り、学校を出ても気分がよくないから、不満が溜まりやすくなるんだ。

こうした工夫も、子供たちの立場に立って考えながら、トライ&エラーをくり返して獲得していくもの。

うまくいかずに心が折れそうなときこそ、自分以外の人間は、自分の思うようにならないものだ、そういう視点もあるのかという学びになったと認識し、目線を変えて、どうすればよいのか考えてみよう。

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『板書で分かる世界一のクラスの作り方 ぬまっちの1年生奮闘記 』(中央公論新社)他。 沼田先生のオンラインサロンはこちら>> https://lounge.dmm.com/detail/2955/

取材・構成・文/出浦文絵

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