低学年のやる気を引き出す5つのしかけ〈授業づくり編〉

北海道公立小学校教諭

山田洋一

低学年の子供たちが主体的に考え、自ら学んだり行動したりできるようになるためには、担任はどんなしかけをすればよいのでしょうか。子供たちのやる気を引き出す授業づくりのポイントを紹介します。

執筆/北海道公立小学校教諭・山田洋一

低学年のやる気を引き出す5つのしかけ

①いくつかの方法で伝えよう

教師も子供もマスクをしての生活、マスクをしながらの授業が続けられています。こう した状況では、教師は伝えたつもりでも、実際には伝わっていないことが多いようです。特に、耳から情報を受け取ることが苦手な 子にとっては、マスク越しの不明瞭な教師の指示は、聞き取りにくいものです。

併せて、これまでなら意識しなくても、口形や表情などで、意味を補いながら聞いていたはずですが、それも現在はとても難しいはずです。

はじめはやる気があっても、教師の指示が聞き取れなければ、やる気もだんだんと失われていくに違いありません。

ですから、教師が明瞭に話すように心がける必要があります。

「いつもよりも少し大きめの声」で
「いつもよりもはっきりした口形」で
「いつもよりも多めのジェスチャー」で
「いつもよりもしっかりとしたアイコンタクト」で話すことが大切です。

併せて、音声だけではなく、違ったいくつかの方法で指導言を示すとよいでしょう。

・黒板に板書する(電子黒板に示す)。
・プリントを配付して、そこに指示を書き込んでおく。
・活動指示をした後に、実際にやってみせる。

このように、いくつかの方法で活動の指示をすると、子供たちは安心して取り組めることでしょう。

また、指示が聞き取れなかったときは、いつでも「もう一度、言ってください」と言ってもよいことや、友達にもそのときすぐに質問してもよいというルールにしておくと、子 供たちは安心して学ぶことができます。

マスクをしていても、はっきりした口形やジェスチャーなども取り入れて、子供たちにしっかり伝えようとする先生のイラスト。

②学習の見通しをもてるようにしよう

子供たちの中には、学習内容が分かるとか、分からないという以前に、45分の授業を受けること自体に不安を抱いている子もいます。

「次は、いったい何をするのだろう」
「次は、どんな順番で学習するのだろう」

このような不安をもちながら座っている子もいるのです。

そこで、前の時間が終わったら、ちょっとだけ予告を黒板に書いておきます。

「ひらがなの『ら』の練習をします」
「『あわせていくつ』というがくしゅうです」

また、それに合わせて、1時間の流れを簡単に板書していきます。
「ひゃくだまそろばん」⇒「もんだいをよむ」⇒「もんだいをとく」⇒「せつめいをきく」⇒「4つもんだいをとく」⇒「ふりかえり」

このように、学習の大まかな流れを板書しておき、終わるたびに一つずつ消していきます。

こうすることで、特に時計の読めない一年生は先の見通しがもてるため、学習に参加しやすくなります。また、ゴールがはっきりするので、集中力も持続します。 

③授業はじめの3分を変えよう

6月、7月の低学年の子供たちは、学校生活にも少し慣れ、担任への甘えも出てくるころです。椅子に座っていられなかったり、教室から出てしまったりという子も中にはいます。もちろん、他の先生の協力を得ながら安全の確保は必要です。しかし、促してもなかなか教室にとどまっていられない子供に、強く指導しても、結果としては、よくならない場合が多いようです。

そんなときは、子供を変えるという意識を、授業のほうを変える意識へと変化させてみましょう。特に、授業はじめの3分くらいを意識して変えてみます。

読み聞かせ、じゃんけんゲーム、フラッシュカード、物の一部だけを提示して当てるクイズなど、単純で楽しい活動から始めてみましょう。

そうした活動から授業を始めると、最初の部分だけは意欲的に参加できる子供が出てきます。その場面を捉えて、前向きなフィードバックをするとよいでしょう。

④表現方法を選択させてあげよう

子供たちが、学習においてやる気を見せるのは、やはり「できそうだ」という成功への見通しを感じたときです。最初から、苦手だと感じていることや、成功への道筋が見えにくい場合には、子供たちはやる気になりにくいものです。

そこで、さまざまな子供たちの特質に合った多様な表現方法を提示してみましょう。

例えば、生活科などの表現の時間では、つい観察カードを配付して、「絵と言葉でかいてね」などと簡単に言ってしまいがちです。しかし、どんなによく観察している子も、絵や作文が苦手だと、その後の活動には、前向きにはなりにくいものです。

そこで、表現のしかたについて、次のような選択肢を用いて提示するようにします。

・絵で表すのが得意な人は、絵で描こう。
・作文が得意な人は、作文で書こう。
・お話しが得意な人は、直接先生に話そう。
・組み合わせて伝えても、大丈夫!

このように、よりその子がやる気を出して取り組めるような方法を、選ばせてあげましょう。

生活科の授業で、いろいろな表現方法で示す子供たちのイラスト。

⑤学習材を選択させてあげよう

子供たちの学習へのやる気を引き出すコツに、学習材と自己との関わりを高めるという方法があります。

例えば、図工で絵を描くときに、描きたいものに合わせて画用紙の色を選ぶ。自分の力に合った計算プリントを選ぶ。生活科で栽培する植物を、目標から逸脱しない範囲で選ぶといったものです。

このように学習材を選ぶだけで、学習材と子供との関係は高まり、自律的に学習に取り組むようにもなります。

参考文献/トレイシー・E・ホール、アン・マイヤー、デイビッド・H・ローズ編著、バーンズ亀山静子訳『UDL 学びのユニバーサルデザイン』(東洋館出版)

イラスト/浅羽ピピ

『教育技術 小一小二』2021年6/7月号より

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