GIGAスクール時代、小学生に情報モラルとリテラシーを伝える授業
小学校で1人1台、PCまたはタブレットが支給され、子どもたちは家に持ち帰ることにもなりました。情報モラルやリテラシーについては、子供たち自身が考え、正しく身につけることが大切です。ICT教育に先進的に取り組んでいる千葉県柏市立手賀東小学校で、端末を子どもたちに渡す際に行っている授業の様子をレポートします。
監修/千葉県柏市立手賀東小学校校長・佐和伸明
なぜ、タブレットが配られるの?
本時は5、6年生の子どもたちを対象とし、Google Chrome Bookを全員に手渡す際に行われました。
授業は、校長の佐和伸明先生が担当。
子どもたちが自分専用のタブレットを使うにあたっての約束事を、ガイダンスの内容をもとに自ら考え、校長先生と取り決めを交わすことで、タブレットが支給される、という流れをとりました。
導入段階で佐和先生は、来るべきSociety5.0の社会について解説。それは日本政府による提言であり、国家政策の一環として、子どもたちのもとへタブレット端末が届いた、ということを、分かりやすく説明しました。
本時のねらい
タブレットを使うためには、どのようなことに気を付ければよいかを考え、自分のめあてを決めます。そのため、「タブレット端末の使い方 校長先生との約束」というワークシートを全員に配付し、そこに各々が約束事を記入して提出します。
GIGAスクール構想により、多くの学校で1人1台端末や高速大容量の通信環境が整備されますが、子どもたち一人ひとりが学びのツールとして主体的に活用していくためには、学校や家庭でのタブレットなど端末の適切な使い方、IDやパスワードの適切な管理について子どもたち自身に考えさせる必要があります。
「タブレットを大切に使いなさい」と言葉だけの指導ではなく、動画で他者の問題行動を見つけることを通し、どのように使えばよいか、大切に使うためにはどうすればよいかなどを考えさせ、自分自身の行動をふり返らせるようにします。それらを踏まえ学校や家庭で「どう行動したらよいか」を考えワークシートに書かせることによって、タブレットなどの端末を上手に活用するための行動を促すようにしたいと思っています。(佐和伸明先生)
タブレットを正しく使うためのリテラシーを、3つの側面から考えよう
(1)タブレット端末を大切に使うために(こわさないために)
まず、文科省制作の上記動画「学習用タブレットの上手な使い方」の中から、議論すべき内容に沿ったパートを、全員で視聴します。
動画では「乱雑な机の上でタブレットを使う」「タブレット入りの道具袋を椅子にぶつける」など、タブレットを誤って壊してしまう様々な状況を紹介。子どもたちは「壊さないためには、どうすればよかったかな?」を考え、気付いたことを話し合い、ワークシートに書きこんでいきます。
○タブレットの上に、物を置かない。
○机の上を散らかしたままにしない。
○タブレットが入ったかばんを振り回さない。
・・・等々。
子どもたちはワークシートに上のような文章を書きこんでいきました。
(2)タブレット端末でやってはいけないこと
次に、個人情報の取り扱いを誤ったり、危険なコンテンツによる被害を受けてしまったりなど、タブレット使用して情報を取り扱う際の失敗例について検討を行いました。タブレットは自宅に持ち帰ることも可能となるので、家庭生活での取り扱いについても考えます。
○IDとパスワードを人に教えない。
○勝手にデータを消さない。
○約束をやぶって動画を観ない。
○むやみに動画を開かない。
○アプリをインストールしない。
○困ったことが起こったら先生や家の人に相談する。
……等々
子どもたちはワークシートに上のような文章を書きこんでいきました。
(3)タブレット端末の上手な使い方
乱暴な、あるいは誤った使い方をしないように注意するだけでなく、よりよい使い方をするために「ほかにもどんな使い方ができるかな?」について考え、気付いたことを話し合います。
話し合ったことを基に、今後、学校や家庭でタブレットを使う際に、自分はどのようなことに気を付けるか、どのように活用するかを決めて、ワークシートに書きます。
○いろいろなことを調べる。
○調べたことをまとめる。
○考えたことを発表する。
……等々
子どもたちはワークシートに上のような内容の文章を書きこんでいきました。
子どもたちがサインをして校長先生と約束をする
子どもたちが項目のすべてについて書き込んだワークシートに自分の名前をサインし、校長先生に確認をしてもらいます。
子どもたちがタブレットを受け取る
子どもたちのワークシートを確認し、校長先生が印鑑を押して認められたら、タブレットとパスワードを受け取ります。
自分のパスワードを入力し、タブレットを起動させる
子どもたちは、担任の先生からタブレットとパスワードを受け取り、タブレットを起動させます。
本時でめざす児童の姿は、学校や家庭でのタブレットの使用について、これまでの自身の使い方をふり返り、適切に使うことができること。また、新しい文房具として、学校や家庭での学習で効果的に活用することができることです。(佐和伸明先生)
取材・文・写真・構成/浅原孝子