ぬまっちが最初の保護者会で必ず伝えること|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」

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沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」
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国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

子供が自ら伸びる独自の授業や実践で話題となり、保護者からも絶大な信頼を集めるカリスマ教師「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生。
今回は 、年度最初の保護者会で、沼田先生が保護者に必ず伝えていることについて聞きました。

ぬまっち連載
撮影/下重修

クラスのシステムについて、具体的に説明

最初の保護者会ではまずクラスのシステムについてきちんと伝えるし、学級通信にも具体的に書く

ボクの場合、毎週行う漢字テストなど、ちょっと変わったシステムを導入しているので説明が必要だからだ。
「このクラスでは毎週13問の漢字テストをします。漢字テストは何点取れたかどうかが問題なのではなく、全問正解なら合格、それ以外はすべて不合格。間違えた漢字を10回書いて出せば合格となり、その週の漢字テストはクリアとなります。そして1週間後の同じ曜日の同じ時間に漢字テストをするので、それまでに提出しなければ、全問やり直しさせるというペナルティを付けているので、そうならないように注意してあげてください」などと伝えておく。

保護者が不安に感じやすい「子供の特徴」についてアドバイス

さらに保護者会では、子供の発達段階に合わせてその学年の子供の特徴について話すようにしている。

とくに保護者が不安に感じやすい子供の特徴については、具体例を挙げながら話す

例えば、「年齢が上がるにつれ子供が学校の話をしなくなった」と不満を漏らす保護者はたくさんいるよね。

だから、「家で学校であったことをすべて話すと、うっかり自分にとって不利な情報も与えてしまい、怒られてしまったりすることもありますよね。だから子供はだんだん学習して『何も言わない方が得だ』と思い、話をしなくなるんです」などと解説し、対処法もアドバイスする。

「学校から帰ってくると、お母さんが手ぐすね引いて待っていて『今日は学校どうだった?』なんて聞いたら、誰でも『別に』って言いますよ。毎日学校でスペシャルなことがあるわけではないですからね。毎日お父さんが会社から帰ってきて、『今日は家はどうだった?』って聞かれたらどうですか? 『面倒くさい』って思いますよね(笑)。だからもっと具体的な質問をしてあげてください。例えば献立表を見て『今日のハンバーグは何味だった? ケチャップ? 塩コショウ?』という感じで聞けば、『デミグラスソースだよ』などと答えてくれるでしょう。そうすれば『給食でデミグラスソースが出るってすごくない?』などと会話もはずむはずです。でももし、『給食どうだった?』という聞き方をすれば、『ふつう』という答えが返ってきてしまう。だから『ふつう』にならないような聞き方をしてください
などと笑い話を交えながら説明をしておく。

子供は家では自分に不利な話はしないことを伝えておく

子供同士のトラブルの対処法ついても、最初の保護者会で伝えていた方がよいと思う。

「子供同士のトラブルで、なにか問題があればボクからお電話で伝えます。お子さんが、誰かと喧嘩をしたという話を家でしたとしても、ボクから電話がなかったということは、子供同士で解決ができる問題なので、学校できちんと対応するということか、もしくは解決済みということですから信用してください」と伝える。

さらに、子供の話を鵜のみにすることの危険性を伝えておくことも重要。

「子供が誰かにいじめられたなどと訴えるようなことがあれば、直接ボクに聞いてください。事実を確認して対処します。しかし、子供は絶対に家で自分に不利になる話はしません。自分が殴られたという話はしても、自分も殴ったという事実は自分から話さないものです。子供の話を鵜呑みにするのは危険です。ただ、少しでも気になることがあれば、学校にお電話をください。教師と家庭で情報交換をしておくことで、見守りの層が厚くなります」などと伝える。

突っ込まれてもよいプライベートについては、あえて自己開示する

自己紹介については、特別な工夫はしていない。
ただ、プライベートについて保護者からいじられても大丈夫なことは、ある程度自己開示する。
もちろん、これは 先生のキャラクターにもよると思うから、絶対にお薦めというわけではないけれど、ボクは保護者にとっていじりやすいタイプのようで、よくプライベートを突っ込まれたりするんだ。でも突っ込みどころがあるおかげで、保護者会はいつも勝手に盛り上がる。
自分のことを何もかも隠そうとすると、逆に勘ぐりたくなる人もいるだろうし、保護者との距離を縮めるためにも、突っ込まれてもよいネタは開示して、いじられキャラになるのも悪くないと思うよ。

保護者と教師は「チームである」という意識づけが大事

最初の保護者会に限らず、一年を通して保護者会で伝えるべきこととして最も大事なことは、「教師と保護者は敵対関係ではなく、協力関係である」ということ。「教師は敵ではなく、味方です」というニュアンスのことはいろいろな言い方で、さまざまな場面でとにかくたくさん伝える
子供のことを一緒に支えていくという意味で、「私たちはチームである」という意識づけは何度も、根気強く行う必要があると思っている。

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『板書で分かる世界一のクラスの作り方 ぬまっちの1年生奮闘記 』(中央公論新社)他。 沼田先生のオンラインサロンはこちら>> https://lounge.dmm.com/detail/2955/

取材・構成・文/出浦文絵

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