荒れ対策にも有効!教室や体育館でできる学級レク5選
「最近、指導が入りにくくなった」「荒れ始めているかも」と感じたら、すぐ対策に打って出なくてはなりません。荒れ防止に有効なのは、何と言ってもクラスの信頼関係。そのベースになるコミュニケーションを図るのにオススメの学級レクリエーションを5つ紹介します。
執筆・イラスト/フリーランスティーチャー 田中光夫
目次
自分・クラスの仲間・先生・保護者みんなが笑顔
「後出しじゃんけん」
福岡県公立小学校教諭 内藤慎治先生
教師が子どもたちのつながりをつくる主体者ではなく、その役を子どもたちに譲ることまでを見通したレクリエーションでクラスをつなげます。
<ねらい>
・子どもの主体性と対話を生み出す
・温かな空気が生まれる
【進め方】
教師が「じゃんけんポン」でグーチョキパーのどれかを出した後、ワンテンポ遅れて子どもたちが「ポン」と言いながらグーチョキパーを出す後出しじゃんけん。じゃんけんの前に、教師が勝つ条件を言ってからはじめます。
1.「あいこ」が勝ち
教師が「あいこになりましょう、じゃんけんポン!」と言ったら1テンポ遅れて、子どもたちが「ポン」とじゃんけんを行い、あいこになれば勝ち。
2.「勝ち」が勝ち
1と同様に「勝ちましょう、じゃんけんポン!」と言って後出しじゃんけんをし、勝った人が勝ち。
3.「負け」が勝ち
1と同様に「負けましょう、じゃんけんポン!」と言って後出しじゃんけんをし、負けた人が勝ち。
【発展】
■かけ声を変える
勝ち負けのルールは変えず、次のようにかけ声を変えていきます。
教師が「じゃんけんポン」と言ったら、子どもは「パン」
教師が「じゃんけんパン」と言ったら、子どもは「ポン」
■班などのグループで行う
教師役を各班で決め、各班で楽しみます。「みんなを楽しませている」というファシリテーター役を子どもたちに経験させることで、休み時間も自分たちで行うようになり、子どもたちの仲がよくなります。
■クラス全員vs.教師で目標を決めて行う
「連続で何回勝てるかな? 全員で先生に勝つ連続回数を増やしましょう」と言って後出しじゃんけんを行い、回数を数えます。「【みんなで】を意識して、心を一つにしたからこんなに先生に勝てたのですね。みんながみんなのことを考えることは、素敵なことですね」と仲間意識を高めます。
【活動の様子】
クラス全員で行うときに勝ちの回数が伸びない時は、グループで行い、勝つ練習をします。クラスで記録を伸ばすことを目標にすると、じゃんけんが苦手な一人のためにみんなが考えるようになります。
【教師の視点】
写真や動画を撮り、学級通信に載せて笑顔を広めたり、懇談会で子どもの様子を見せたりすると、保護者の安心感が増します。また、教師と子ども、子ども同士の関係性が深まります。
【吊り橋効果】で心の距離が一気に縮まる!
「天空じゃんけん」
宮城県公立小学校教諭 鈴木優太先生
「机の上に立つ」というハラハラワクワクの心が大きく動く体験になります。この体験を共有することで「特別な絆」が芽生えます。恋愛でもよく言われるあの【吊り橋効果】です。
<ねらい>
・心が大きく動く体験をする
・仲間と力を合わせる心地よさを体験する
・ルールを守る価値を体験的に学ぶ
【進め方】
イスや机の上に立つ前に、上靴を脱ぎ、安全に気を付ける等の約束を確認します。
1.机を向かい合わせ、下に潜り、パートナー(2人or3人)とじゃんけんする。
2.一度勝つとイスに座り、二度勝つとイスの上に立ち、三度勝つと机の上に立つ。
3.パートナーとともに机の上に立てるまで続ける。
【発展】
■机の上で活動しよう
『天空音読』や『天空合唱』を机の上で全員で行います。のびのびとした声が出ます。
■逆転ルールで席に戻ろう
1.机の上に立ち、じゃんけんをする。
2.一度負けると椅子の上に立ち、二度負けると椅子に座る。
3.パートナーどちらもが椅子に座るまで続ける。
【活動の様子】
机の上に辿り着くと、パートナーと喜び合う姿が見られます。興奮と感動に包まれた強烈な体験直後に、子どもたち自身の【実感】を振り返る時間をもつことがポイントです。「2人で机の上に立てた時どうだった?」と聞くと、「ようやく勝ってくれてやったー!と思った。」「うれしくてハイタッチしたよ。」など。
また、「最後まで楽しく行うために大切なことって?」と聞くと「ルールを守って安全に気を付けること。」「パートナーとの協力を楽しむことが大切。」などの意見があり、【実感】を共有し合うことで、先述した〈ねらい〉に迫ることができます。
【教師の視点】
くれぐれも安全に十分に配慮して実践します。心が大きく動いた活動の直後だからこそ、「振り返り」の中から価値ある【実感】をザクザクと掘り出すことができます。「振り返り」を促すために、撮影した写真を提示するのも効果的。
心をそろえて打ち上げよう
「花火・DA・ドーン!」
山形県公立小学校教諭 瀬野俊彦先生
花火のドキドキ・ワクワク感を教室で再現します。誰でもできるじゃんけんと、誰もが知っている花火を組み合わせたアクティビティです。ドカンッと教室の雰囲気を温めてみてください。
<ねらい>
・声をそろえる心地よさを味わう。
・ハイタッチをできる雰囲気をつくる。
【進め方】
1.全員立ち、人数を決めてじゃんけんをする。かけ声は「じゃんけんポン」のリズムに合わせて「花火・DA・ドーン」で手を出す。
2.全員が同じ手でそろったら「ドーン」と言って、ハイタッチをする。はじめは近くの席の友達と行い、慣れたら、教室の中を自由に動き、たくさんの相手とアクティビティをする。
【発展】
■花火を消す「火消し屋」登場
3人1組で「花火・DA・ドーン」を行う。全員同じ手なら、3人で「ドーン」と言ってハイタッチをする。2人が同じ手なら、2人で「ドーン」とハイタッチをし、残りの1人は、2人にハイタッチさせないように、「シュッ」と言って、2人の間に入って邪魔をする(火消し屋)。
火消し屋に邪魔される前にハイタッチできれば、打ち上げ成功。3回花火を打ち上げ成功した人の勝ちなど、ルールをつくると盛り上がる。
【活動の様子】
「ドーン」と言って声をそろえること、ハイタッチをすることで、一体感が生まれ、教室の空気が温かくなります。温まったところで、人数を少しずつ増やしたり、途中から火消し屋を登場させたりすることで、難易度・ゲーム性が上がります。誰とでも楽しい雰囲気をつくれる人間関係づくりにつながっていきます。
【教師の視点】
場の温まり具合、子どもたちの様子を見ながら、アクティビティの難易度を上げていくのがポイントです。先生も率先して声を出し、楽しい雰囲気をつくってみてください。
最後に残っているのはだれだ!やればやるだけ楽しくなる
「天下統一ドッジボール」
愛知県公立小学校教諭 奥井貴仁先生
体育館全体を使って行うドッジボールです。ボールが5つあるので、いつ当てられるか気が抜けません。アウトになってしまった人も自分を当てた人が当たれば復活できます。
【ねらい】
・クラスのみんなで楽しい時間を共有する。
・自分たちで問題解決できることを体験的に学ぶ。
【進め方】
1.ソフトドッジボールを5つ用意する。体育館全体がコートで、どこに逃げてもよい。
2.制限時間を決め、教師が5つのボールを適当に投げてゲームスタート。
3.ボールを取った人は、だれかに投げて当てる。当たった人はアウトとなり、ステージの上にあがる。
4.当たった人は、自分を当てた人を目で追い、その人が当たれば復活できる。
5.制限時間になり、コートに残っていた人が勝ち。
【発展】
ペアを組み、「ペアは5m以上離れてはいけない」「片方が当たればアウト」などのルールを決める。すると、事前に作戦を立てる姿や、苦手な子を守る姿があり、さらなる盛り上がりを見せます。
【活動の様子】
コート上では、当てられないように常に逃げ回り、ステージ上では、友達を目で追いながら早く復活できるようにと声を出します。このように全員が参加できるのが特徴です。たくさんの人を当てた子が、残り数秒で当てられ、多くの子が復活という、大逆転があるのも楽しさの一つです。「楽しかった。もう1回したい!」と多くの子が言いに来ます。
【教師の視点】
試合の後は、意見交流する時間を設けます。よい意見は共有し、解決すべき問題は子どもたちの話合いで解決するように促します。もし、解決できない場合は、もう一度話合い、新たな解決策をみんなで考えます。こういったトライ&エラーの体験を意図的に積み重ねることで、自分たちで解決しようとする雰囲気を生み出します。
みんなでわいわい失敗を楽しもう
「キャッチ!」
子どもたちにのびのびと自己表現させるためには、学級内の「安全・安心の土台」が重要。みんなで失敗する(Lose-Lose)レクリエーションを通し、安心して失敗できる人間関係を育みましょう。
【ねらい】
・失敗を責めない&気にしない関係性を育む。
【進め方】
1.机・イスを下げて、全員でサークルをつくる。
2.右手の人差し指を天井に向けて立て、左手は広げて左隣の人の前に出す。
3.天井に向けた右手人差し指を右隣の人の左手のひらにちょこんと当てる。
4.教師の「キャッチ!」の合図で、左手で左隣の人の人差し指をキャッチし、右手人差し指は右隣の人にキャッチされないように逃げる。
【発展】
慣れてきたところで、失敗を楽しむためのバリエーションを追加しましょう。
・「キャッチ」の合図を待つ間、突然「みんな! 楽しんでますか?」など、普通に話しかけてフライングを誘う。
・「キャッキャッキャッキャッチ!」と「キャ」を連呼してフェイントをかける。
・「キャッチ」の代わりに、「キャベツ」「キャッチャー」「キャラメル」など頭に「キャ」の付くかけ声でフライングを狙う。
・「キャッチ」以外のかけ声の時、全員でする特別なアクションを決める。
例)「キャット!」なら、招き猫のポーズで「ニャー」と鳴く。「キャッチャー!」なら、体の前で一度手拍子した後「ばっちこーい!」と叫ぶ。
【活動の様子】
発展で活動するころには、失敗するたび笑い声が生まれているはずです。慣れてきたらかけ声を子どもたちに任せてみましょう。また、「チェンジ!」のかけ声で全員が場所替えをすると、より多くの人と失敗を楽しむことができます。
【教師の視点】
勝ち負けにこだわる子がいる場合は、教師が積極的に「やられちゃった!」「つかまっちゃった、ガハハ!」など、笑顔で失敗を楽しむ姿を示しながら、明るい雰囲気をつくりましょう。
『小四教育技術』2017年11月号より