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「主体的・対話的で深い学び」の実践例・運動会準備編

2019/5/10

新学習指導要領にある「主体的・対話的で深い学び」の視点から、授業改善に取り組む学校は多いと思います。しかし、これはなかなか難しい課題でもあります。神奈川県横須賀市立公立小学校教諭・長沼久美子先生が執筆した『教育技術小一小二』5月号の記事を基に、「主体的・対話的で深い学び」を、運動会準備の授業を通して実践する方法を紹介します。簡単で取り入れやすいアイデアの実践例をぜひ参考にしてください。

主体的・対話的で深い学びの実践例
イラスト/みながわこう

主体的・対話的で深い学び-対話のポイント4つ

入学したばかりの1年生にとって、5月実施の運動会は、けっして楽ではありません。1年生に限ったことではありませんね。運動会では、団体競技のルールを覚えて、徒競走の走順を頭に入れて、ダンスの動きを体に叩き込む。そこに「対話」を持ち込むことは、難しいように感じられるかもしれません。しかし、先生が動きをひたすら教えてしまう教育観は、時代にマッチしません。

新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」を無視するわけにはいきません。対話を通して、運動会に子ども自身の心の声を生かす方法を試みてみませんか? 低学年にお勧めの運動会における対話を、実践例で具体的に示しながら紹介します。

新学習指導要領にある「主体的・対話的で深い学び」の重要性は、教育現場でも十分共有されています。しかし「主体的・対話的で深い学び」は抽象的です。今すぐ授業に活用できる実践例こそ、教師で共有したいものです。

低学年向けを考慮し、「主体的・対話的で深い学び」の対話にフォーカスして話を続けたいと思います。

授業で「主体的・対話的で深い学び」を実践するのに、運動会はとても良いチャンスです。運動会の競技や種目は、みんなでアイデアを出し合う要素がたくさんあります。対話をすることで運動会を作り上げていく面白さをぜひ、子ども達に体験させてあげましょう。その体験こそ、子ども自身の思考と表現を育んでいくことにつながるのではないでしょうか。

「主体的・対話的で深い学び」では、特に「対話」のイメージがあいまいです。対話は、議論と比べて考えるとイメージしやすいですね。議論は相手を論破する、説得する行為なのに対して、対話はお互いの考えを受け入れて、新たな価値を生み出す話し合い、と捉えてください。

「主体的・対話的で深い学び」の対話において、特に重要なポイントは4つあります。
(1)何について話しているのか(目的)を子どもたちが意識する
(2)目的に対して自分のアイデアを表現する
(3)友だちの意見を聞く
(4)友だちの意見から、さらに自分のアイデアを広げていく

対話ですが、低学年であれば「何について話しているのか」、まず子ども自身が対話の目的を意識できていることが大切です。さらに、目的に対して自分のアイデアを表現できることも重要ですね。友だちの意見を聞き「なるほど」「そんなアイデアもありだ」「だったら、こんなのはどうだろう」と自分の考えを広げていくことによって、対話を通しての学びは深まるのです。

低学年から導入「運動会における対話」実践例

新学習指導要領に掲げられた「主体的・対話的で深い学び」を運動会準備を通して実際にどう実現していくか。次に、低学年向けの実践例をあげてお話します。

【実践例1】 “主体的・対話的で深い学び”を作戦会議で実践

子ども達は「作戦会議」が大好きですよね!「みんなで作戦会議をしよう」と誘うと、低学年の子どもたちは目をキラキラさせて「作戦会議だって!」と興味を持ちます。

運動会では、玉入れや大玉運びなど団体競技が多くあります。みんなで力を合わせて競う団体競技は作戦会議に向いています。

主体的・対話的で深い学びの実践において、最初のコツは「対話では、何について話しているのかをはっきりさせること」です。

【主体的・対話的で深い学びの実践例】
学習指導・教師の声かけ
玉入れの場合「どうしたら、籠にたくさん玉を入れることができるかな?」
大玉運びの場合「どうすれば、大玉を運びやすいかな?」

主体的で対話的な深い学びを実現させる第一歩は、話し合いのテーマをしっかり子どもに把握させることです。子どもたちにわかりやすく、話し合いの目的を伝えて「作戦会議」をスタートしてください!

【実践例2】ルールの簡単な競技から始めてみる

作戦会議では、ルールの簡単な競技から話し合いを始めるといいと思います。玉入れのルールは簡単ですね。玉を投げて籠に入れるだけ。低学年の子どもにとっても単純明快です。

「さぁ、運動会にむかって、作戦会議スタート!」と声をかけたら、もうひと押し、子どもが主体的に対話できるようリードします。ポイントは作戦会議=競技に勝つための話し合い、という点です。

【主体的・対話的で深い学びの実践例】
学習指導・教師の声かけ
「玉入れは、玉をたくさん入れた方が勝ちだよね? だから、玉をたくさん入れる方法について作戦会議をしよう」

「玉をたくさん入れたほうが勝ち」つまり「玉をたくさん入れるにはどうしたらいいんだろう」と、子ども達はあれこれと考え出します。

玉入れは、籠に玉を入れる動作を工夫することがポイントになるため、低学年でも意見を出しやすいと思います。さらに実際に籠と玉を用意して、実演できるようにすると、子どももわかりやすくなります。

「籠をよく見て投げると入る」
「下投げで玉を投げるのは?」
「一度にたくさん玉を投げればいいんじゃない?」

友だちの意見を聞き「その通り!」と思い、そこからまた、自分のアイデアを出していく。活発な話し合いができれば、対話的な深い学びに繋がります。

主体的・対話的で深い学びの実践例
イラスト/みながわこう

【実践例3】教師の“ひと言”で多様な意見を引き出す

主体的・対話的で深い学びを実践するにあたって、教師のちょっとした配慮によって、より深い学びに繋がります。

大玉運びもよくある団体競技です。低学年の場合、大玉運びがどういう競技か理解していないこともあります。そこで、作戦会議をする前にまず、実際に大玉運びを子どもたちに経験させてみましょう。

大玉運びをやってみた子どもは「大玉運びがうまくいくとき、いかないとき」が実感できます。大玉がすぐ落ちてしまったり、誰かが転んでしまったり、最初はなかなかうまくいきません。自然と「こうすれば、もっと運びやすいような気がする」と、工夫の考えが生まれます。

この時、教師がさらにアドバイスをすると、もっとうまくいきます。

【主体的・対話的で深い学びの実践例】
学習指導・教師の声かけ
「背の高さが違うと運びにくそうだね」
「平らにしないと落ちそうだね」

子どもたちはその言葉を受け入れて、作戦会議の話し合いの中で思い出し、
「背の高さが同じくらいの子たちがグループになろうよ」
「横に倒れないように、みんなでまっすぐに持とうよ」
と、より具体的な意見が出てくることでしょう。

主体的・対話的で深い学びの実践例
イラスト/みながわこう

【実践例4】子どもたちがダンスの振付を考える

運動会では、団体競技の他に、表現運動があります。いわゆるダンスです。低学年のダンスはかわいいので、保護者にも大人気ですね。

ダンスでも対話を通して、体の動きを話し合うことができます。例えば、8拍分、16拍分の振付を話し合います。

【主体的・対話的で深い学びの実践例】
学習指導・教師の声かけ
「みんなでどんな踊りがいいか、考えてみようか?」

ひとりの子どもが
「輪になるのは?」
と発言すると、とたんに次々と意見が広がります。
「手のひらをキラキラと動かしながら、両腕を下げる」
「片手ずつ腕をあげて、下げる」

単純な動きでも、まったく問題ありません。踊りの内容を考えながら話し合い、子どもたち自身で振付を考えていくこと。運動会の踊りを振り付けるという目的から、主体的・対話的で深い学びを、ごく自然に行えるのが大きなメリットです。

主体的・対話的で深い学びの実践例
イラスト/みながわこう

【実践例5】小道具選びも対話で!

ダンスを例にあげましたが、表現運動では小道具もよく使います。スズランテープでポンポンを作ったり、画用紙を蛇腹に折って扇子を作ったり、手首にリボンを巻いたりします。

ここにもまた、主体的・対話的で深い学びを実践できるチャンスがあります。ダンス用の小道具に、どれを選ぶか、何がいいかを子どもたち自身に考えてもらいます。ただ、運動会の経験が少ない低学年の子どもたちに「どんな小道具を使いたい?」と聞いても、答えが返ってこないことが予想されます。

【主体的・対話的で深い学びの実践例】
学習指導・教師の声かけ
「テープで作るポンポン、薄い紙で作るお花、画用紙で扇子も作れるし、メガホンみたいのも作れるよ」

子どもたちにいくつかの選択肢を示せば、どれがいいか具体的にわかります。会話も活発になるでしょう。

主体的・対話的な深い学びを意識するならば、運動会で使用する曲やダンスの曲から、子どもがイメージするものを考えさせるという方法もあります。

【主体的・対話的で深い学びの実践例】
学習指導・教師の声かけ
「この曲を聴いてみて、どんな感じがする?」
もし、あまり答えがないようならもう少し説明して
「元気な曲かな、早いテンポだね」
「ゆっくりな曲だよね」

とヒントを出してもいいかもしれません。すると、「チアリーダーのように元気な曲だからポンポン!」「お祭りっぽいね」「お祭りだったら、法被は?」「宇宙みたいな曲だなぁ」「キラキラしてる、銀色の飾り!」こんな風に子どもたちはどんどん発想を広げていくでしょう。それは教師の想像を超えることもしばしばあります。

【実践例6】前向きな言葉で応援歌を作ろう

運動会で、応援歌を作ってみるのもよいと思います。「低学年オリジナル応援歌」を作って、上級生の得点競技で応援に使ってみるなど、主体的な運動会にひと役買いそうです。

メロディーは、子どもたちに身近なもの、みんな知っている曲を選ぶと、高学年も大人も、観覧している方も楽しめます。

応援歌に使いやすい曲
・アンパンマンのマーチ
・勇気100%
・さんぽ

どれも定番の曲です。聞き慣れた曲なので、低学年でも替え歌にしやすいはずです。大切なのは「前向きな言葉を使う」ことです。ここで対話の重要性が深まります。

子どもたちが話し合いながら、入れたい言葉を出していきます。
「『頑張れ』をいれたい」「『全力』っていうのは?」
「負けないは?」「無敵だ!」

すると、誰かが「つっぱしれ」なんて元気な言葉も口にします。応援する言葉集めをするだけでも、低学年にとっては十分な対話です。ただ、盛り上がってくると
「赤組なんて、やっつけろ!」「弱いぞ!白組」
と、相手を否定するような言葉も出てくるでしょう。

【主体的・対話的で深い学びの実践例】
学習指導・前向きな言葉を選ぶ
「もっと優しい別の言い方に変えよう」
「元気がでるような言葉はないかな」

替え歌を作る場合にも、人権的な配慮が大切です。好ましくない言葉が出たときには、教師が子どもたちに「前向きな言葉を選ぶように」声がけをしましょう。 友だちの話を聞く、自分の意見を表現する、でも誰かを傷つけるような言葉は使わない、思いやりや優しさを学ぶ機会にもなります。それこそが、対話の中での「深い学び」となるのではないでしょうか。

主体的・対話的で深い学びの実践例
イラスト/みながわこう

教師のアドバイスも重要

生き方につながる学びは、新学習指導要領の大きな柱のひとつです。対話がコミュニケーション能力に磨きをかける理由は、相手を否定しないことにあり、その姿勢が自分の生き方につながっていきます。

応援歌の話にあるように、子どもから相手を否定するような言葉がでたら、その場で教師が軌道修正をしてあげましょう。対話に関しても、コミュニケーションをとるなかで、相手を否定する方向にいかないよう見守りたいですね。

「わたしはこう思う」とひとりの子どもが発言した時、
「それっていい考えだね!」
「そんなやり方じゃダメだ!」

前者は建設的な話し合いに結びつきます。
後者は否定的で、冒頭で説明したように「議論」になっても、「対話」とはなりません。

「主体的・対話的で深い学び」では
・相手の意見を尊重し、新しい考えを見つける
・友だちの意見を知ることで、新しい「ものの見方」ができるようになる
このような建設的な話し合いが大切です。対話の流れを見守りながら、相手を中傷したり、否定したりする言葉が出たときには適切な教師のアドバイスが必要です。

対話を通して運動会を作り上げていく

新学習指導要領のもと、教師がICTをうまく活用することで、主体的・対話的で深い学びを実現する方法もよく取り上げられます。とはいえ、ICTは環境整備も必要です。

今回は、今すぐにでも応用できる「主体的・対話的で深い学び」の指導法として、運動会での「対話」による学習をご紹介しました。学校の現場では、クラス全員で話し合う時間をとることさえ、ままなりません。運動会は「主体的・対話的で深い学び」を実践できる、とてもよい機会になると思います。

ぜひ、実践例にあげたような方法を上手に活用して、新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」を授業に取り入れていただきたいと思います。対話の学びで子どもが主体的に運動会を作り上げていく、思い出深い楽しい運動会になるといいですね。

『教育技術 小一小二』2019年5月号より

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