国語の教材分析⑥ ~分析の観点「主題」~

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大阪府公立小学校教諭

樋口綾香

Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載! 国語の教材分析シリーズ第6回は、「主題」を切り口に、教材を読み深めていくポイントについてお伝えします。

執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香

こくご
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「主題」とは

「主題」の定義について、『国語教育指導用語辞典・第四版』において、寺崎賢一氏は次のように述べています。

“日本の国語教育における文学的文章の「主題」の定義は、国語教育史と文学理論の変遷とを考慮したとき、「作家論」的立場、「作品論」的立場、「テクスト論(読者論)」的立場の3つに分けられるだろう。”

かつて、戦後の主題指導は、「作家論」的立場と「作品論」的立場が主流でした。

「作家論」的立場の主題の定義は、「書き手が書き表そうとした中心の考え」であり、「作品論」的立場の主題の定義は、「作品に描かれている人間の生活現象に内在している一般的なもの・本質的なもの」とされています。

3つの立場で定義が異なる主題は、平成20年度に学習指導要領が改定され、「主題」という言葉が削除されてからは、「テクスト論(読者論)」的立場の主題が支持されています。

「テクスト論」が支持された理由は、

“「主題追求の授業」が、いずれ(「作家論」的立場・「作品論」的立場の主題追求の授業)も教師の描いている一つの「主題」に生徒を誘導して導こうとするものであったため、その点が強く批判され、主題追求の授業は国語教育界では次第に肩身の狭いものになってきている。”

とされています。テクスト論の主題の定義は困難であるとしながらも、「書かれたものに刺激されて読者が創造する一筋の主張」と書かれています。

テクスト論的立場の主題が支持されたことは、私たちの教材分析や授業づくりにはどのように影響するのでしょう。

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主題追求の授業で大切なこと

主題追求の授業において大切なことは、地の文の描写や会話文、語りを読み味わいながら、想像を膨らませて、「事件」と「山場」に着目し、中心人物の変容を捉えることです。

中心人物の変容を捉えることは、読み取りの授業を通して1つのゴールに向かうべき課題ですが、そこから主題を考える際は、「教師の考えた1つの主題」を捉えさせるのではありません。

児童の考えだす主題が豊かなものとなるように、中心人物の変容から主題を言語化する技術や、児童一人ひとりのさまざまな感じ方を肯定するような学習の過程が大切であると感じています。

教材分析において「主題」を導き出すために

「事件」と「山場」を分析したあと、中心人物の変容を考えていきます。

中心人物の変容は、「心情の変化」「ものの見方・考え方の変化」「成長」の3つの観点で考えるとわかりやすいです。

どれもがあてはまることもあれば、このうちの1つがあてはまる、ということもあります。

「モチモチの木」で考える

3年生の「モチモチの木」で考えてみましょう。

事件:真夜中にじさまが腹痛になり、倒れる。

山場:豆太は、じさまを助けるため医者様をよびに山のふもとの村までいった帰り、モチモチの木に灯がついているのを見る。
豆太の変容:大切な人のためには、臆病でも一人で行動することができる。

豆太の変容は、「臆病」という見方が変わったと捉えたり、大切な人のために行動できることを知って「成長した」と捉えたりすることができます。

この変容から「主題」を考えます。

児童に考えさせる前に、教師自身が多様な考えをもつように努めます。

私は、「人間の多面性」や「人がもつ強さとは何か」のようなテーマが浮かびました。これを学年団などで共有し、さらに考えが多様になるようにします。

児童に考えさせるときには、「豆太の変容を、一人の読者としてどう解釈するか」ということを大切にします。

そのためには、自分自身や、冒頭の豆太と比較することを通して変容を価値づけたり、大切な人を守ったことを豆太自身がどう感じているかを考えさせたりする活動を取り入れることをおすすめします。

次回は、国語授業の中でのICT活用についてお伝えします!

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樋口綾香教諭

樋口 綾香

ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。

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