研究授業はあえて苦手な音楽で【4年3組学級経営物語6】
6月①「授業力向上」にレッツ・トライだ!
文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ
4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。授業で勝負できる先生に! その夢を追い、教師道を歩み続ける!!今月は、教師の誇りにかけ苦手教科の音楽の授業を克服するぞ。さあ、「授業力向上」にレッツ・トライだ!
目次
<登場人物>
〝チーム4年” 炎の1週間!
その日…。苦手な音楽授業を終え、ホッと一息の渡来勉先生を数名の女子が取り囲みました。
「楽しくないよ、トライだの音楽!」
「いつも大声で歌うだけよね」
とどめは、アキの「お願い、 葵先生と音楽の授業、交代して!」という熱烈な要望。
最大の弱点を突かれ、立ち往生する渡来先生。
「やめろ、トライだを苛めるな!」
先生の危機に、体育会系男子のカズたちが反撃開始です。
しかし…、カズが次に放った言葉が、“教師の誇り”を完全に粉砕してしまいました。
「トライだに音楽は無理だろ。空気読めよ!」
月曜日…。放課後の3組教室、新任の研究授業が迫った渡来先生を囲み、打合せの真最中。
「どう解決するんだ? この課題を」
地獄耳の大河内巌主任が、まず先日の件について質問。
「研究授業は音楽で…。全力でトライします!」
「やるしかないわね。チーム4年が完璧に支援するわ。…道はとても遠くて険しいけど」
感動ぎみの葵先生と、眼光鋭い主任の笑顔。
「じゃあ、まず指導案作りに本気でトライだ!」*ポイント1
授業づくりには、教師用の指導書を活用するのも一手です。
指導書には、通称「赤本」と言われる、教科書に朱書きが加えられたものと、細かく解説された「研究編」の2種類があります。授業づくりの参考にしたいのは「研究編」の指導書です。指導書で目を通しておきたいのは、主に次の点です。
①「単元設定の意図」や「系統性」
この単元で、子どもにつけたい力や具体的な言語活動の方法について解説しています。また、他の学年の単元との系統性や関連もあり、広い視野を持って指導をすすめることができます。
②「学習指導計画」と「1単位時間の展開」
この単元全体の指導計画、評価の規準、毎時間の展開例が記載されています。毎時間の展開には、主発問の例や板書計画例もあり、授業を組み立てる時の大きな参考になります。
③「教科書の解説」と「指導の工夫」
ここでは、授業展開のポイントや具体的な学習活動の方法などを解説しています。児童への指導上の配慮についても参考にすることができます。
上記を参考に「何を」「どのように」教えていくのかを工夫することで、
授業力を高めていきましょう。
合唱指導で学級づくりだ!
火曜日…。再び、かなり放課後の3組教室。
「子どもたちに人気のある曲はどうですか。例えば、流行の○×△…」
渡来先生の発言は、一瞬で葵先生が強制終了。
「迎合しない! 音楽のよさ、美しさ、楽しさを実感できる実践。それが授業力なのよ!」
「合唱指導はどうかな。みんなで音を合わせ、美しいハーモニーを追い求める。集団育成だ」
大河内主任の提案に、大きく頷く2人の先生。
「合唱指導で学級づくり…。いただきです!」
「段階的指導の工夫がポイントね」
葵先生が、渡来先生の肩をバンと叩きました。
「百聞は一見にしかず。明日から、私の合唱指導を見学に来ること! 基本をしっかり学び取ってね」
発声練習も合唱も楽しい、葵先生の「ゆめ授業」
水曜日…。音楽室で、2組授業が始まります。
「トライ先生、どうしてここにいるの?」
「葵先生のファンクラブなんだ!」
子どもたちの騒ぎには一切構わず、葵先生だけに集中。
「さあ、ゆめ先生の〝夢授業”。今日も楽しい合唱よ!」
ピアノ伴奏にあわせた簡単な発声練習。そして、『子どもの世界』の斉唱。
伴奏をしながら一緒に斉唱する葵先生の美しい声…。
『歌う声は話す声とは違う…。ただ大きな声で元気よくじゃなく、歌うのにふさわしい声…』
先生の的確な指示で、斉唱から2つのパートに。そして見事に重なります。
自分の旋律を守り、楽しそうに相手と調和する子どもたち。
*ポイント2
『ハーモニーって楽しいな。今まで苦手と決めつけて、工夫や努力を避けていたものなぁ…』
●発声練習をゲームにして、楽しく明るく取り組もう
発声をする時に、目標をもたずに声を出すだけでは、歌唱につながりません。そこで、「目標を当てるゲーム」を紹介します。ペアになって取り組みましょう。
まず、先生は4つの目標を提示します。
① 口をたてに大きく開ける。
② 目をぱっちり開け、眉を上げる。
③ ほっぺたを目に近づける。
④ 姿勢に気をつける。(両足でしっかりと立ち、上半身はリラックス)
一人が、4つの中から自分が取り組む目標を1つ決め、達成できるように発声を行います。決めた目標は、ペアの友達には秘密にしておきます。相手の子どもは、友達の目標が何番なのかを考えながら聴き、当てます。見事当ててもらえたら、目標達成です。次の時間は、違う目標に取り組んでいきましょう。
(6月②につづく)
『小四教育技術』2017年8月号増刊より