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「一人ひとりが考えみんなで創る」がテーマの特別活動

國學院大學教授・元文部科学省初等中等教育局視学官

杉田洋

人と信頼関係を作ること、社会にかかわり、よりよくすること、自分のよさを伸ばしていくこと。特別活動で育てようとしているのはこうした力であり、子供たちが今後、社会で生きていく上で必要不可欠なものばかりです。 杉田洋・國學院大學教授が推薦する、さまざまな学校の「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」を育む実践を取り上げていきます。今回は、兵庫県宝塚市立光明小学校が取り組む特別活動を紹介します。

監修/國學院大學教授・杉田洋

兵庫県宝塚市立光明小学校ダンスクラブ

特別活動の研究は杉田教授に直談判して始まった

兵庫県宝塚市立光明小学校 (児童数176人)は全学年単学級の学校です。特別活動の研究は前の校長の岸上千鶴元校長が「子供たちのかかわりを強くしたい」という思いから、杉田教授に指導を仰ごうと直談判して始まりました。

「一人ひとりが考え みんなで創る」という研究テーマは、7年目を迎えた今でもずっと変わりません。そこで、今回は、平井仁司校長、堂山直子教諭、藤本達弘教諭、飯野裕子教諭に具体的な特別活動の取り組みについてお話を伺いました。

長期の研究活動により、学校に穏やかな空気が流れる

2020年11月の公開研究会では、すべての学級で学級会の授業を公開しました。どの教室でも穏やかな空気に包まれていたのが印象的で、それは、東京都世田谷区立桜丘中学校で感じた空気と一緒でした。桜丘中学校は校則や定期テストを廃止した自由な学校として知られています。

こちらの記事もお読みください ⇒ 話題の校長、桜丘中・西郷先生が「校則をなくした」真の意図とは?

4年生の学級会の授業では、あらかじめ、みんなで野球をする集会活動を行うことを決めていました。本時は、野球が苦手な子も女子も楽しめるような特別ルールを考える時間でした。具体的には、1試合15分間で全員が打席に立つことができ、最後まで逆転のチャンスがあるルールをつくるという内容です。話合いの時間は30分くらいしかありません。それを1回の授業で終えるのだろうかと筆者は思いました。

野球をする集会活動の話合い活動

出し合う場面ではあっという間に10個以上の意見が出ました。ヒットを打つと1点入るとか、くじ引きで同点とか、じゃんけんで同点というのもありました。すぐに比べる場面に移り、これらのルール案を、楽しい、楽しくないを横軸、簡単、複雑を縦軸とした座標軸で整理しました。しかし、簡単で楽しいという条件を満たす案がなかなか決まりません。発案者は自分の案こそみんなが楽しめるはずだと思っているからです。途中、「運任せのルール案とそうでない案があるから分けるべきだ」という意見が出たり、司会が「出た意見を1分間で見比べてください」と頭の中を整理する時間をとったりして議論は錯綜しました。案を決める場面に至らず、授業開始から35分経ったら必ず現れる「担任からの話」に入りました。

注目したのは、振り返りの場面で司会の女の子が振り返りを言う子を手際よくあて、さばいたことでした。数人が感想をさっと述べた後、各自が振り返りシートを書いていきます。授業後、司会の女の子に、「たくさんの子の手が挙がったけれど、あてる基準はあるの?」と聞いたら、「意見を言わなかった子や、発言の苦手な子を選んであてた」と答えました。

担任の堂山教諭が発言したのは、2回だけでした。1つは、「似た意見が多いから、誰か整理してほしい」という発言であり、もう1つは「担任からの話」で、「集会は体育ではないので、苦手な子が楽しめる意見をもっと出してほしかった。今回も人の話をよく聞けたと思います。今日の議題は次のキラキラタイムで決めましょう」という発言です。キラキラタイムとは、学級会以外に設定された課外の特別活動の時間(月曜日と金曜日の朝15分間)のことです。堂山教諭は議論の途中で終わったことについてこう話します。

堂山直子教諭
堂山直子教諭

「子供たちの自主性を私は大切にしています。言い換えれば、それは教師主導からの脱却です。子供たちが話し足りなければ、時間内に終えることはしません。時間内に全部終えることは教師の都合にすぎないからです。教師がお膳立てをしないという姿勢を保つことは本校のプライドだと思っています」

これを受けて平井校長がこう言います。

平井仁司校長
平井仁司校長

「本校では、子供の内面の育ちを重視しているということです。過程を大事にし、授業や活動の見栄えや成果を求めません。それを求めてしまうと、子供は教師の顔色を窺い、どうしても教師主導の側面が出てしまいます」

静かというより淡々とした雰囲気の教室も、議論となれば一転、そこには白熱する学級会がありました。

計画委員会が作成する提案文書は
ほとんど手直しする必要がない。
計画委員会が作成する提案文書はほとんど手直しする必要がありません

委員会の集会活動によって学級から学校全体に広がった

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