コロナ下でも、地域・保護者と“心は密”の関係を築く

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コロナ禍という危機的局面を乗り越えるためにも、地域連携・保護者連携の重要性は今後さらに増していきます。その際に、何がポイントとなり、校長にはどのような意識が求められるのか。札幌市内の複数の公立小学校で校長を務め、現在はNPO法人全国初等教育研究会理事である新保元康氏に、話を聞きました。

新保元康先生

新保元康(しんぼ・もとやす) NPO法人全国初等教育研究会理事、一般社団法人北海道開発技術センター地域政策研究所参事、特定非営利活動法人ほっかいどう学推進フォーラム理事長。札幌市公立小学校、北海道教育大学附属札幌小学校教諭、札幌市公立小学校教頭、校長を経て、2019年5月より現職。

積極的に情報を発信して保護者から信頼を得る

保護者連携・地域連携において、重要になるキーワードの一つは「情報共有」です。それも、問題が起きてから情報共有を進めるのではなく、平時からいかに学校と保護者や地域の間で情報共有ができているかがポイントになります。

コロナ禍で慌てて情報共有を図った学校もあると思いますが、そのようなやり方ではいまひとつうまくいかないでしょう。大事になる前から、学校のホームページやメールなどを通じて情報共有をしておけば、困難な事態になった際に必ず生きます。

私は、東日本大震災が発生した2011年3月当時、札幌市立山の手南小学校の校長を務めていました。それ以前からメールを使った連絡システムをつくっていたので、震災後すぐに、「子どもたちは全員無事です。余震が収まってから下校させます」とメールを送って、保護者に学校と子どもたちの状況を伝え、安心させることができました。その後も、保護者から大変好評をいただきました。このときに改めて、日常的な情報共有がいかに大事かを痛感しました。

今度は札幌市立幌西小学校で校長を務めていた頃の話です。校内でノロウイルスが流行して3、4日休校したのですが、このときも普段から保護者と連携がとれていたので、クレームなどは一切ありませんでした。ホームページを毎日更新し、感染症が流行する時季にはインフルエンザなどで欠席した児童の人数や学級閉鎖の有無といった情報を出していたこともあり、保護者には「学校は隠すことなく、必要な情報をタイムリーに出してくれる」という信頼感があったはずです。休校中にも、消毒の方法など、あらゆる情報を発信しました。

昔の学校には、そういった情報をあまり出さず、保護者に無用な心配をさせないほうがよいという風潮さえありました。しかし今は、普段から情報共有を徹底して信頼されることが必要であり、これがウィズコロナ時代における保護者との連携の大前提になると思います。

特に現代は、隠せば隠すほど噂や裏情報が回るなどの恐れがあり、そうなれば保護者や地域住民の不安が増幅し、学校への不信感が募ります。そうならないためにも、学校が先手を打つことが大切だといえます。情報化が進んで簡単に情報を発信できるようになっているわけですから、それを有効に活用すべきです。

本音で語り合える関係を築くことが大切

また、連携するうえでは、気取らないことも大事だと思います。フランクに接すると言いましょうか、ざっくばらんに話せるような関係を築くことが必要です。

そもそも「連携」という言葉自体が、私には硬く感じられます。学校からのお知らせも、「立春の候……」などと堅苦しいあいさつで始まることが多いですが、そんな距離を感じる関係のままでは、連携を深めていくことは難しいと考えます。

連携とは、言い換えれば「力を合わせましょう」「仲良しになりましょう」といったことです。学校関係者が保護者や地域住民と会うたびに肩肘張って接していては、互いに建前合戦のような感じになり、本音で話すことができません。いざというときに率直な意見交換ができるようにするためにも、日常のフランクなつき合いが大切です。

身体的には「密」を避ける時代になりましたが、心は常に“密”の状態である必要があると思います。それはつまり、学校や教員の長所も弱点もさらけ出して、本音で話せる関係をつくっていくということです。

校長が率先して動いて地域との関係を深める

私が校長時代に実践していたことで具体例を挙げましょう。私はそばが好きなので、学校に赴任するとすぐにその地域のそば店に行きます。そういった地域に根づいた店は、広いネットワークをもっています。そこで徐々に打ち解け、自己紹介をして、「学校はどんな印象ですか」「子どもたちは迷惑をかけていませんか」などと聞きながら関係を深めます。

教員の中には、校区内の店に行きたがらない人が意外と多いです。その気持ちはわからなくもないですが、望ましいことではありません。地域住民がどう感じるかを考えてみてほしいです。普段はよそよそしく、地元で買い物もしないのに、何かあると「協力してください」と言う教員や学校に対して、協力しようという気持ちになれるでしょうか。普通はならないと思います。

そうならないためにも、学校のリーダーである校長が率先して動くのです。先生方にも声をかけて、行動を促します。もちろん、無理に余分なお金を使う必要はありません。ただ、校区外でも食べるそばを校区内で食べるというだけのことなので、余分な時間もお金もかかっていません。

保護者相手でも同様です。私は、学校に来た保護者全員に声をかけていました。特によく来るのはPTA役員です。PTAがあいさつに来るのを校長室で待っていてはいけません。自らPTA室に出向いてあいさつをします。そこでまずは、雑談をします。そうして打ち解けていく中で、保護者の考えや困りごとなどを直接肌で感じます。その経験が経営判断に生きるのです。そういった日常的な小さなことから密な関係をつくっていくことが、いざ何かあったときのためになります。

繰り返しになりますが、問題が起きてから対応しようと頑張るのではなく、保護者や地域と普段から何でも言い合える関係を築いておくことが必要であり、そうすることで学校の限界についても理解しておいてもらうことが大切です。

数百人がいる学校でゼロリスクはありえません。当然、できることにも限界があります。そのあたりを理解してもらったうえで、「私たちもできる限り頑張っていますが、困っているので助けてください」と言えるような空気づくりをしておくことが、学校マネジメントにおいて必要な意識になると思います。

自ら積極的に動く「動」の校長に

グローバル化が加速し、世界に通用する学力を育てることが求められています。学校には、外部のリソースやGIGAスクール構想など、あらゆるものを活用して教育の質を上げる必要があります。校長はどんどん外へ出ていって、学校の力になってくれる人と多くつながるべきです。大局を見ながらそうした行動をするのが、校長の重要な仕事であり、意識すべきことだといえます。

校長室にじっとしていてはいけません。イメージすべきは、「静」の校長ではなく、「動」の校長です。自ら積極的に動いて、学校と地域や保護者のつなぎ手となり、情報の流れを活性化させる役割を果たすのが、これからの時代に求められる校長のあるべき姿だと思います。

屯田小学校「学校便り」
新保氏が札幌市立屯田小学校校長時代に作成した学校だよりの一部。校長を11年務めた中で、保護者や地域に向けた文書の冒頭のあいさつはすべて自身で書いた。堅苦しく感じる時候のあいさつはやめ、おもしろく読めることを心がけていたという。「先生方の頑張りを保護者や地域住民に伝えることを意識して書きました。一方で、先生方には校外の様子が見えにくいので、保護者や地域住民の姿を先生方に伝えることも意識していました」と新保氏。

取材・文/藤沢三毅(カラビナ)

『総合教育技術』2021年2月号より

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