規律を乱す子にどう対応する?【4年3組学級経営物語4】
5月①「仲間づくり」にレッツ・トライだ!
文/濱川昌人(よりよい学級経営を考える大阪教師の会)
絵/伊原シゲカツ
4年3組担任の新任教師・渡来勉先生……通称「トライだ先生」の学級経営ストーリー。主人公の渡来先生は、学年主任イワオジの“教師力”に憧れ、ゆめ先生の“ダメ出し”に反省する日々。失敗に挫けず、今日も子どもたちのために頑張るぞ…。今月は、「仲間づくり」にレッツ・トライだ!
目次
<登場人物>
4年3組の〝風雲児”
「電車では静かに…。盛りあがっちゃダメ!」
葵ゆめ先生の怒りが、渡来勉先生を直撃!
今日は、自然豊かな緑地公園への遠足。
電車を乗り継ぎ、ようやく駅に到着。トイレ休憩のため、駅構内で学年全員が待機中です。
「それに、マリには…」
車中マナーを猛反省中の渡来先生から、ポツンと座る女の子に葵先生の視線が移動。
「特に厳しい指導がいるわね!」
握りしめた自分の右拳を、なぜかジーッとにらむマリ。
渡来先生は、今朝の出来事を思い出しました。そして、深いため息をつきました。
規律を乱すマリの行動
「マリの様子が変だよ…」
しっかり者のジュンが告げました。
日頃から、だれとも打ち解けず勝手な行動が多いマリ。今朝も、駅に向かう道で何回も学級の列から外れようとしています。
「ダメだよ、マリ!」
コンビニをのぞきこみ、その都度周りの子どもたちの注意を受けます。
マリを列に戻そうとしたジュン。
でも、マリは右拳を振りかざし、怖い顔でにらみます。
駆け寄って、渡来先生は厳しく注意しました。
「ちゃんと並べよ! みんな迷惑してるぞ!」
「フンッ…」
反発しながらも列に戻るマリ。
「対応難しい子だなぁ…」
そんなことを思い出している時、学年主任の大河内巌先生の合図がかかりました。
緑地公園に向けて出発です。*ポイント1
校外活動当日の注意事項
子どもたちの安全を第一に考え、楽しく活動できるように、特に次の点に気を付けましょう。
○人数の確認を忘れない。
○ 1人でトイレに行かせない(トイレに行く時は、先生にひと声かけてから)。
○ごみは持ち帰らせる。
〝イワオジ”に学ぼう!
広々とした芝生広場に、大河内先生の的確な指示が響きます。
キビキビと動く1組と2組、少し遅れて3組。あっという間に整列完了です。*ポイント2
「さすが4年生。聞く力も満点でいこうな!」
「はいっ!」
と元気な返事が、広場に響きます。
校外学習では、事前に並び方などのルールを決めておくことが大切です。
先生が、大きな声で指示しなくても並べるように、ハンドサインを決めておきましょう。
◦1列が適している場合(指を1本立てる)
道幅の狭い道、施設の見学
◦2列が適している場合(指を2本立てる)
通常の歩道、駅構内の移動
◦4列が適している場合(指を4本立てる)
信号待ち、駅ホームでの電車待ち、集合場所
集合する時のきまりとして、笛での合図を決めておきます。<笛を4回(あ・つ・ま・れ)と鳴らしたら集合>など、合図を決めて子どもたちと確認しておきます。並んだ時に、横に並んでいる4人が揃ったら座るように指導しておくと、人数を確認しやすくなります。
簡潔で要点を押さえた主任の指示は、すぐに終了。
歓声をあげて駈け出していく子どもたち。
「いつもすごいですね、大河内先生の指導力…。早く身に付けたい!」
ウットリする渡来先生。
くつろぐ主任の横で、葵先生が弁当を広げながら、手招きをしています。
「私たちも食べましょう。遠足前半の振り返りもしなくちゃ」
でも、返事がありません。
渡来先生は、広場の隅にポツンと座る女の子を見つめています。
「マリだな…」
全ての子どもの家庭環境を把握している、との伝説がある主任が呟きました。
「両親ともに、家庭より仕事優先。愛情不足が原因の典型的な反抗的態度だ。だからこそ仲間の絆が必要…。家庭訪問で確認しただろ?」
「は、はぁ…」
素早い分析に、焦る渡来先生。
しかし、今こそ学級目標「レッツ・トライだ!4年3組」を実行する時……マリにトライです!
(5月②につづく)
『小四教育技術』2017年8月号増刊より