職員室の人間関係の悩み、ズバリ解決します!
これからの時代、子供たちの健やかな成長のためには、先生同士の連携が欠かせません。ベテラン教師・山中伸之先生が、若手の先生方から寄せられた職員室の人間関係の悩みに答えながら、同僚、先輩、後輩、管理職の先生と上手に付き合うための方法を指南します。
執筆/東京未来大学非常勤講・山中伸之
1958年生まれ。宇都宮大学教育学部を卒業後、小・中学校に40年勤務して退職。現在は東京未来大学非常勤講師。「渡良瀬にこにこサークル」「実感道徳研究会」を主宰し代表を務める他、学級経営や国語・道徳の授業について、多くの教師の悩みに答える活動を行っている。著書に『できる教師のすごい習慣』『小学校道徳の授業づくり はじめの一歩』『小学校長のための珠玉の式辞&講話集』など多数。

目次
Q1 思い込みの激しい学年主任にふり回される
学年主任の思い込みが激しく困っています。例えば、通知表の所見を書いて確認してもらったところ、「経験の浅い若い教師がこんなに上手に所見を書けるはずがない。誰かの所見をそのまま真似しているに違いない」と決め付けて、管理職に報告。管理職から私に指導が入りました。その他にも、自分の思い込みで、あることないことを他の先生方に言うので困っています。
A 「そういう人もいる」と考えると、ストレスが3割減になる
学級担任は思い込みが激しいと感じているようですが、その考え自体も「自分の思い込みかもしれない」と考えると、視点が変わってくるのではないでしょうか。
人は世の中のものを「記号」として捉え、自分で勝手に意味付けをしてしまいがちです。
例えば、スーツを着ている人を「真面目な人」と記号化し、「あの人は真面目そうな人だから、話すときはきちんとしたことを話そう」などと意味付けをするのです。でも、スーツを着ているからといって真面目な人とは限りませんよね。ところが「この人はこういう人だ」と、一度思い込んでしまうと、その思考をなかなか転換できないものなのです。
だからこそ、相手に対して自分なりの意味付けをしそうになったら、「本当にそうかは分からない」と一度冷静になって自分の考えを疑ってみましょう。
今回の場合も「思い込みが激しい人」という意味付けをしてしまっていますが、「あの人は自分の経験上得た、自分なりの意見を一生懸命伝えようとしているだけなのだ」と見方を変えることで、相手の見方も変わってくるでしょう。そして、彼女が指摘している内容や事実と、彼女が思い込みの激しい人かどうかは別問題であると、切り分けて考えましょう。
そうは言っても、他人の言動をすべて受容することは難しく、ストレスを感じることもあるでしょう。大事なことは、誰かを変えたりコントロールしたりするのではなく、自分のストレスをコントロールすることです。
まず、「世の中にはそういう人もいるものだ」と思うようにしましょう。「そういう人もいる」と考えられるようになると、ストレスをコントロールできるようになり、精神的ダメージは3割減くらいにはなります。実際、「完璧な学年主任」なんてそれほど多くはないのです。
Q2 学年主任から嫌がらせを受けている
学年主任の先生から嫌がらせを受けています。管理職も気付き、学年主任に指導が入ったのですが、気に障ったらしく、話しかけても無視されたりします。また、私が出張のときに、私のクラスの子の連絡帳に「お子さんは漢字でつまずいています。家庭で見ていないのですか? もっとお家でも見てあげてください」と厳しいコメントを書いていました。私にはなんの報告もなく、後日保護者からの「すみません」とのコメントを見て気が付きました。こうした嫌がらせにどう対応すればよいのでしょうか。
A 対処療法を身に付けつつ、時間が解決するのを待つ
この悩みを解決するためには、本来は管理職に相談するのが望ましいのですが、管理職に相談すれば、なんらかの指導が学年主任に入るでしょう。その指導に学年主任が従うかと言えば、この相談内容から考えると、恐らく従わないか、余計に関係性が悪くなるかどちらかでしょう。
ですから、この場合は、「すべての問題は時間が解決する」という原則にのっとり、「時間が過ぎるまでをいかに平穏にするか」を考えるほうがよいでしょう。年度末の3月までをいかに平穏に過ごすかに目を向けるのです。
学年が変われば、今の学年主任とは関わりが少なくなる可能性も高くなります。そしてもし管理職に相談するなら、このタイミングがベスト。学年末に管理職は人事に関して非常に大きな力をもっているので、これまでの経緯を話し、次年度は、学年を一緒に組まないよう相談するとよいでしょう。
では、いかに3月までの期間を平穏に過ごすか。自分が好きなこと、夢中になれることをするのがおすすめです。好きなことをしている間は時間が早く過ぎるからです。子供と遊ぶことでもよいし、国語を教えるのが好きな人なら、国語の教材研究をするのもよいでしょう。
もし、嫌がらせが頻繁に続くなら、対処療法も必要。連絡帳に何度も学年主任がコメントを書くようなら、子供たちと約束事をつくり、「ニコニコマークが付いていたら先生が書いたコメント。マークがなければ、他の先生が書いたコメントだよ。おうちの人にもそう言ってね」と伝えるのもよいでしょう。
保護者からクレームが来るなどの実害があれば、管理職に報告が必要です。それでも、直接本人に「保護者からクレームが来るので、連絡帳にコメントを書かないでください」などとお願いすることは難しいでしょう。この場合は、お願いするよりも、アドバイスを求めるのが効果的です。
相手の行為や考え方には触れずに、あたかも自分の不手際で困り事が起きたかのように相談をするのです。「連絡帳に書いていただいたコメントに対して、保護者からこんなクレームが来たのですが、どのように返事をしたらよいか、教えていただいてもよろしいでしょうか」などと相談するのです。すると相手は、頼られてうれしいと感じると同時に、自分が書いたコメントへのクレームなので、心の中では「しまった。悪かったな」と思うかもしれません。
相手の行為を責めずに、「教えてもらいたい」というスタンスで困り事を相談することは、波風を立てずに、遠まわしに反省を促す、大人の対応とも言えるでしょう。