「クラスが荒れ、自分も子供に暴言を吐いてしまう」という先生にアドバイス
独特の実践で子供のやる気を伸ばすカリスマ教師、沼田晶弘先生。
「最近クラスが荒れ気味で、自分の指導も行きすぎてしまったり、子供に暴言を吐いてしまうこともあります。言い過ぎたときは謝ろうと思うのですが、高学年なのでさらに子供が調子に乗って、自分が舐められそうで、素直に謝れません」いう先生の質問に、アドバイスをいただきました。
目次
暴言・指導の行き過ぎは悪循環を招く
まず、暴言は吐かないこと。
暴言と指導は明らかに違うよね。暴言っていうことは、言葉が暴れちゃっているってことだよね。
教師が自分をコントロールできていない状態はまずい。
「子供が荒れているから、つい指導が行き過ぎてしまう」と言っていること自体、間違いだと反省しよう。たとえ子供が荒れても、行き過ぎた指導はよくないからだ。
そもそもクラスが荒れている原因の多くは、先生への不信感。だとすれば、先生が暴言を吐いたり、指導が行き過ぎたりしたら悪循環だよね。
子供はなぜ叱られるのか理解していないことも多い
教師が子供を叱るとき、子供自身はなぜ自分たちが叱られているかを分かっていないことが多いということにも気づいたほうがよいだろう。
ボクも子供を叱るとき、途中で、「今、あなたはこのことについて叱られていますよ。分かりますか?」と確認することがある。
例えば、友達同士のトラブルについて叱っていると、子供たちがあれやこれやと言い訳したり、反論することがあるよね。
子供の言い分をよく聞いていると、話の論点がずれていたりする。
どっちがわるいと言っているわけではなく、それぞれの言動の在り方に対して指導をしているのに、子供は先生がトラブルは自分のせいだと決めつけて叱っていると勘違いして、反抗的になってしまうこともあるだろう。だって自分は悪くない。悪いのは相手だと信じているんだからね。だから、
「ちょっと待って。ボクはその点については今は何も否定してない。ボクが注意をしてるのはこっちの話だ。ここがお互いによくないから、ここについて指導しています。分かる?」などと、反省すべきポイントを明確にしてあげると、子供たちもハッとして「あっ! そっちか! それはボクも悪いと思う」などと、素直に反省してくれたりする。
トラブルが起きていないときに、トラブルを俯瞰してみる
トラブルが起きたとき、その場で指導しようとすると、お互いに感情的になってしまうこともあるだろう。
だから、なぜこんなことが起きるのかということを、トラブルが起きていない時に考えてみるとよいと思うよ。
「最近、こういうトラブルが起きがちだけど、なぜ起きるんだろう?」と、トラブルが起きていない時にその出来事を俯瞰して考えると、原因や背景を冷静に見つめることができる。今後同じようなことがないように、事前にどんな対策を取ればよいのか、起きてしまったときには、どう子供たちに伝えると納得してもらえるのか、予防策から対応策まで一連してイメージをしておくことで、荒れを回避したり、荒れてももう少し冷静に対応できるんじゃないかな。
高学年の指導では、子供の納得感が大事
高学年を指導するときには特に、納得感が大事だよね。
例えば、子供たちが時間を守らない場合、どう指導するのか。
子供に「時間を守りなさい」と言うだけでなく、「君たちは、2、3分なら遅れてもいいと思っていないか? じゃあ、時間を守るってどういうことなのか分かる? 2、3分の遅刻であっても、新幹線や飛行機なら、君たちはすでに乗り遅れているわけ」という話をしながら、時間を守るとはどういうことなのか、なぜ守らなければならないのかについて、しっかり子供が納得するように話すことも大切だ。
「君たちは、携帯を持ち歩くようになったから、時間にルーズになったんじゃない? だいたい君たちは友達との待ち合わせが下手だろう? 会えなくても連絡を取る手段があるから、ちょっと時間に遅れたって影響がないからね。まあ、そういう意味ではボクも待ち合わせ下手になったけどね(笑)。でもさ…」なんて身近な話から始めると、子供たちは笑いながら、「なるほど」って聞いてくれたりする。
原因と対応策を子供に考えさせてみる
時間に遅れる原因と対応策について、子供たちに考えさせてもいい。
ボクも子供たちにどうすれば時間を守れるか、考えさせたことがある。そうしたら、対応策について、「遅れないように気を付ける」という意見が出たんだ。
「気を付けるっていうけど、今までも気を付けてはいたんじゃないかな。遅れないように気を付けようと思っているのに守れていないというのは、気を付け方や注意の向け方がどこか間違っていたからなんじゃないかな。だから、まずその注意の向け方を工夫してみよう」って伝えてみた。
ダイエットもそうだよね。
「たくさん食べ過ぎないようにしよう」とか、「甘いものを食べ過ぎないようにする」とか言っても食べちゃうでしょ?(笑)
上手くいっていないということは、何らか別の作戦を考えないといけないということなんだ。その作戦を自分たちで考えることで、お互いにルールを守ろうと、声をかけ合おうという意識も高まるだろう。
自分が変わらなければ、子供も変わらない
「もっと荒れてしまうのではないか」「子供が調子に乗ってしまうのではないか」という不安がある以上は、荒れをおさめることは難しいということにも気づいたほうがいい。
子供を信頼しない先生のことなんか、子供たちも信用してくれないからね。
「調子に乗ってほしくない」ということは「自分の言うことをきいてほしい」「自分が想定した行動を取ってほしい」という気持ちがあるのかもしれない。だとしたら、子供が自分の言うことをきいてくれない原因は、自分の行き過ぎた指導にも原因があるかもしれないと反省して、素直に謝ってしまおう。
「自分は言い過ぎてもいいけど、子供は言い過ぎてはダメ」って変だよね。
自分が言い過ぎたら謝る。そういう背中を見せることが大人として大事だと思う。もし子供が調子にのって、反抗するようならば、冷静にまた指導すればいい。
自分が変わらなくては、子供たちも変わらないという気持ちの切り替えが大事なんじゃないかな。
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沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。
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取材・構成・文/出浦文絵