小2道徳「さるへいと 立てふだ」指導アイデア
執筆/大阪府公立小学校・近藤千尋
目次
内容項目
正直、誠実
うそをついたり、ごまかしたりしないで、明るい心で生活しようとする心情を育てる。
趣旨
自己中心的な態度が見られることも少なくない二年生。善悪についての意識は少しずつ明確にもつことができるようになっていますが、自分のことを一番に考えてしまいがちです。ついうそをついてしまって、友達とケンカになってしまうなどということは、どこの学級にも見られる光景でしょう。
本教材では、柿を独り占めしようとするさるへいの心情を想像しながら、うそをついたときの自分のもやもやした気持ちや、正直になったときのすっきりした気持ちを感じられるようにしたいものです。本稿では、「心情円盤」を使って気持ちを想像するひと工夫を提案します。
さるへいの気持ちを、「もやもや」と「すっきり」の二色で表します(下図「心情円盤」参照)。出てくる立札ごとに気持ちを想像しながら進めます。心情円盤は、語彙の少ない低学年の子どもの、微妙な心情を表現するのに、有効なツールです。
自分の思いを上手く言葉で言い表せなくても、円盤を操作するだけで自分の思いを伝えることができます。本時で私が目指すゴールは、正直であることのよさに気付くことです。
本時の最後には、正直になったことで、さるへいが得たものを問い、振り返りを書きます。
■正直に話すことって気持ちがすっきりする。
■本当のことを話したら、たくさんの友達ができそう。
子どもたちからは、このような振り返りができることを目指します。道徳の授業は答えを教えるのでなく、子どもたちが自身を振り返ったり、よりよい姿、態
度や生き方に気が付いたりするきっかけにならなくてはいけないと思っています。
ですから、教師自身が、授業を通して何に気付かせたいか、を明確にもって授業に臨むようにします。
使用教材
「さるへいと 立てふだ」(東京書籍 二年)
このお話は、けちで食いしん坊のさるへいが、柿を独り占めにします。そのために立てた立札が誰かによって書き換えられて、最後にはみんなに柿を分けてあげることになり、結果、友達が増えます。
誰が立札を書き換えたのかは分かりませんが、その度に、さるへいの気持ちは変わって行きます。
本時の展開
①うそをつかれたりごまかされたことがあるかを聞く。
また、そのときはどんな気持ちになったかを問います(心情円盤を操作します)。
・くやしい。
・悲しい。
・腹が立つ。
ここで、心情円盤の使い方を説明して、「もやもや」と「すっきり」の二色を理解させます。
▼心情円盤
②本文を読み聞かせる。
③『これは しぶがき、たべられません』の立て札を書いたさるへいの気持ちを問う。
心情円盤を操作して、その理由を問います(以下、さるへいの気持ちを考えるときは、円盤を操作し、どうしてそうしたのか理由も言えるようにします)。
・独り占めできるぞ。
・たくさん食べられるぞ。
④『うそを かいては いけません。』の立て札を見たさるへいの気持ちを考える。
・誰が書いたんだ?
・気味が悪いな。
・なぜうそがばれた?
⑤『この かきの 木の もちぬしは さるへい』の立てふだを書いたさるへいの気持ちを考える。
・今度こそ!
・これで大丈夫!
・もうじゃまはさせないぞ!
⑥『ほしい かたは、えんりょなく とって たべて ください』の立て札を見たさるへいの気持ちを考える。
二度とも書き換えられたさるへいの気持ちを考えます。ここでは、2回であることや、「たべてください」などという言葉にも着目します。
・いったい誰が書いたのかな。絶対あげたくない!
・みんなにあげたほうがいいのかな。
⑦「さあ さあ、どっさり たべて くれたまえ」と言ってしまったさるへいの気持ちを考える。
・あげたくないけど、みんなうれしそうだな。
・柿が減ってしまって残念だな。
⑧柿が少ししか、食べられなかったが、代わりに新しい友達ができたさるへいの気持ちを考える。
・柿が減ったけど、友達が増えてよかった。
・みんなにちゃんと分けてあげてよかった。
・よいことをすると、こんなにすっきりした気持ちになるなんて、知らなかっ
たな。
⑨柿の実の代わりにさるへいが得た物は何か、理由とともに考えながら、本時の振り返りを書く。
板書例
評価
話合いの様子、表情を観察する
正直に行動できたときの気持ちよさを、自分の経験や生活の中から見付け、振り返ることができたか。
イラスト/小泉直子、横井智美
『教育技術 小一小二』2019年12月号より