コロナ禍の運動会:ダンス・種目・保護者観覧の具体案
コロナ禍の中で運動会を行うと決めた学校にとって、どんな点に注意が必要なのか? どんな競技・種目ならば実施できる可能性があるのか?
非常に重いテーマですが、箕面市教育委員会の日野英之先生が提案をしてくれました。自治体や学校の方針、現場に合う形で取り入れられそうなものがあれば、ヒントにしてみてください。
執筆/箕面市教育委員会・日野英之
目次
団体演技について
コロナ禍の中で運動会を行うにあたって、最も悩ましいのが団体演技ではないでしょうか。悩ませポイントは大きく2つ。
- どうしても密が生まれてしまう…
- 時間が確保できない中、どうやって学習(練習)を進めていったらよいのか…
これらの課題はどうすれば解消できるのでしょうか。
1「どうしても密が生まれてしまう」解決法
密が生まれる主なタイミングとして、 次が挙げられます。
- 入退場…特に入場する際の入場門における密
- 演技中…特に隊形変化の際に起こる密
それぞれの場面における”密”の解消法について考えてみましょう。
入退場の際の”密”解消法
入退場における密は入・退場門の使用が原因です。思い切って、入・退場門の使用を諦め、自席から直接自分の演技・競技場所に向かわせ、終了後も直接自席に戻らせるようにしましょう。一斉に移動してしまっては交錯、転倒の恐れがあり、結局”密”が生まれてしまいます。移動する際には、少人数であることと移動するタイミングをずらすことを心がけましょう。
演技中、隊形変化の際に起こる”密”解消法
隊形変化の子どもたちの移動の際は、必ずと言っていいほどごちゃごちゃ感が生まれます。あちらこちらで発生する密状態の解消法にはどんなものがあるのでしょうか。
隊形変化の際に起こる”密”解消法その① 隊形を変えない
実にシンプルな考え方ですが、隊形を変えなければいいわけです。
隊形を固定してしまうと、観客席から常に見えづらい子どもが出てくるのではという心配があるかと思いますが、次の隊形を用いることで解決を図りましょう。
半円形・直線形
四角形・円形
平行四辺形
隊形変化の際に起こる”密”解消法その② ソーシャルディスタンスを保ったままの隊形変化
「隊形変化を”美”の演出の一つとして考えているので、絶対に隊形変化を入れたい」と考える先生は、ソーシャルディスタンスを保ったままの隊形変化にチャレンジしてみましょう。方法としては「小グループ毎に時間差をつけて移動する」と「演技をしながら全員が同じタイミングで平行移動する」の2つの方法があります。
小グループ毎に時間差をつけて移動する(例)
演技をしながら全員同時に平行移動する(例)
「全員同時の平行移動」は練習にかなりの時間を要します。民舞のように決まったフリとリズムが続く演目に、ちょっとしたアレンジを加えたいといった場合にオススメです。
2「時間が確保できない中、どうやって学習(練習)を進めていったらよいのか」解消法
授業時数の確保は例年以上に課題となっています。運動会に向けての練習もおそらく時間を短縮して実施されることでしょう。短時間で練習を進めていくためのポイントは、
流行の曲・流行のフリ・○○校伝統踊(ソーラン節等)を取り入れる
ことです。
子どもはカウントでなく、歌詞を口ずさみながらフリを覚えていきます。あらかじめ知っている曲ならば、歌詞を覚える必要がありませんし、何より楽しんで前向きに練習に励むことでしょう。フリも同様です。三代目J SOUL BROTHERS「R.Y.U.S.E.I」が流行した時は、指導する前からほとんどの子が踊れていましたからね。流行の曲に流行のフリがついていれば、学校での練習時間は大幅に削減できることでしょう。
オススメ曲には次のようなものがあります。
■今年度オススメの曲ラインナップ
低学年
「パプリカ」(Foorin)
「さんぽ」(井上あずみ)
「ドラえもん」(星野源)
「おどるポンポコリン」(E-girls)
「U.S.A.」(DA PUMP)
中学年
「女々しくて」(ゴールデンボンバー)
「男の勲章」(今日俺バンド)
「じょいふる」(いきものががり)
「学園天国」(Dream5)
「Shake It Off」(テイラー・スウィフト)
高学年
「紅蓮華」(LiSA)
「マリーゴールド」(あいみょん)
「Choo Choo TRAIN」(EXILE)
「宿命」(Official 髭男dism)
「香水」(瑛人)
団体競技について
団体競技における”密”の解消についても考えていかなければなりません。密が生まれるタイミングとしては、入退場、競技中の待機、競技中が考えられます。
入退場については団体演技のところで触れていますので、ここでは割愛します。
待機時や競技中における密を防ぐ方法には、次のようなものがあります。
- 競技の回数を増やし、1回の競技に参加する子どもたちの人数を減らす。
- 道具や場に一手間加え、ソーシャルディスタンスを確保する。
次のような団体競技はいかがでしょうか。
ソーシャルディスタンス玉入れ
- 半径2mの円の中央にかごを設置する。
- 競技者の間隔は1m。競技する位置に印をつけ、前や横への移動は禁止。
- 1人1つずつ10個の玉を入れたかごを用意。
- 10個の玉を投げ終え次第、終了!
大玉運び
- 1m以上の長さの棒を2つ用意し、棒と棒の間に大玉を乗せ、コーンを回って、次の走者と交代。
- 学年によっては棒を使用せず、背中合わせでボールを挟んで運ぶのもおもしろい!
ジャンボバトンリレー
- 1~2mの長さのバトンを用いてリレーをする。
- 段ボールなどを利用した手作りバトンだと発達段階に合わせて変えられるのでおススメ!
ソーシャルディスタンス綱引き
- 元祖綱引き!
- 1m間隔に印をつけ、ソーシャルディスタンスを確保。
デカパン競争
- 元祖デカパン競争!
- デカパンは通常のものより横に長いもの(約2m)を使用する。
- 互いにデカパンの端を持たせるようにする。持つ位置に印や取っ手を付けておくとよい。
ソーシャルディスタンス台風の目
- 元祖台風の目!
- 1m間隔に印をつけ、ソーシャルディスタンスを確保。
観覧者にも、競技者がソーシャルディスタンスを適切に保っていることを目に見える形で示すことができます。道具や場に一手間加え、競技者・観覧者に身体的・心理的な安心感をもたらしましょう。
保護者観覧について
“密”について、競技をしている側のことだけを考えればいいというわけではありません。観覧席の密を防ぐには、下記のような方法が考えられます。
- 無観客開催にし、オンラインで配信する。
- 虎ロープ等で観覧席を区切り、ソーシャルディスタンスを確保する。
- プログラムを学年毎に固めて実施し、保護者を入れ替え制にする。
- 観覧できる家族の数に制限をかける。
- 開催日を学年毎に分ける。
団体競技でも触れましたが、目に見える形でソーシャルディスタンスを伝えることが保護者に安心感をもたらし、学校に対する信頼感の増幅に繋がります。どの方法を選択しても、手間にはなるのですが、その後の「副産物」を考えると、取り組んでおくべきことだと言えるでしょう。
熱中症リスクにも配慮
また、コロナ禍における運動会のあり方だけではなく、熱中症リスクの軽減についても配慮しなければなりません。
- 競技中や気温が○℃以上になった時にはマスクを外す。
- スポーツドリンクや塩飴を○時間おきに配給する。
- 「演技→体育館で涼む」サイクルを徹底する。
- 一部にテントを設置して日陰をつくり休憩スペースとして活用する。
熱中症リスクの軽減の取り組みにおいても、学校の配慮を目に見える形で保護者に示すことが大切です。
コロナによってもたらされた”新しい生活様式”。当然ながら運動会にも”新しい運動会様式”の導入が求められています。とは言え、”新しい運動会様式”を何もないところから創り出すのは非常に難しいことでしょう。貴校の”新しい運動会様式”作成の足がかりとして、この記事をご活用いただければ幸いです。
イラスト/設樂みな子
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日野英之・1982年生まれ。大阪府公立小学校で12年間勤務し、平成30年から現職。『5分でクラスの雰囲気づくり! ただただおもしろい休み時間ゲーム48手』(明治図書出版)他、共著も多数。