小学生の頃の思い出|絵本作家メグホソキさん
雑誌『教育技術 小一小二/小三小四/小五小六』では、月替わりで人気の高い絵本作家に表紙用イラストの作画をお願いしています。本コーナーでは、その絵本作家さんに、小学生の頃の思い出を綴っていただきます。2019年5月号で運動会の様子を1枚の絵に描いてくださった、メグ ホソキさんの思い出です。
目次
私の子ども時代の運動会
私が子どもの頃は、運動会はたいがい10月10日体育の日というのが決まっていて、運動会の朝、少しひんやりとした空気の秋空が青く晴れていると、ちょっと面倒くさい気持ちと、なんとなく晴れがましい気持ちを交互に感じながら、玄関で運動靴の紐をギュッと結んで学校に向かったのを思い出します。
現代の子どもたちがどんな競技をするのか? よくは知りませんが、私の子ども時代は一学年揃っての男子は組み体操、女子はダンスが運動会のクライマックスだったような気がします。
その日に向けて、着々と練習を重ねて、完成に近づけていくのですが、今になれば、それは社会性を培うひとつの訓練だったことが分かるのですが、私にとっては自分の欠点を見つける時間だったと思い当たります。つまり、社会性の乏しさに気が付く時間でした。
ダンスでキマリワルイ思いをもちながら
そんな、ぼんやりしたモヤモヤを抱えながら、当時流行っていたポール・モーリアの「エーゲ海の真珠」なんて自分に似合わない曲に合わせてダンスするキマリノワルイ私の気持ちもつゆ知らず……母はどかどかとやって来て、私の目の前の人垣の間からチラチラと現れて(母はとても背が小さいので見えたり隠れたりがせせこましいのです)、これまた流行していたコダックのコンパクトカメラをこちらに向けてくるのです。
それでも、一生懸命な母の気持ちを鬱陶しくも嬉しく思ったりもしながら女子総勢130 人ほどの中の一人として、私はダンスしました。
そんなおもしろい母も亡くなって、今はもう、それも、これも、懐かしく、よい記憶です。
メグ ホソキ
東京生まれのイラストレーター、絵本作家。雑誌オズマガジンの表紙イラストレーションを長年担当。女性誌・広告の分野で活躍。絵本では、柔らかな色彩と女性らしいファッショナブルな線が特徴。近著に『12 つきのおくりもの』(文・石井睦美 監修・西本鶏介 フレーベル館)がある。
『教育技術』2019年5月号より