「保護者が怖い」と感じるときのマインドセット法

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教えて、ぬまっち!【毎週土曜10時更新】
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国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

子供の自主性を伸ばす教育で注目を集める「ぬまっち」こと沼田晶弘先生。
今回は、「初任の時、教師に対してストレートに自分の怒りをぶつけてくる保護者に振り回されてしまい、それ以来、保護者が怖くなってしまった」という先生の悩みにアドバイスをいただきました。

沼田晶弘先生 撮影/下重修

先入観を捨てて接することが重要

若手の先生にとって、自分よりも年上の保護者に対応するのは、やはり大変だよね。まして、教師一年目で保護者とトラブルになってしまうと、トラウマを抱えてしまうのもよくわかる。自分自身が経験していなくても、前年度の担任からの引継ぎで、保護者とのトラブルについて聞かされると、身構えてしまう人も多いだろう。

でも、子供に対しても、保護者に対しても、接する上で一番大事なことは、先入観を持たないことだと思う。クレームの多い保護者、友達とのトラブルが多い子供など、いろいろと申し送り事項があっても、そこに捉われすぎない方がいい。「◯◯の保護者はこうだ」と決めつけてかかるのではなく、自分の目で見て、お互いに関係を築く中で、その都度どう対応すればよいか考えればいいと思う。

なぜなら、昨年いろいろなことがあったとしても、今年はどうなるかわからないし、ボクにとってその保護者がどんな人なのかは、実際に接してみなければ分からないからね。保護者とひと口に言っても、一人ひとり価値観は違うし、同じ保護者でも状況が変われば態度が変わることもある。

苦手意識を克服するより、子供の方を向こう

まずは、なぜ保護者が怖いのかよく考えてみよう。
よく考えると、一方的に自分が悪いわけではないと気づくんじゃないかな。

「クラス全員担任が大好き」なんて、そうあることではないし、正直、クラスの中にどうしてもうまく関われない子がいる、なんてこともあるだろう。保護者も同じ。どうしてもうまく関われない人もいるだろう。

だったら、しんどい時期はあったかもしれないけれど、あまりそこに捉われて、振り回されるのは自分にとっても、子供にとってもよくないよ。保護者は苦手でも、子供たちとはうまくいってるなら、それでいいんじゃないかな?

教師と保護者は担う役割は違っても、ともに子供を支えるという立場は同じ。
つまり、お互いに向き合うべきなのは、子供たちだと考えよう。

これは、保護者対応が得意・不得意という問題ではなく、マインドセットの問題だ。

クレームではなく、保護者からのアピールと捉える

でも、確かに、常識では考えられないようなことに怒りをぶつけてくる保護者もいるよね。そういう保護者への対応策や、クレーム回避のコツもあるのだけれど、具体的な対応策の話は、次の機会に。今回は、どう保護者と向き合うべきなのかについてボクが考えていることを話そう。

よく「クレーマー」とか「モンスターペアレンツ」なんて言葉を耳にするけれど、その言葉のイメージに捉われすぎると、保護者と学校は敵対する関係に感じてしまうし、信頼関係を築くことはものすごく大変なことのように感じてしまうよね。

でもね、「クレーム」というと、ものすごくネガティブなイメージがあるけれど、実は、教師が知らないことや気付かないことを保護者目線で見て、教えてくれているだけなんじゃないかなと思うこともある。いわゆる保護者からの「アピール」なんだよ。

そもそも、保護者は学校に大事なわが子を預けているのだから、最初から学校と敵対しようとは思わないはずだよ。ただ、自分の子が可愛くて仕方がないんだよね。

だから先回りして心配しすぎてしまったり、本人の力だけではどうしようもないことを、自分が行動することでなんとかしてあげられるのではないかと思ったりしているだけなんじゃないかな。

避けるより、積極的に関わるほうがいい

例えば、「全然先生はうちの子を見てくれていない」なんて言われると、「理不尽だな」と思うこともあるかもしれないけれど、まずは保護者の気持ちを理解しようとすることが大切。

保護者から一方的に責められていると感じることもあるかもしれないけれど、保護者は、「先生のせいですよ。先生が悪いんですよ」と言いたいわけじゃないんだよ。

「息子をもっとほめてあげてほしかった」「先生から事情を説明してほしかった」「もう少し分かりやすく伝えてほしかった」など、保護者や子供の気持ちを先生にアピールしているだけなんだよね。

「先生は全然息子を見てくれていない」という意見も、クレームというより、「うちの子はすごくがんばっているので、ちゃんと認めてほしい」という保護者のアピールだと考えた方がいい。

そういう保護者の言葉の裏側の気持ちを想像せずに、自分の理屈を押し通そうとすると、「先生のおっしゃることはわかりますけど、私だって……!」と感情論になり、ますますこじれてしまうかもしれない。

アピールしたい内容がわかれば、解決策もはっきり見えてくるだろう。

このケースの場合もそうだけれど、保護者を避けるよりも、自分から保護者に積極的に関わって、子供の良さをたくさん伝えるほうがいい。

それでもアピールが止まらないなら、「ちゃんと見てますよ!」と言い返すより、「お気持ちは分かります。お子さん、とってもがんばってますよね。でもみんなもがんばってるので、公平に見るようにしています」と伝えるほうが納得してくれるんじゃないかな。

くよくよすることは悪いことじゃない

そうは言っても、保護者対応は気を抜けないし、うまくいかず、くよくよしたり、落ち込んでしまうって? まあ、そうだよね…。

でも、くよくよすることは決して悪いことではないよ。くよくよしているからこそ、耐性がつくれるはずなんだ。

保護者のクレームをなんとも思わない人は、逆に、保護者の気持ちに気付くことができず、保護者が本当は何を求めているかも分からないままになってしまうだろう。

ボクもそうだけれど、意外にベテランの先生も、自分の対応をふり返ってはよく落ち込んでいるものだよ。「今日はこういう指導をしたけど、あれはやり過ぎたかな」とか、「今日は少し言い過ぎたかな」とかね。

だから保護者からクレームがあっても、「ああ、やっぱり来たか」と納得できるし、「すみません。私もそう思っていました」と素直に謝ることができる。

保護者の価値観は多様化しているので、対応に悩むことは今後もあるだろう。だからこそ、まずは保護者の気持ちに寄り添い、他の先生の力も借りながら経験を重ね、自分の中に、適切な対応策を積み上げていくことが大事なんじゃないかな。

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。

取材・構成・文/出浦文絵

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