海外コロナ休校中の家庭学習事情《イギリス編》
緊急事態宣言の解除をうけ、日本では多くの学校で6月から学校教育が再開されました。分散登校、体育館での授業、教室の換気等、感染予防を考慮しながらの学校運営が模索されていますが、海外の学校では、いまどのような方策がとられているのでしょうか。一部の学校が再開された後もオンライン授業が続くイギリスについてリポートします。

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ICT環境が功を奏しオンライン授業への移行もスムーズに
イギリス・カンタベリー在住ライターのボッティング大田朋子と申します。こちらイギリスでは3月20日から義務教育の一斉休校が始まりました。政府から休校を言い渡されたのは2日前の18日の夜。近隣の欧州諸国ではすでに休校が始まっていましたが、イギリス政府は独自路線でいくと公言していたこともあって、直前まで「イギリスでは休校要請はまだ先だろう」といった雰囲気がありました。というわけで「突然の休校宣言」といった感は否めませんでした。
イギリスに暮らす筆者は、小学生の子供(小5と小2)をイギリスの私立の現地校に通わせています。今回は、子供たちが通う小学校を例にとり、イギリスの私立小学校が休校中に行っているオンライン授業の実践例をリポートしたいと思います。
まず大前提として子供たちが通う小学校のICTの状況ですが、1年生から週1回ICTの授業があり、2年生からブラインドタッチを習い始めます。児童全員に学校用のメールアドレスが割り当てられていて、子供は学校のメールを使って先生と直接やり取りができます。算数やフォニックス(発音と文字の関係性を学ぶ音声学習)、外国語(フランス語とスペイン語)などでは学校が使用契約を行っている教育ソフトウェアやアプリがあり、宿題は通常時からそれらを使って課題をこなしていました。ですから休校後オンライン授業に移行しやすいICT環境は整っていたと思います。
スクリーンタイムを調整した、オンライン用の時間割
休校になってからの学校教育ですが、子供たちが通う小学校では「マイクロソフト365エデュケーション」を使っています。オンライン授業は「Microsoft Teams」という会議ツールを使い、3年生以上の子供には毎日5限、ライブで授業が行われています。
オンライン授業開始にあたってまず変わったのは「時間割」。毎日5限の授業のなかで午前中の3限は国語、算数、理科といった主要科目、午後は外国語や音楽、美術、デザインテクノロジー、体育といったアカデミック度が軽めの科目で構成されました。また通常の授業では1授業は60分間で2単元を休み時間なしで続けて行いますが、新時間割では1限は45分間に短縮され、毎授業後に15分間休憩時間が設けられました。学校からは、「オンラインで双方向の授業を効率的に行いながらも、できる限り子供たちのスクリーンタイムを減らす努力をしたいので、休み時間には必ずコンピューターから離れることを徹底してほしい」と保護者側にお願いがありました。
※スクリーンタイム…パソコン・タブレットなどのモニター画面を見ている時間のこと

授業の流れですが、「Teams」を使って先生がはじめに説明してから児童が質問をする時間が設けられ、その後「課題」に取り組みます。課題はワークシートなどの紙ベースに鉛筆で書きこむアナログ作業が中心です。課題が終わったらそれを画像にとって「Teams」にアップ(提出)します。そういう流れで、授業の最後の5分ほどは先生やクラスメートと再びオンラインでつながり「まとめ」があります。すべての授業は録画されているので、家庭の事情や環境に合わせて授業を活用できます。