オンライン授業で現場教師が直面する5つの課題

多くの自治体で小学校の長期休校が続く中、今年度初めてオンライン授業導入に踏み切ったという京都教育大学附属桃山小学校。校内でプロジェクトを先導してきた二人の先生に、オンライン授業を行う中で見えてきた課題と現在の葛藤について聞きました。(この取材は2020年4月28日に行われました)
お話を伺った先生/
京都教育大学附属桃山小学校教諭・長野健吉
京都教育大学附属桃山小学校教諭・樋口万太郎

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目次
1、Zoomで子供が「何を話していいかわからない」
―6年生担任の樋口先生と長野先生は、プロジェクトチームの中核的存在として新しい授業作りに取り組まれていますが、今は具体的にどのような授業を実践しているのですか?
樋口教諭: 私のクラスでは、オンライン授業が始まってからは授業支援アプリを中心に授業を行い、昨日からZoomを使い始めたところです。
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本日は Zoomを使って算数の授業をしました。Zoomでは、クラスの36人全員に対して教室でやるような一斉授業をすることが難しい部分もあるので、グループに分け、各グループで考えていけるような課題を設定して取り組んでみたところ、子供たちにとってはやりやすかったようですね。
※Zoomには「ブレイクアウトルーム」という、参観者を小部屋に分ける機能があります(2020年4月28日現在)。
実は、昨日もZoomを使って4人ずつグループに分け、フリートークをしてみたのですが、全く盛り上がらなかったんですよ。
活動後の子供たちのふり返りを読んでみても、「何を話してよいか全然分かりません」とか、「久しぶりなので照れ臭いです」といった感想も多かったのですが、今日の算数の授業の後は、「今日は算数という一つの問題を解決するという話題や活動があったので、昨日よりもやりやすかったですし、教室にいるように楽しかったです」という感想がありました。
やはり、話合いをするにしても、オンラインの場合は特に、何を課題にするかが大事なんですよね。
試行錯誤しながらではありますが、少しでも子供たちの学びを進めていけるよう、日々授業を改善しながら考えていきたいなと思っています。
2、子供のペースと問いの速度が合わない
長野教諭:私も授業支援アプリのほか、G Suite、Zoomというツールをミックスして授業づくりを行っていますが、まだまだ使い分けには頭を悩ませています。一年前からいろいろなツールを組み合わせて授業ができるよう研究を進めていたものの、実際使用するのは授業支援アプリが大半でしたし、休校になり、オンライン授業を家庭に広げるといったことは想定していなかったからです。
授業支援アプリは授業との相性が良く、教室の中で、タブレットに表示されたテキストや画像、子供たちの回答の文字とともに、リアルな子供たちの発言やプレゼンする声、表情が一体となる学習形態が実現できます。
休校が延長されることが決まった際にオンライン授業を校長に提案したのは、授業支援アプリによる実践経験があったからなのですが、一方で、これまでの実践から、子どもたちの発言する音声が消え、みんなで集まる教室が消え、タブレットの文字だけが残った時に、果たしてうまくいくかのだろうかという不安もありました。
実際にオンライン授業の手段として授業支援アプリを使ってみて、意外にうまくいった点もありますが、やりにくさを感じることもあります。どうしてやりにくい部分がでてくるかと言うと、やっぱり、授業をするという場があってこその支援ツールだからです。
また、音声がない授業支援アプリでは、矢継ぎ早にテキストを送ってしまうということも起きてしまいがちです。すると、オンラインは本来はパーソナルな状態になっているはずなのに、実は子供が問題を解く速度と全く合わないものが教師から送られてくる、ということにもなります。それはおそらく受けている子供の側からすると、かなり厳しい学習になってしまうでしょう。
そうした問題をどう改善するか考えたときに、対面的にZoomを使う、さらには、長期に渡りじっくり考えるような課題を設定することも必要だと思うようになりました。