気になる子の保護者との良好な関係の築き方【特別支援入門 こう取り組めばうまくいく】②
通常学級の担任の先生は特別支援教育の知識がますます必要な時代になってきました。特別支援教育について、子どもたちや保護者とどのように関わっていくか、チーム学校でどのように取り組んでいくかなどを特別支援教育の専門家である、京都教育大学総合教育臨床センター学びサポート室講師・榊原久直先生と立命館大学産業社会部教授(前京都教育大学総合教育臨床センター長)・相澤雅文先生に対談していただきました。その内容を「特別支援入門 こう取り組めばうまくいく」の3回シリーズで紹介します。第2回の今回は「気になる子の保護者との良好な関係の築き方」です。多様な子どもたちの保護者と関わる担任にとって、良好な関わりを築くことは大切です。どのように関わっていくとスムーズに関わっていけるのかをお届けします。ぜひ保護者への対応のヒントにしてください。

目次
子どものよい側面から伝える
――気になる子を支援する場合、その保護者に対して、どのようにアプローチすればよいでしょうか?
相澤 学校に呼ばれるという時点で保護者はすでに緊張しています。学校に好意的な保護者だけではないのです。そのうえ、困った行動や問題点を伝えられるとそれだけで嫌になってしまいます。まずは、「こんな成長が見られます」とその子のよい側面を伝えることから話を始めることが方法の1つです。一方で、学校で気になる事実は事実として伝えていくことが必要です。それに対して「どうしますか?」と保護者に突きつけるような言い方ではなく、「学校と一緒にその子のよりよい成長発達の道筋を考えていきましょう」と共同する姿勢で臨むことが大切です。
榊原 相澤先生がおっしゃるように、学校から呼ばれるとか電話がかかってくるだけで保護者はかなり怖いことだと思います。まして、何らかの凸凹があり問題があると言われること自体ショッキングな出来事で、向き合いたくない部分があると思います。
学校に来ることだけでも緊張したかもしれないし、わが子の何らかの困難に向き合うのは保護者だからこそつらい体験だということを尊重し、つらさに寄り添いねぎらう言葉をかけて、保護者のエネルギーを充電することが、序盤に重要です。そこをいかに丁寧にできるかが大事になってきます。
それから、本題に入っていきます。「担任である私としてはこういうところを考えたい」と伝えていきます。これはあくまで一個人の考えていることであって、強制強要するわけではないことも伝えます。そして、保護者の声をしっかりと聞きます。保護者が困っていること、気になっていることが話題に出てきたら、支援の土台になるからです。
――学校では気になるが、家庭ではあまり気にならないと言われた場合、保護者にどのように説明すればよいのでしょうか?
相澤 学校では学級のみんなと一緒に生活をしなければなりませんし、集団の中の約束事もあります。また、時間割に従って活動が行われますので、好きなことばかりしているわけにもいきません。まずは、家庭とは異なる環境の中で生活をしていることを説明します。そして、子どもの気になる行動について伝え、学校として困っているという姿勢ではなく、そのことを保護者と一緒に考えていきたいことを伝えます。いきなり学校として困っているということを言われると保護者としてはカチンときて、よい関係を築くことは難しいと思います。
榊原 この話題はよく上がるテーマです。先生からすると「家ではわが子と向き合っていないのではないか」「わが子を見ていないのではないか」と保護者を責める気持ちになります。しかし、保護者からすると「先生の関わり方、やり方が悪いのではないか」と誰のせいという論争になり、ますます敵対関係になっていくのです。
今、相澤先生がおっしゃるように、環境が違い、支援の程度によって、発揮できる力が違うのは当然起きることです。そのため、見せる姿は違っていますし、どちらの見方が正しいというわけではありません。担任は「私の見方が正しいです」というふうにならないことが大切です。
そのため、ときには「家でそうならないのだったら、家で気付かないで行われている支援や手立てがあれば、教えてほしい」というふうに聞いていかれると、保護者として警戒心をもちにくいのではないでしょうか。どちらが正しいわけでもなくて、「この子には、そういういろいろな側面があり、この子の強みやもっている力が発揮しやすいように、環境を調整するために何かできることはないでしょうか」というふうに話をもっていけると、建設的な話ができると思います。
学校でも家庭でもない第三者の機関で検査をして、客観的に新しい情報を得られるとよいことを提案してもよいかもしれません。その際、「あなたのお子さんは何らかの困難さがあると思うので、検査に行ってください」と言うと、保護者にとってはよい気がしません。そのため、「この子のもっている力を学校でも発揮できるようにするには、どのようにするとよいかを調べるために、よかったら検査を受けてみませんか」と言うと、保護者にとって受け入れやすいと思います。
保護者の興味ある話題を
――気になる子の保護者と良好な関係を築きたい場合、どのようにコミュニケーションを取ればよいでしょうか?
相澤 例えば、子どもの話の前に、保護者の興味ある話題から入ってはいかがでしょう。保護者が、野球やサッカーが好きなら、その話題から始めるなど世間話をして柔らかい雰囲気をつくることをおすすめします。保護者の緊張を解いたうえで、本題に入っていくことがよいと思います。ここでも、よりよい成長発達を一緒に考えていくという方向で進めるとよいと思います。
働き方改革などで時間を取るのが難しい状況にありますが、夏休みや冬休みなど長期休みのときなどを利用して、継続的・定期的に保護者の方と学期を振り返る話合いをもつことが信頼関係を築くことにつながります。また、進級などにより担任が代わるのであれば、引き継ぎをしっかりしていくことも大切です。
榊原 保護者との関係については、スクールカウンセラーさんや経験豊富な先生たちに相談されるのもよいアドバイスがもらえると思います。例えば、誰でもそうですが、保護者にも対人関係に対するパターンがあるようです。悩み事をストレートに話し合えるタイプもあれば、悩み事を話すことに不安を感じたり、「何か困っていませんか?」と聞かれるとますます不安や心配が広がってしまったりというタイプなど様々です。保護者の感じ方や考え方、対人関係のパターンなどを少し把握しておくと関係づくりの初期の段階で役立つと思います。何気なく問いかけた一言が、保護者からすると一番苦しい声かけになっている可能性もあります。
相澤先生がおっしゃるように、子どもの保護者としての困り事ではなく、社会人としての一般的な困り事などの話題から入っていくとよいかもしれません。例えば、「この時期忙しくて大変ですよね」や夏休みなど「給食がなくて大変ですよね」など、仕事や食事の話で、一般的に「Yes」と言いやすいネガティブ感情の話をして、関係性を築いていき、最終的に保護者が繊細に感じやすいネガティブな話に進んでいくということも方法の1つです。
それから、先生自身のネガティブな感情を意図的に開示し、完璧な保護者でなくてもよいということを認識してもらうことも大切です。どんな困り事であれば話しやすいかは、その人によって違うので、そこは会話しながら探っていくことになるでしょう。
