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子供たちと読みたい 今月の本#12 新しい世界へ 冒険の始まりだ!

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子供たちと読みたい 今月の本
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子供たちといっしょに読みたい 今月の本 
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石橋幸子
子供たちと読みたい 今月の本 バナー

全国SLA学校図書館スーパーバイザー・石橋幸子先生にすてきな本を紹介していただく連載です。12回目のテーマは、「新しい世界へ 冒険の始まりだ!」。3月は別れの季節でもあり、これから始まる新しい世界や出会いに希望と不安をもつ季節でもあります。今回は新しい世界へ挑戦する様々な主人公が登場します。本を通して新しい世界に旅立つ子供たちの勇気につなげましょう。そして、読書の楽しみを伝えてください。子供たちの1人読み、先生が読む、読み聞かせなど学級の実態に合わせてください。

監修/全国SLA学校図書館スーパーバイザー・石橋幸子

図書室の絵本の棚

絵本

「初めて」に挑戦する頑張る主人公が登場する様々な絵本があります。また、飛行機の出発前の仕事や電車の運転士の仕事などの絵本もあります。いろいろな挑戦を子供たち自身の力につなげてください。

『りょこう』

『りょこう』 作/麻生知子 福音館書店刊(発行:2025年)

作/麻生知子
福音館書店刊(発行:2025年)

こうたくんとおじいちゃんは、2人で旅行に行きます。駅弁を持って電車に乗り込み、着いたところは、山あいの旅館。ところが夜、こうたくんは、ホームシックになってしまいます。すると、おじいちゃんは……。孫と祖父、初めての「冒険」旅行。

石橋先生のおすすめポイント
こうたくんとおじいちゃんの新しい世界は、2人だけで行く温泉旅行。作者の麻生知子さんの描く世界は何となく懐かしい、温かみを感じさせる世界で、ついついじっくり絵に見入ってしまいます。
読み聞かせや紹介の際は、まず表紙を見せてください。網棚、車窓風景、そしてお弁当を食べる2人の姿。きっと子供たちは様々な発見をします。「向きが変!」「電車の中で食べているのかな」「ペットボトルが寝ている」「おじいちゃん、何か渡している?」……口々に気付いたことを言い合うことになります。これが学校図書館での読み聞かせの醍醐味ですね。その後も2人の旅は、温泉に入ったり卓球をしたりと続きます。ちょっとしたハプニングあたりから後は自分で読むよう仕向けるのが楽しいかもしれませんね(低学年向き)。

『ひこうきが しゅっぱつします』

写真/岡田光司 文/岡田康子 
文研出版刊(発行:2025年)

飛行場で働くプロフェッショナルたちの「すごい!」仕事の写真絵本。飛行機が沖縄から羽田空港に到着しました。次の出発までは55分。グランドハンドリングの1人が駐機場で飛行機に合図を送っています。飛行機が完全に止まったら、ここから時間との闘いです。トーイングトラクターを運転し、荷物を出して、入れて、機体の安全もしっかり確認。チーム全員で飛行機の到着と出発を支えます。

石橋先生のおすすめポイント
羽田空港に戻ってきた飛行機が55分後に飛び立つまでを、時間を追って紹介している写真絵本です。本文はもちろん、解説ページも注釈以外は漢字がないので、小学1年生から自分で読めると思います。でも、カタカナの「グランドハンドリング」「ボーイング777」「フードローダー」などの聞き慣れない言葉が多いので、低学年の子供には、最初は読み聞かせたいですね。
到着した飛行機の点検や荷物の積み下ろしなどの仕事をするグランドハンドリングさん、機長さんが飛行機の点検をする姿、グランドスタッフさんの仕事ぶりなど、子供たちが想像できないたくさんの人が力を合わせている様子がよく分かります。働く人の声も載っていて、働くことの意義についても思いを寄せることができそうです(低学年向き)。

『しゅっぱつ! でんしゃの うんてんし』

『しゅっぱつ! でんしゃの うんてんし』 作・絵/羽尻利門 金の星社刊(発行:2025年)

作・絵/羽尻利門 
金の星社刊(発行:2025年)

ぼくは電車の運転士。制服を着ると気合が入ります。時計は正確か、忘れ物はないか、電車は正常か。信号、標識、踏切を確認しながら進みます。お客さんを時間通りに安全に目的地に届ける! 運転士になった気持ちでページをめくりながら、その仕事の様子を体感してください。

石橋先生のおすすめポイント
電車の運転士、とみたさんが家を出る場面からお話が始まります。その場面はカバーの内側にあるので、見返し部分を見せるのをお忘れなく。普段着で職場に着いたとみたさんが制服を着て、気合が入るところもぜひ見せてください。その後も仕事に使う道具や、安全に時間通りにお客さんを運ぶ工夫や苦労が描かれます。
この絵本は、私たちの日常の暮らしを守ってくれる人たちの様子を伝えてくれますから、じっくり絵を見せながら読み聞かせるとよいでしょう。家族とくつろぐとみたさんの表情が素敵な裏表紙も忘れずに!(低学年向き)。

『たねはいのちのおわりとはじまり』

『たねはいのちのおわりと始まり』著/鈴木 純 ブロンズ新社刊(発行:2025年)

著/鈴木 純 
ブロンズ新社刊(発行:2025年)

植物の始めの一歩を踏み出す「たね」。植物観察家・鈴木純が植物の命の源である「たね」の神秘を、観察会に参加しているような楽しさと驚きをまじえて紹介します。植物の分解やクローズアップの写真も見どころ! 「たね」の個性的な美しさに迫り、新たな魅力を発見できる写真絵本。

石橋先生のおすすめポイント
この写真絵本には植物観察が大好きな作者が撮影したびっくりするような写真が満載です。タンポポやヒマワリのように子供たちの身近な植物が取り上げられていますが、見たことがない「たね」や発芽の様子が大きな写真で載っています。
教室のみんなで一緒に見ると驚きも倍増されそうです。語りかける口調の本文は読み聞かせたら耳も楽しいですし、写真に添えられた擬音語・擬態語や一言がまた面白いのです。ペア読書するとおしゃべりしながら楽しめることでしょう。P.30、31の30種の「たね」。色も形も変わったものが多く、子供たちに自然の不思議さを伝えてくれます。子供たちも、「たね」と一緒に新しい世界に出発です(中高学年向き)。

『ラクダで塩をはこぶ道』

『ラクダで塩をはこぶ道』 作/エリザベス・ズーノン 訳/千葉茂樹 あすなろ書房刊(発行:2025年)

作/エリザベス・ズーノン 訳/千葉茂樹 
あすなろ書房刊(発行:2025年)

アフリカ・マリ共和国のタウデニでは、たくさんの岩塩が産出されます。この貴重な塩を積み、サハラ砂漠を通って750キロ離れた街トンブクトゥまで運ぶラクダのキャラバンは、現在でも続く、命に関わる過酷な旅です。キャラバンに参加できる年齢になった主人公の少年は旅を通していろいろなことに気付きます。

石橋先生のおすすめポイント
主人公の「ぼく」が初めて自分のラクダに岩塩を積んでサハラ砂漠を旅する冒険に出発するところから物語が始まります。表紙と裏表紙がつながっていて1枚の絵になっていますから、それを見せながらあらすじを紹介すると、中高学年の子供たちはこの絵本の世界観に引き込まれると思います。
750キロの砂漠の旅は、魅力的な人との出会い、砂嵐との戦い、ラクダとの別れなど、ワクワク、ドキドキの連続です。そして最後の場面は……これから新しい世界に出発する子供たちにぜひ手渡してほしい1冊です。後書きには砂漠キャラバン隊の歴史や塩についての解説があり、とても興味深いです。これもぜひ紹介してくださいね(中高学年向き)。

『ラン・ガール・ラン! 女子マラソンのとびらをあけたボビー・ギブ』

『ラン・ガール・ラン! 女子マラソンのとびらをあけたボビー・ギブ』 作/アネット・ベイ・ピメンテル 絵/ミーシャ・アーチャー 訳/やすだふゆこ 偕成社刊(発行:2025年)

作/アネット・ベイ・ピメンテル 
絵/ミーシャ・アーチャー 訳/やすだふゆこ 
偕成社刊(発行:2025年)

ボストンマラソンを初めて走った女性ボビー・ギブ(1947年〜)の物語。「女性にはスポーツは向いていない」とされた時代、1966年、「ボストンマラソン」に申し込むが門前払い。しかし、大会当日、号砲とともに他の選手に紛れて走り出しました。彼女のことに気付いた男性ランナーの応援や沿道の大声援を受けて42.195キロを走り切ります。これを機に1972年ボストンマラソンで女性の正式参加が認められました。ボビーの勇気は多くの人を励まし、「夢を信じて挑戦すれば、世界を変えられる」という気持ちにさせてくれます。

石橋先生のおすすめポイント
表紙と裏表紙で1枚の絵として見ると、起伏の多いボストンマラソンのコースと男性の中でみんなの応援を受けて走るボビーの様子が見て取れます。これと標題紙(題名が書いてあるページ)の左隣にあるボストンマラソンに関する地図や説明を紹介すれば高学年の子供たちは自分で読み進めることができます。コラージュの技法が効果的なので、そのことも伝えてください。
中学年の子供には女性がマラソンを走れなかった背景やボビーが隠れてスタートしたエピソードなどを話すと読みたくなる子が続出します。大人が多くを語らなくても、信念を貫くことや好きなことをやり遂げることについて子供たちに示唆を与えてくれる絵本です(中高学年向き)。

読み物

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