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避けて通れない“トイレの話”――ジェンダーから考える、これからの学校施設【教室から始める性教育~“いのち”と“多様性”を育てる授業】#8

連載
教室から始める性教育~“いのち”と“多様性”を育てる授業

小学校や中学校で性教育の指導に長年携わったスペシャリストである、帝京平成大学教授・郡吉範先生による連載「教室から始める性教育~“いのち”と“多様性”を育てる授業」の第7回です。この連載では、安心して実践できる基礎的・基本的なことがらやすぐに使えるヒント、ちょっと背中を押す言葉などをお届けします。第8回のテーマは「避けて通れない“トイレの話”――ジェンダーから考える、これからの学校施設」。学校のつくりは、ほとんどが「男子・女子」の区別が前提です。果たして今の時代に合っているのでしょうか。学校施設をジェンダーから考えて、みんなが過ごしやすくするという話です。具体例は、郡先生の経験や現場での実践に基づくものですので、現場でのヒントにしてください。

執筆/帝京平成大学人文社会学部教授・郡 吉範

そもそも「男女前提」でつくられてきた

これまで、「狭義のトランスジェンダー」の課題に対して、学校としてどう関わっていけるかを考えてきました。でも実はもう1つ、どうしても避けて通れないテーマがあります。それが、学校の“ハード面”、つまり施設設備の問題です。

よく考えてみると、学校のつくりって、ほとんどが「男子・女子」の区別が前提ですよね。これはもう、歴史的にも社会的にも「それが当たり前」とされてきた結果なんです。中でも特に象徴的なのが、トイレ。

男女別に分かれていて、構造も表示も「男用」「女用」でがっちり決められています。でもこれって、果たして今の時代に合っている設計なんでしょうか?

みんなのトイレイメージイラスト

多目的トイレが“みんなのトイレ”になるには

もともと学校に設置されてきた「多目的トイレ」は、主に車いすを利用する方のために設計されていました。実際、私が以前勤務していた学校も、20年以上前に建てられた当初は「車いす対応トイレ」として設置されており、ピクトグラムも「車いすマーク」1つだけでした。

しかし、時代が変わり、多目的トイレの役割も広がってきました。今では、ケガをしている人、ご高齢の方、妊婦さん、赤ちゃん連れの保護者など、誰もが安心して使える“共用のトイレ”として位置付けられつつあります

そこで、私たちの学校でもこうした流れに合わせて、ピクトグラムや表記を見直すことにしました。例えば、ピクトグラムを「車いすマーク」だけでなく、「お年寄り」「妊婦」「赤ちゃん」「ケガ人」など複数に変更。表記も「車いす用トイレ」から、「バリアフリートイレ」「どなたでもご利用ください」などに変更しました。海外で使われている「ALL GENDER RESTROOM」という表現も、その考え方を示す一例です。

この変更には、もう1つ大切な意図がありました。それは、「性的マイノリティの子供たちにとっても使いやすいトイレ」にする、ということです。「LGBTQ専用」ではなく、「誰でも使える」からこそ意味があります

近年、学校外の施設などで「LGBTQ専用トイレ」といった表記が話題になることがあります。一見すると配慮のように思えるかもしれませんが、私は少し疑問に感じています。というのも、子供たちの中には、

「自分はこのトイレを使っていいのかな……」
「友達に見られたらどう思われるだろう……」

と、かえって不安や孤立感を抱いてしまうケースがあるからです。ラベリングによって“特別扱い”されてしまうことが、安心とは真逆の結果を生んでしまうこともあるのです。

だからこそ、「LGBTQのためのトイレ」ではなく、「誰でも使ってよいトイレ」としての位置付けが大切だと私は考えています。表記やデザインであえて強調せず、自然に、さりげなく配慮されていること。そのほうが、子供たちにとって本当に使いやすい空間になるのです。

学校は避難所にもなるからこそ考えたい

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