離任式の挨拶文例【古舘良純先生の音声つき】#先生のための先生のお話

岩手県公立小学校教諭

古舘良純

出会いもあれば別れもあるのが春。離任が決まった先生、別れの挨拶は、もう決めていますか? みんなの教育技術でも大人気の古舘良純先生も、新年度から新しい学校での再出発が決まった先生の一人。この記事では、古舘先生の離任式の挨拶文を紹介します。ぜひこの記事を参考に、自分らしい挨拶をして新しいステージに向かってくださいね。

先生のための先生のお話

この記事は、音声プラットフォームVoicyとのコラボ企画「#先生のための先生のお話」の取組です。ここで紹介している挨拶文は古舘良純先生のVoicyで聞くことができます。間の取り方や声色など、子どもたちの前で実際に話す時の様子がイメージしやすい音源になっているので、ぜひ参考にしてください。

大規模校の子ども向け挨拶はシンプルが正義

※体育館で子どもたちに挨拶するシーンを想定しています。

はじめまして、古舘良純です。と、このステージから挨拶をして5年が経ちました。
来月からは宮野目小学校の先生として頑張ります。若葉小学校のみんなも 新しい友達、新しい仲間、新しい先生と新しいスタートを切って頑張ってください。
お世話になりました。ありがとうございました。さようなら。拍手。

【POINT】子どもたちが聞く「総時間」を念頭に

僕の学校は教員数が50人を超えるような大規模校ということもあり、今年度の転退職者は17名です。単純計算で、1分ずつ話しても17分あるんですよ。これ、すごい量ですよね。3分話したらもう1時間弱の離任式になってしまうわけです。だから、離任する先生たちとは、シンプルにいきましょう、という共通理解をもっています。ぜひ、先生の学校でも参考にしてください。

「日々新」を胸に、後ろ髪ひかれない挨拶を!

※送別会や職員室で教職員向けに話すシーンを想定しています。

つい先日、実家に帰った際、母からある言葉を聞きました。男は36で化けるというものでした。
僕の弟がですね、ちょうど36歳になるっていうことで、きょうだい関係の話をしていた時に、ふと出てきた言葉だったんですね。この言葉は、実は亡き祖母が残した言葉だったそうで、ちょうど僕が36歳になる年に母に伝えていたそうです。
僕が36になる年っていうのは、実は岩手県の採用試験に合格して、若葉小学校に着任した年でした。
僕はこの祖母の反対を押し切って、岩手を離れて、千葉県で採用になっていました。
そこから、11年間、千葉県でお世話になっていました。
もちろん、東日本大震災の時もそうですし、地元の久慈市が台風で大きな被害を受けた時も僕は何もできませんでした。
だから、岩手に戻ってきたその36歳の年には、この空白の11年間、この11年間分の仕事をしようと、 岩手県の教育になんとか貢献しようと思って戻ってきました。
そんな僕を待っていたかのように、祖母はですね、ちょうどその36の年に亡くなったんですけれども、 そう考えると、ますますですね、僕をこのタイミングで拾ってくれた岩手県とか、それからこの若葉小学校に感謝の気持ちでいっぱいになりました。

それで、5年間お世話になったわけですが、若葉小学校ではですね、6、6、6、6、5と高学年、主に担当させていただきました。実は、職員室の座席は5年間同じ席でですね、もうあの景色から逃れられないまま、この若葉小学校を去るということになっています。
多くの卒業生を送り出させていただきましたし、4年間は研究活動も任せていただきました。
子どもたちにも、保護者にも、そして先生方にも、本当に恵まれた5年間だったなと思っています。とっても楽しかったです。
もちろん、ご迷惑をおかけしたり、至らない点が多かったことも事実で、その点に関してはほんとに謝っても謝りきれないぐらい申し訳ない気持ちでいっぱいです。
過去の話をしていても思い出話でしんみりしてしまうので、最後に僕の夢の話をして終わりにしたいと思います。

この5年間でですね、書籍を13冊世に出させていただきました。共著分担執筆も含めると、その倍ぐらいになっています。
それから、小学館での連載、明治図書での毎月の記事、東京書籍のモニター、教育新聞のインタビュー、 教員養成セミナーへの寄稿、ベネッセへの登壇と、本当に様々なメディアとご縁をいただいたんですね。オンラインで全国の先生方と繋がって、様々な講演会、それからセミナーも引き受けてきました。そしてこの冬はですね、大学生を対象にした講座も実現したんですね。
いろいろな経験をする中で、今、教育界ってのはほんとに待ったなしの状況だなって思うようになりました。
自分の立場でどうやって教育の世界に光を差していくか。自分の立ち位置でどうポジティブな流れを作り出すか。
もう、そればっかりを、最近は考えるようになっています。
そんな中で、ちょっとだけ、教員養成の世界で生きてみたいって思うようにもなっています。大学の先生ですね。だからまず、来年度、6年度は大学院の試験を受けてみようと思っています。仕事をしながら、論文も書いてみようと思っています。7年度、順調に合格したら、通信制で学びながら、教員と大学院生の二足のわらじを履こうと思っています。そして、8年度はですね、学んだことを現場で120パーセント出してみたいと思います。
研究らしい研究が、どう学校の実践に結びつくのかっていうのを、そういった理論と実践っていうところを結びつけて頑張ってみたいなと思っています。
それで、6、7、8と 3年経ったら、ご縁次第なんですけれども、学校教育現場を離れてみてもいいのかもしれないって思うようになっていました。
もちろん、3年後にやっぱり現場だなって言って、まだ担任しているかもしれないし、場合によっては、いろんな立場で、別の立場で仕事をしているかもしれないんですけれども、暫定的に今の夢としては、この向こう3年を描いています。

やっぱり大人も夢持ってた方がいいと思うんですよね。こう、生きがいっていうか、ワクワクしていたいじゃないですか。
もう。だからぜひこの後ね、またビールをついだり、お酒を汲み交わしたりするんですけれども、 先生方の夢も聞かせてほしいなって思っています。
上から目線に聞こえてしまったら申し訳ないんですけど、やっぱり夢を持ってお仕事されてほしいんですよね。そうやって次どこかでお会いした時には、「古舘さん、あの夢どうなった?」とか、「先生、あの夢どうなったんですか?」って話せたら、 僕にとってはもうこの上ない幸せだなって思ってます。

若葉小学校を離れるのはもちろん寂しいし、 それから新天地への不安っていうのもあるんですけど。
僕はこの学校で4年間子どもたちを送り出してきた身ですので、今度は自分がきちんと送り出されて、けじめをつけたいなと思っています。
本日は、こんなに素敵な会を開いていただけたこと、心から感謝しています。本当にありがとうございました。

【POINT】感謝と思い出話を経由し、ビジョンで終わる

こういう場で、過去とか昔話、思い出話を話すことはよくあることだと思います。でも、思い出にばかり浸っていられないのがこの仕事ですよね。明日は必ず来るし、毎日は新しいわけです。
特に、今勤めている学校の校訓が、日々新しいと書いて「日々新(ひびあらた)」なんです。この学校でお世話になったからには、やっぱりこの日々新というのを意識して、 転出したいという思いはずっとありました。だから、新天地でどうしたいかとか、将来の夢とかを話して、夢を持ってワクワクしてお別れできたら何よりだと思うんです。

送別会って、しんみりした話になりがちなのですが、4月になったら何事もなかったかのように仕事が始まりますよね。これ、皆さん経験済みだと思うんですが、先週まであんなに悲しいお別れをしていたのに、「あの先生いた」ぐらいの感覚になる(笑)。もう4月1日から一気に職員室が走り始めるじゃないですか。もう振り返ってる暇なんてないんですよね。

だから、やっぱり後ろ髪引かれる思いみたいなものは断ち切ってですね、
「もう俺、新しいとこ行って頑張るんで、先生方も頑張ってくださいね」っていう、お互いにエールを送り合うような、そんな挨拶にできたらいいな、と思って考えました。
感謝の気持ちや、思い出話を伝えつつも、最終的には「俺、頑張ります」っていうところで終わりにしています。
子ども向け挨拶に比べてずいぶん長いじゃないか! と思われそうですが(笑)、そこはTPOで、懇親会ならそういう場をいいことに長めに夢を語ってもよいのではないでしょうか。

文章の組み立てやエッセンスみたいなものをぎゅっと掴んで、ご自身の挨拶につなげていただければと思います。

先生は「お話」をする機会が多い職業ですよね。授業開きや行事でのお話、身体を動かすことや読書の魅力を伝えるお話……みなさんの中にあるとっておきの「お話」を、全国の先生にシェアしてくださる方はぜひ、Voicyとのコラボ企画「#先生のための先生のお話」(お話本編と、解説編とで収録をしてください)にご参加ください。

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