手放したのは、「がんばる=無理をする」という思い込み【「授業準備が間に合わない!」ピンチから学んだ授業づくり/先輩教師の体験談#1】

日々様々な業務に追われている先生の中には、「授業準備の時間を確保できない」という悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。しかし実際にそうした局面にどのように対峙し、ピンチを乗り越えればよいのでしょうか。本連載は、授業準備が困難なときに先生方がどのように対処したのか、成功例そして失敗例を赤裸々に語っていただくリアル体験談集です。ピンチに直面したからこそ得られた気付きや学びに加え、授業準備の効率化につながるアドバイスもご提案いただきました。 第一回は、千葉県公立小学校教諭 江越喜代竹先生の体験談です。
目次
体験談① 行事準備に追われ、体調不良も重なった国語の授業
詩の読み取り授業を、準備不足で子供たちに委ねることに……
五年生の担任だった頃、二学期になると校外学習、運動会、下級生との交流活動などの学校行事が重なり、放課後もこうした行事準備に追われる日々を送っていました。さらに委員会活動の指導なども加わり忙しさがピークに達していたときに、運悪く体調を崩してしまったのです。学校にいても何も手につかない状態だったため、とりあえず早めに退勤し次の日に備えて就寝しました。そして体調はなんとか回復したものの、十分に授業準備ができないまま朝を迎えたのです。
当日、とくに困ったのは国語の授業です。ちょうど国語で下の教科書に移行した最初の授業で、詩の読み取りの学習を行う予定でした。
想定では、自分が中心となり、言葉の意味を質問して子供たちに考えさせたり、作者の背景を説明したりするはずが、まったく準備が間に合わず……。
どうしようかと迷った末に、腹をくくり事前にある程度考えていた発問を3つだけ書いた簡素なワークシートを朝5分で作成。授業では、そのワークシートを配付し「近くの人と好きなように話していいから、自分なりの答えを見つけてみよう」とだけ指示をして、授業の大半の時間を子供たちに委ねることにしました。

発問が3つのみの簡素なワークシートで子供たちがイキイキと学びだした
普段とは違う授業展開なので、「戸惑って話が進まないのではないだろうか」という不安もありました。一方で、これまで算数や社会の授業では学び合いの授業を行っていたこともあり、「なんとかなるだろう」という気持ちもありました。そして「失敗したら仕方がない、そのときは素直に謝ろう」と覚悟を決めて授業に臨んだのです。
授業を進めていくと、予想に反して子供たちはイキイキと自主的に動き出し、「これはどう思う?」などと言って友達と関わり合い、問いに向き合っている姿が見られました。
そこで、私も机間指導をしながら声をかけたり、時々ワークシートをのぞいたりしながら、子供たちの意見や反応をおもしろがることを心がけました。
子供主導の学び合いの末、多様な解釈を引き出せた
そして授業終盤、数名の子供にワークシートに書いた問いに対する答えを発表してもらったところ、自分が想像していたよりもずっと多様で深い解釈が次々と語られたのです。その後、回収したワークシートを読んで再びびっくり! 「ここまで読み取れていたのか!」「こんな解釈も出てくるのか!」と、こちらが驚かされるほど、それぞれの子供なりのいろいろな考えがちりばめられていました。
また、授業後にある子から「今日の授業は楽しかったです! こういう授業もいいですね!」という感想をもらい、子供たちの満足度も高かったことを知りうれしくなりました。
ワークシートはシンプルであるほうがよい
それまで学び合い型のスタイルの授業を国語の読み物教材で行うことは難しいと思っていたのですが、苦し紛れとはいえチャレンジしたことで十分可能であることに気付けたことは大きな収穫でした。
ワークシートはシンプルなほうがよいということも、新たな発見でした。そもそもはもっと多くの発問を用意するつもりだったのです。しかし、発問を3つに絞り込んだことが功を奏し、子供たちの意欲や自由な意見を引き出すことにつながりました。考えてみれば、発問が多ければ多いほど、子供たちの負荷は高くなり、記入するのに精いっぱいで、思考したり話し合ったりする時間が少なくなってしまいます。現在では、ワークシートはできるだけ発問を絞り込み、簡略化したものを作るようにしています。
体験談② 道徳で同僚のワークシートを流用し準備の時短を図ったものの失敗
同僚の作成したワークシートと、自分のやりたいことにズレが生じた
四年生を担任していた頃、やはり多忙で授業準備がほとんどできないまま臨んだ道徳の授業。
同僚が同じ単元の授業のために既に作成したワークシートがあったため、「これがあれば何とかなる」と思い、よく内容を確認もせずに子供たちに配って授業をスタートしてしまいました。
ところが、授業を進めていくうちに同僚がワークシートに記載した主発問と、私の問いかけたいこととの間に差異があることに気が付きました。違和感を抱きつつも、ワークシートの主発問に沿って続ける他なく、時折授業の方向性がずれそうになりながらも、何とかワークシート通りになるよう授業を進行しました。
構成/出浦文絵
イラスト/藤井昌子
企画/小学館インクリオ
