なぜ日本でギフテッド・2Eを研究するのか?「第1回 日本ギフテッド・2E学会」密着ルポ
最近、やけに「ギフテッド」という言葉が気になるのは、わが子(目の前にいる子ども)を、どう理解し、どう関わればいいのかを知りたいからではないでしょうか。今、日本ではギフテッドに関する議論が盛り上がっています。その象徴とも言えるのが、「なぜ、今、日本でギフテッド・2Eを研究するのか?」という問いを真正面から掲げて開催された、第1回 日本ギフテッド・2E学会です。

学会は2025年11月15日、千葉大学・西千葉キャンパス(千葉県千葉市稲毛区)で開催され、会場には研究者だけでなく、当事者、保護者、医師、支援者など、立場や専門の異なる多様な人たちが多数集いました。本記事では、この記念すべき第1回学会当日の様子を、行われた議論の内容だけでなく、会場に流れていた空気感とともにお伝えします。
目次
「日本ギフテッド・2E学会」におけるギフテッド・2Eの定義とは?

日本ギフテッド・2E学会が捉える「ギフテッド像」
取材で最初に感じたのは、学会では「ギフテッド」という言葉を、とても慎重に扱っているということでした。日本ギフテッド・2E学会の会長である是永かな子氏(高知大学教職大学院教授)は、こう表現します。
ギフテッドのことは、学校との関係の中で、教育的ニーズが生じている状態として捉える必要があります
例えば、授業内容が簡単すぎて学ぶ意味を感じられない、退屈や手持ち無沙汰に耐えられず、行動面で困りごとが出てしまう。こうした状態には、見えにくい「困り感」が存在しています。また、知的に高くとも、発達特性に困難を併せ持つ2Eの子どももいます。
通常学級の中で考える「特別ニーズ教育」という考え方
是永先生は、日本の「特別支援教育」と、「特別ニーズ教育」とを分けて整理していました。
日本の特別支援教育は、診断を前提とし、配慮や支援が必要な子どもを対象とする仕組みとして整えられてきました。一方で特別ニーズ教育は、障害の有無に関わらず、通常の学習の枠組みの中だけでは学ぶ権利が十分に保障されにくい子どもたち全てを対象とする考え方です。
是永 北欧諸国の学校では、ギフテッドの子どもたちを特別な場所に分けるのではなく、通常学級の中でより高次の課題を用意したり、学年を超えた学びを柔軟に組み合わせたりする実践が行われています。
文部科学省は既に、「特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援の推進事業」を始めています。
さらに2025年4月には、学習指導要領改訂に向けた検討資料の一環として、「柔軟な教育課程編成の促進」を公表しました。この資料では、多様なニーズをもつ子どもたちを、どのように教育課程に位置づけ、学びを保障していくのかが重要な論点として示されています。

是永先生は、「通常学級では対応が難しいから別の場所へ」という考え方が過度に広がることには、慎重な姿勢を示していました。本来、インクルーシブ教育や特別ニーズ教育が目指してきたのは、通常学級を多様な学びに応えられる場にしていくことだからです。
日本型ギフテッド・2E教育に向けて
是永先生は、こう言います。
ギフテッド支援の対象は、固定された一部の子どもたちではありません。どの子がギフテッド支援の対象になるかは、教科や学習活動の場面ごとに変わります。
「通常学級の中にも、ギフテッド支援が必要な子どもがいるかもしれない」と想像することが大切です
是永 現状、学校や大人側の無理解によって、ギフテッドが二次的な不適応を起こし、自己肯定感を低下させてしまうことは、残念ながら決して珍しいことではありません。だからこそ、ギフテッドの困りごとを「個人の問題」としてではなく、「環境との関係の中でどう支えるか」が問われています。
ギフテッドは、何に困っているのか、どこで苦しさが生まれているのか――。学会の会場には、当事者や保護者の姿も多く見られました。
以下の有料記事部分では、当事者本人たちの語りをはじめ、保護者によるワークショップ、支援してきた医師の講演、海外の実践事例の研究者の発表など、立場の異なる人たちによる最新の知見と提案をご紹介します。
取材・文/楢戸ひかる
「わが子にどう関わればいいのか分からない…」そんな思いを抱える保護者に贈る本

楢戸ひかる(ならと・ひかる)ライター。「ギフテッド」や「学校に行かない選択をした子どもたちのためのフリースクール」取材を通じて、学び方に選択肢を作ることを探究している。自身のサイト「主婦er」内に「ギフテッド」と「不登校」関連記事のリンク集がある。
