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2025年度「博報賞」受賞者が決定!贈呈式レポート&受賞者インタビュー【PR】

教育現場の優れた活動を表彰する「博報賞」(主催:公益財団法人 博報堂教育財団)。第56回となる2025年度は、103件の個人・団体の推薦応募があり、35件が受賞しました。そして11月には都内で「贈呈式」を開催。翌日には受賞者が参加する「事例共有勉強会」が行われ、受賞者同士の親睦を深めるとともに、教育の課題や可能性について活発な議論が交わされました。本記事では、「贈呈式」「事例共有勉強会」の様子をレポートするとともに、博報賞・文部科学大臣賞に選ばれた3名の受賞者のインタビューを紹介します。

提供/公益財団法人 博報堂教育財団

教育現場の優れた取り組みを顕彰する「博報賞」

2025年11月14日、日本工業倶楽部(東京都千代田区)にて、「博報賞」の贈呈式が開催されました。児童教育現場の活性化と支援を目的につくられた「博報賞」は、創設から半世紀以上という歴史ある賞です。全国の学校・団体・教育実践者が地道に取り組む草の根的な活動と、その社会的貢献を表彰するもので、56年目となる今年度は103件もの応募があり、博報賞が12件、功労賞8件、奨励賞15件が選出、「博報賞」受賞者の中からとくに優れた取り組み3件に対し、権威ある文部科学大臣賞が授与されました。

全国の受賞者および関係者が一堂に会した第56回「博報賞」の贈呈式

冒頭の挨拶では、公益財団法人 博報堂教育財団の戸田裕一理事長が登壇し、「受賞者の皆様の体現されている創造的で実践的な取り組みは、まさに未来の教育の道しるべとなるもの」と強調、今回の受賞者と推薦者、審査員への感謝を述べられました。

公益財団法人 博報堂教育財団 戸田裕一理事長

続いて、滝川国芳審査委員長による審査経過報告が行われました。今年度の推薦応募数が昨年度よりも42件も増加し103件となったことに触れ、コロナ禍を乗り越え、各地で様々な取り組みが活性化していることを評価しました。

滝川国芳審査委員長(京都女子大学教授) 

その後、各受賞者の紹介スライド上映及び贈賞が行われました。受賞者それぞれの活動が映像で紹介されたのち、一人ひとりに表彰状が手渡され、会場は温かな拍手に包まれました。

受賞者への贈賞を終えると、文部科学大臣からの祝辞が同省初等中等教育局視学官の藤枝秀樹氏によって代読されました。祝辞では、今回文部科学大臣賞を受賞した3件についてそれぞれ評価コメントが述べられ、また「この場に集まった受賞者皆様の活動は、すべての地域や学校の模範となる活動であり、ぜひこの取り組みを全国に発信し各地で実践されることを期待しています」と語られました。

文部科学省 初等中等教育局 視学官 藤枝秀樹氏

最後に、受賞者代表挨拶として文部科学大臣賞を受賞した宮崎県西都銀上学園 西都市立銀上小学校・銀鏡中学校の横山一憲校長が登壇。同校が30年以上継続している「山村留学」の取り組みを紹介するとともに、「今後も地域とともにつむぐ教育を続けていきたい」と力強く語り、贈呈式を締めくくりました。

宮崎県西都銀上学園 西都市立銀上小学校・銀鏡中学校校長 横山一憲氏

贈呈式の後には祝賀会が開催され、受賞者や審査委員、その他多くの関係者が交流し親睦を深めました。

◆詳しくは下記をご覧ください
第56回「博報賞」贈呈式・祝賀会報告
https://bit.ly/48lwgas

受賞者の活動を共有し、今後の発展の契機を創出する「事例共有勉強会」

「贈呈式」の翌日には、同会場で「事例共有勉強会」が実施されました。

「事例共有勉強会」は、受賞者同士が情報を交換し合うことでそれぞれの活動を見つめ、更なる発展に向けた契機とすることを目的としています。前半は昨年度「博報賞」を受賞した2つの事例の発表、後半はグループワークという2部構成で展開されました。

第一部では、昨年度の受賞者の事例を発表

第一部の事例発表では、昨年度「博報賞・文部科学大臣賞」を受賞した山口県下関市立本村小学校の前田真奈美前校長と、「博報賞」を受賞した宮城県「ことばの貯金箱『夢』プロジェクト」の渡邉裕子代表が登壇。活動内容をスライド上映しながら各々の実践についてプレゼンテーションを行いました。

山口県下関市立本村小学校前校長 前田真奈美氏
宮城県「ことばの貯金箱『夢』プロジェクト」代表 渡邉裕子氏

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第55回「博報賞・文部科学大臣賞」を受賞した下関市立本村小学校の取組レポート
第55回「博報賞」を受賞「ことばの貯金箱『夢』プロジェクト」活動レポート

第二部は、教育の今、そして未来を語り合う「グループワーク」

第二部では、「子どもが笑顔をみせるとき」をテーマに、グループワークを実施。今年度の受賞者・推薦者に加え、前述の前田前校長や渡邉代表をはじめとした昨年度受賞者も参加し、3~4名のグループに分かれてお互いの実践を共有し、教育の可能性や課題について語り合いました。

まず、各グループで発表者が各々の活動における「推しポイント」を台紙に書いて一人ずつ発表。その後聞き手であるメンバーが、感想や疑問に感じたことを書いた付箋を台紙に貼りフィードバックを行い、グループ内で共有します。

フィードバックでは「子供を常に中心として考える活動が素晴らしい」「とにかく楽しくて面白い!」といった評価コメントに加え、「(中学校の活動に対して)小学校ではどういった展開ができますか?」「継続の工夫は?」など、活発な議論が交わされました。

グループワーク終了後には、ファシリテーターを務めた元文部科学省主任視学官の嶋野道弘氏、慶應義塾大学の鹿野雅治教授や、博報賞審査委員の方々から、総括コメントが語られました。台紙を使った熱量の高いコメントは会場を大いに沸かせ、終始「ことば」で心をつなぎあう、有意義な会となりました。

受賞者の皆様にとって、子供の笑顔を活動の基軸に置いた多様な地域・領域での教育活動について意見を交わし合い、全ての実践を自分ごとの学びとして捉え、今後の活動の継続と拡大について様々なヒントを得ることができた貴重な場となったのではないでしょうか。

◆詳しくは下記をご覧ください
第56回「博報賞」事例共有勉強会「創発ディスカッション ~気づきの場~」報告
https://bit.ly/4rt8cd0

博報賞・文部科学大臣賞受賞者インタビュー①【宮城県】早坂和枝 氏

受賞者名:早坂和枝(大崎市立古川第五小学校 講師)
活動タイトル:正しく発音できる喜びを実感し、喜んで話す児童を育てることばの教室

推薦者:宮城県大崎市教育委員会 教育長 熊野充利 

「ことばの教室」で培った経験を活かし、現在は研修会等を通して後進の育成に励んでいるという早坂和枝先生(大崎市立古川第五小学校 講師) 

言語指導において、子供の「変容の過程」を支え、意欲を引き出すサポートをしたいと考えた

――早坂先生の実践について概要を教えていただけますか?

早坂 私は、言葉に障がいのある子供の支援において、「変容の過程」を大切にし、サポートする活動をしています。これまで、10年以上にわたり小学校の言語通級指導教室(以下、「ことばの教室」)を担当してきましたが、なかでも構音障がい(唇や舌などの器官の運動障がいにより、発音が不明瞭になる状態)を持つ児童は、友達から笑われたり、発音を真似されたりしてしまうことがあり、なんとかしてあげたいという思いが常にありました。しかし、構音を改善する学習には、即効性がなく、子供たちにとっては時に苦痛を伴うものです。長年使い慣れてきた発音の仕方を改善させるための学習は、本当に根気のいるものだからです。だからこそ子供の意欲を持続させるためにも、小さな変容も見取って記録し、保護者や学級担任と共有しようと考えました。

例えば、舌や唇の動きなど、その子が改善できたことについてレーダーチャートを活用し自己評価させ、視覚的に示して記録、さらにタブレットで学習の様子を録画して児童と確認するとともに、季節ごとに発行するお便りなどを通じて保護者や学級担任にも共有しています。児童自身が教室で学んだことをふり返って「できたこと」を喜び、保護者や担任もその「できたこと」を一緒に驚いてくれ喜んでくれる……。その積み重ねが、子供の「もう少し頑張ってみようかな」という気持ちにつながっていくと思っています。

――どのようなきっかけで「ことばの教室」を始めたのですか?

早坂 そもそも私自身は構音指導を専門に勉強してきたわけではありません。教職に就いてからはずっと通常学級の担任だったのですが、30代半ばの時にたまたま「ことばの教室」が通級指導教室に移行することになり、管理職から「やってみない?」と声をかけていただいたのがきっかけでした。最初は不安もあったものの、国語科と算数科の実践研究をして磨いてきたスキルや、通常学級担任として、子供と関わってきた経験を活かせるのではないかと考え、挑戦しようと思いました。

――博報賞へ応募しようと思った理由は何ですか? ‎

早坂 8年ほど前に新聞で博報賞のことを知りました。教育長などの推薦が必要であることも把握していたので、自分の教育実践が推薦していただくのに値するか迷いましたが、年齢を重ね退職が近づいてきたこともあり、自分のこれまでの活動の集大成になるのではないかと思い応募を決意しました。

――贈呈式、創発ディスカッションに参加した感想をお聞かせください。

早坂 グループワークでは、幅広い年代の先生たちの様々な実践から多くのことを学ぶことができました。皆さん一生懸命取り組んできたことが伝わってきて大変刺激を受けましたし、光栄な賞を頂いただけでなく、このような素晴らしい出会いの場にも出席できたことに感動しました。

グループワークのフィードバックでは、皆さんから「言葉の大切さ」を評価していただき、私自身も教育における言葉の重要性を再確認することができました。

また博報賞の審査委員の方の講評は、他の論文審査では経験したことのないほど丁寧できめ細かく、教育現場に寄り添った内容で感銘を受けました。

――今後どのようにこの活動を広げていこうとお考えですか?

早坂 現在は、これまでの実践をまとめて研究発表をしたり、夏休みに研修会を開いたりして、後進の育成を行っています。言語指導は、単なる指導技術だけを学んでもすぐにうまくいくものではなく、子供も簡単には変わってくれないかもしれません。しかし私は、教育というものは、何か特別な技術がなければ成果が出せないというものではなく、とにかく目の前の子供に目をかけ、言葉をかけ、心をかけてこそ実っていくものなのだと思っています。私はこの年でそれにようやく気が付きました(笑)。そういう意味でも、通常学級担任をしている先生方にも、「これまでのスキルを言語指導にどう活かせるのだろう」という視点で、いろいろな工夫を重ねて取り組んでいただければ、きっと子供たちもそれに応えてくれるはずなので、ぜひチャレンジしてほしいと思います。

早坂和枝先生(左)と、推薦人の宮城県大崎市教育委員会の熊野充利教育長(右)  

【推薦者からのコメント】
和枝先生は特別支援教育においても、言語指導においても専門家ではありません。しかし、目の前の子供の成長を一番に考え、通常学級での経験を活かしながら工夫を重ね、根気の必要な実践にも真摯に取り組んできました。私自身、彼女のこうした教育的アプローチを高く評価しており、ぜひ全国の先生方にも広く知ってほしいという思いもありました。何よりも、「ことばの教室」に通う子供たちが和枝先生に会うのをとても楽しみにしているんですよね。和枝先生の実践なら信頼できるという自信もありましたし、彼女のこれまでの実践は多くの先生方の参考になり、勇気を与えてくれるものではないかと思い、喜んで推薦したいと思いました。
(宮城県大崎市教育委員会 教育長 熊野充利)

博報賞・文部科学大臣賞受賞者インタビュー②【静岡県】磯部真代

受賞者名:磯部真代(静岡県 浜松市立蒲小学校 教頭)
活動タイトル:つながる学校~社会に開かれた学びの実現へ~

推薦人:常葉大学大学院 教授 紅林伸幸 

学校図書館は、無限の可能性を秘めた玉手箱のような場所と語る、磯部真代先生(静岡県浜松市立蒲小学校教頭) 

学校図書館の「つながる」可能性を活かし、社会に開かれた学び合いの場をつくりたい

――学校図書館を起点とした磯部先生の実践について概要を教えていただけますでしょうか?

磯部 私は、20年以上の教職経験の中で、学校図書館には無限の可能性があると考えてきました。その可能性をどう活かそうかと考えたとき、最初は授業との連携を考えたのですが、図書館には人や本、地域をつなぐ可能性もあると気づき、2019年に「つながる学校図書館プロジェクト」を立ち上げました。プロジェクトでは、「ブックカフェ」や 「わくわくライブラリー」 「動く図書館」など様々な取り組みと連動させ、学校図書館を子供たちが自由に集う居心地のよい学びの場にしようと考えました。さらに、地域人材を招いた学習会なども開催し、地域に開かれた文化的拠点にすることを目指してきました。

――博報賞への推薦はどなたにお願いしたのですか?

磯部 そもそもこのプロジェクトは、私が教職大学院研修で得た学びを教育現場に還元し、役立つことができたらという思いからスタートしたものでもありました。そこでお世話になった大学院の先生に相談をし、推薦していただきました。

――先生は、異動先の学校でも同様のプロジェクトを続けてきたわけですが、環境が変わっても長く続けられた理由はどこにあったと思いますか ‎?

磯部 どの学校にも、受け継がれてきた文化や歴史、個性があります。まずその学校の強み・個性を活かしながら、図書館が持っている「人・地域とつながる機能」を使って何ができるのか考え、校長のビジョンを踏まえ、みんなとともにアイデアを出し合い活動してきたことが継続できた理由なのではないかと思っています。

――受賞した時のお気持ちと、贈呈式・創発ディスカッションに参加した感想を教えてください。

磯部 受賞のお知らせを頂いたときは本当に驚きました。これまでこの活動にご協力いただいた方、お世話になった方々の顔が浮かんで、みなさんへの感謝の気持ちでいっぱいになりました。

授賞式やグループワークに参加して感じたのは、受賞者の皆さんの活動には共通して「子供の笑顔」や「子供の主体性」というテーマが流れていることです。これが教育活動にはやはりとても重要なことであり、私もこれからも大事にしていきたいテーマであると再確認できました。

また、同じ静岡県の「おやじの会」という取り組みも、とても刺激になりました。毎月一回子供たちが学校に集まりお泊り会をする活動なのですが、あえて大人は何もプログラムを準備せず、子供たちが自由に過ごす場を提供することで子供と大人に信頼関係が生まれ、活動の継続や発展につながっているという点がとてもユニークですよね。人と出会い、関わり、響き合い、地域愛を育むというコンセプトにも非常に共感しました。

――今後どのような形でこの計画を発展させていきたいと思いますか ‎?

磯部 学校で過ごす時間は、子供にとっては大人になるための準備期間でもあります。だからこそ、多くの人とのつながりのなかで子供たちを育み、学校の中に、人生は楽しく、世の中には素敵な大人がたくさんいて、自分の世界は際限なく広がっている、ということを学ぶ場を作りたいと思っています。学校図書館は、そうした役割を担える玉手箱のような素敵な場所だと考えます。多様な人々とともに、子供たちの笑顔輝く素敵な未来を協働創造できたらと思います。                                                                                                                                                                                    

磯部真代先生(左)と、推薦人の常葉大学大学院 紅林伸幸教授(右)

【推薦者からのコメント】
学校図書館を単なる本の貸し出し場所ではなく、「子供たちの育ちのプラットフォーム」として機能させ、子供、教師、地域をつなぐ場とするこのプロジェクトは非常に興味深く、これからの教育に重要なテーマではないかと感じました。さらに、教職大学院での学びを現場の実践に活かし、異動先の学校でも柔軟に継続できている点も高く評価しています。環境や立場が変わりつつも実践を続けていくことは、なかなか難しいものなのです。
またこのプロジェクトの素晴らしい点は、子供や地域のボランティアの方々が主体的にプロジェクトを動かし、発展させていることです。地域との連携が課題となっている学校が多い中で、磯部先生の学校では、各イベントの企画や準備などに積極的に図書委員の子供たちや地域ボランティアの方が参加しています。そしてまず子供同士がつながり、それから地域ともつながり、その輪が広がっていくのを目の当たりにし、大変有意義なプロジェクトであると感じています。
(常葉大学大学院 教授 紅林伸幸)

博報賞・文部科学大臣賞受賞者インタビュー③【宮崎県】横山一憲 氏

受賞者名:宮崎県西都銀上学園 西都市立銀上小学校・銀鏡中学校(校長 横山一憲)
活動タイトル:銀上地域の自然・文化が紡ぐ教育の再生~山村留学制度と共に歩んできた30年の取組~

推薦者:宮崎県西都市教育委員会 教育長職務代理者 髙橋 博昭

今後も地域との連携を重視し、学校が地域に対して何ができるかを考えていきたいと語る横山一憲校長(宮崎県西都銀上学園 西都市立銀上小学校・銀鏡中学校) 

学校存続をかけた取り組みが、学校と地域との密接な連携を生み出し、活性化につながった

――貴校の実践について概要を教えていただけますでしょうか

横山 本校の学校の特色として「豊かな体験活動」と「山村留学」が挙げられます。

「豊かな活動」とは、「自然を活かした活動」、「伝統文化を生かした伝承活動」、「少人数を活かした学習活動」です。 そして「山村留学」は、子供の減少対策と学校存続を目的として地域の方々が実行委員会を立ち上げ、1995年にスタートした活動でした。その後県内では参加者が集まらず中止していく地域が多い中、同校では里親として子供たちを受け入れてくださる地域の方々の協力もあり、30年間継続することができました。現在は、県内唯一の山村留学生として14名(小学生8名、中学生6名)が、この西都銀上学園の小・中学校で学んでいます。

――山村留学を経験した子供たちには、どのような変化があったのでしょうか?

横山 まずは自立性の向上です。親元を離れた生活になるので、甘えは通用せず、自宅ではゲームもできません。これまでとは違う新しい家族と過ごす中で、自立しようという気持ちが強まったことに加え、里親の皆さんのサポートもあり、コミュニケーション力や礼儀、思いやりの気持ちも次第に身に付けていきました。

また、川で泳いだり、滝に打たれたり、ハチの巣を取って食べたり、山菜を採って天ぷらにして食べたりといった本物の自然体験活動に子供たちは生き生きと取り組むようになり、心身ともに元気になっていきます。

さらに同校では、「銀鏡神楽」という500年以上続く伝統芸能の伝承活動を行っています。子供たちは地域の人たちから直接指導を受けるなど交流を重ねながら、地域に貢献する喜びや達成感を味わい、初めは消極的だった子もどんどん積極的に取り組むようになるなど、大きな成長を見せてくれました。

――贈呈式・創発ディスカッションに参加した感想を教えてください。

横山 グループワークでは、それぞれ受賞の領域が違っていても、参考になることや共感できることが非常に多く、勉強になりましたね。

コミュニティスクールの先進的な取り組みや図書室の地域開放、子供たちが自分たちでプロジェクトを主体的に進める活動など、どれも素晴らしい実践で、私たちの学校でも活用できるアイデアもたくさんあると感じました。

なにより、地域との連携など、自分たちにとっては当たり前だと思っていたことが、実は当たり前ではなく、とても価値のあるものであると評価していただいたことは非常に得難い経験でした。我々自身もこれまでの実践を改めてみつめ直して価値付けし、今後も学校が地域に対して何ができるか、考えていきたいと思いました。

――今後の目標を教えてください。

横山 今後はこれまで以上に地域の良さを活かし、地域と一体となった教育活動を展開していきたいと考えています。

そして、この地域の方々に支えられて育った子供たちが、故郷を誇りに思い、いずれまたこの地域に戻ってきて貢献してくれることを期待しています。その時に、この学校が地域づくりの中心となっていたらうれしいですね。

横山一憲校長(左)と、推薦人の宮崎県西都市教育委員会 教育長職務代理者 髙橋博昭氏(右)

【推薦者からのコメント】
同校は、現在宮崎県で山村留学制度を続けている唯一の学校です。博報賞の推薦に関しては、30年以上にわたり地域と学校が協力し合い、この活動を継続させてきたこと自体評価されるべきと考えました。
また、留学してくる子供たちの中には、不登校など様々な背景を抱えている子もいますし、必ずしも全員がポジティブな気持ちで留学してくるわけではありません。そうした子供たちの背景を学校も地域の方も把握しながら、温かく受け入れてくれています。そして子供たちは、慣れない場所での生活に葛藤しつつも、豊かな自然に触れ、新しい土地で出会った友達や里親との関係性の中で少しずつ自己肯定感や自信を得て、大きな成長をみせてくれました。さらに留学を終えた後も、里親となってくれた地域の方や、同級生たちと交流を続けています。これはこの小さな山間部の学校が山村留学を通じて地域活性化に大きく寄与していることを意味しており、それも推薦理由の一つです。
(宮崎県西都市教育委員会 教育長職務代理者 髙橋博昭)


以上、博報賞・文部科学大臣賞を受賞した3件の活動については、今後あらためて当サイトの別の記事で詳しくご紹介していく予定です。ご期待ください。

「博報賞」の詳細・最新情報は公式ウェブサイトで

今回の受賞事例に加え、過去の受賞事例、選考プロセス、財団の活動内容などの詳しい情報については同賞の公式ウェブサイトからもご確認いただけます。

現場の先生方が培ってこられた独自の教育実践や革新的なアプローチは、次世代の教育にとって貴重な財産です。皆さんの実践知を社会に共有する機会として、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

※本賞の応募には推薦者資格を有する第三者(教育長、校長会会長、教育関連団体代表者など)による推薦が必要となっています。自薦はできませんのでご注意ください。

応募期間:4~6月下旬

詳細については、博報堂教育財団のウェブサイト(下記)をご覧ください。

リンク:博報賞 公式ウェブサイト

取材・文/出浦文絵、撮影/杉原賢紀(小学館写真室)

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