「中核的な概念」とは?【知っておきたい教育用語】
2027年告示といわれている次期学習指導要領作成に向けた議論のなかで、「各教科等の中核的な概念・方略」という言葉が頻繁に登場します。今回は、学習指導要領の目標や内容の一層の構造化を図るうえでのキーとなる「中核的な概念」について解説していきます。
執筆/創価大学大学院教職研究科教授・渡辺秀貴

目次
「中核的な概念」とは
【中核的な概念】
次期学習指導要領を検討する過程で、教科等の目標や内容を一層わかりやすく構造化するうえでのキーとされているもの。(ただし、明確に定義づけされているわけではない。)
「中核的な概念・方略」という語は、次期学習指導要領改訂における構造化・重点化のなかで「仮称」として扱われており、文部科学省の公表文書での明確な定義づけは見当たりません。 例えば、文部科学省が公表した「教育課程企画特別部会における審議の状況について」では、「各教科等の『中核的な概念や方略』を中心に、学習指導要領の目標・内容の一層の構造化を図ることが考えられるのではないか」と明記されています。
また、「学習指導要領の構造化を進めるに当たっての諸論点」では、「『見方・考え方』と、今回新たに整理する各教科等の『中核的な概念・方略』、また個別の『知識及び技能』『思考力・判断力・表現力等』の関係性をどのように整理すれば、学校現場の授業づくりを支える上でシンプルで分かりやすいものとなるか」という論点整理がなされています。
このように「中核的な概念」は、現行の学習指導要領の各教科・領域等の目標の表現で用いられている「見方・考え方」や「知識及び技能」、「思考力・判断力・表現力等」を含む、子どもに身につけさせたい主要な概念として扱われていると考えられます。
「中核的な概念」という新たな用語を用いる意図
「中核的な概念(中核的な概念・方略)」という新しい用語を、あえて導入しようとしている背景には、次期学習指導要領での改訂方針の根幹に関わる意図があるとされており、教科内容の過密化の是正によって、知識を構造化し、「深く、転移可能な理解」を形成するためだと考えられます。
教員自身が指導の専門家として教科の本質を再確認し、「見方・考え方」と連携させることで、授業設計・評価を見直して改善していく――。つまり、量から質への転換を図るための学びの骨格としての概念といえます。
現行の学習指導要領(2017年告示)では、「資質・能力」ベースの内容整理を導入しましたが、結果として内容が増大し、教師や子どもの負担が増え、授業の形骸化が指摘されてきました。中央教育審議会の「論点整理」でも、「知識・技能を網羅的に扱うことで、深い学び・探究的な学びに至りにくい」「教科書内容が過密で、重要な学びが埋もれている」との課題が明記されています。
こうした反省から、「何を削るか」ではなく、「何を中心に据えて構造化するか」という方向で、議論が進んでいます。そのための《軸》として、「中核的な概念」が提案されているのです。
