「愛国心条項」とは?【知っておきたい教育用語】
「愛国心をどのように教えるか?」――道徳科の授業づくりにおいて悩む先生は少なくないはずです。愛国心に関する指導の背景には、2006年の教育基本法改正で加えられた「愛国心条項」が深く関わっています。今回は、制定の経緯をたどると同時に、学習指導要領で示されている授業での扱い方を確認していきましょう。
執筆/文京学院大学名誉教授・小泉博明

目次
教育基本法における「愛国心条項」とは
【愛国心条項】
教育基本法の第2条には5項目の教育目標が設定されており、第5項目に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」とある。これが「愛国心条項」といわれている。
はじめに、教育基本法とは、日本の教育行政をどのような理念と方法で行うかを定めた基本的な法律です。1946(昭和21)年に公布された日本国憲法の理念を重視し、1947(昭和22)年に民主主義的な教育理念を掲げた教育基本法が制定されました。
その後、2006(平成18年)12月に自民党政権によって、改正教育基本法が成立し、第2条第5項目に、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」いわゆる「愛国心条項」が新たに加えられました。
文部科学省は、改正の趣旨について、教育基本法が制定されてから半世紀以上が経過し、この間、科学技術の進歩、情報化、国際化、少子高齢化など、我が国の教育をめぐる状況は大きく変化するとともに、様々な課題が生じているため、このような状況に鑑み、新しい教育基本法を制定したとしています。
そして、「国民一人一人が豊かな人生を実現し、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の平和と発展に貢献できるよう、これまでの教育基本法の普遍的な理念は大切にしながら、今日求められる教育の目的や理念、教育の実施に関する基本を定めるとともに、国及び地方公共団体の責務を明らかにし、教育振興基本計画を定めることなどについて規定した」とあります。
改正教育基本法の「愛国心条項」設定の是非をめぐっては、愛国心教育のあり方が、戦中の国家主義、軍国主義の土壌を育んできたのではないかという点で、国会において与野党間で活発な議論が展開され、また国民の間でも論争が行われました。
