博報賞「文部科学大臣賞」を受賞した下関市立本村小学校の取組レポート【PR】
博報賞は、児童教育の現場を活性化し支援することを目的として、博報堂教育財団が主催する賞です。全国の学校や団体、教育実践者が取り組む創造的な教育活動を表彰し、その価値ある実践を社会に広めることで、日本の教育全体の質の向上に貢献しています。
各受賞者には賞状と副賞が贈られ、とくに優れた取組には文部科学大臣賞も授与されます。今回は、第55回「博報賞・文部科学大臣賞」(日本文化・ふるさと共創教育領域)を受賞した取組をご紹介します。
提供/博報堂教育財団
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本記事では、博報賞審査委員でもある北陸大学学長・東風安生氏による、第55回博報賞・文部科学大臣賞を受賞した山口県下関市立本村小学校の活動レポートを紹介します。
本活動は、児童数50名弱の小規模校でありながら、地域の伝統文化「平家踊り」の継承を教育活動の中核に据え、コミュニティ・スクールの仕組みを活用した好事例として高く評価されました。40年続く「平家踊りを受け継ぐ子の会」を通じて、子どもたちの主体的な学びと地域文化の継承が見事に融合した取組をご覧ください。
目次
平家踊りの伝統を受け継ぐ~コミュニティ・スクールの仕組みを活用して~
第55回「博報賞・文部科学大臣賞」受賞(日本文化・ふるさと共創教育領域)
山口県下関市立本村(ほんむら)小学校
報告者:北陸大学学長・東風安生(こち やすお)氏
今回は、博報堂教育財団の第55回「博報賞」日本文化・ふるさと共創教育領域で、博報賞・文部科学大臣賞を受賞された山口県の「下関市立本村小学校」をレポートする。2月21日(金)に、下関駅からクルマで5分ほどかけて、平家ゆかりの歴史ある町、彦島にある下関市立本村小学校を訪れた。
平家踊りを受け継ぐ子の会 引き継ぎ式に参加して
令和6年に創立150周年を迎えた伝統ある小学校。校長室には取材時の校長、前田真奈美先生(令和7年3月退職)の前任まで41代の校長先生の写真が飾られている。150周年の記念行事が11月に開催されたが、10月に博報賞・文部科学大臣賞の受賞が決まり、150年目の記念の年に大きな栄誉が加わった。本村小学校は昭和30年代には2,200名を超える児童数だったが、人口減少に伴って現在は50名弱の小規模校となっている。博報賞に応募している全国の学校は、児童数の減少問題が次第に大きな課題となっているところが多いようだ。児童数の減少は、学校経営や教育課程などに影響を及ぼす。一方で地域は人口減少に伴い、地域に代々つながる伝統文化について、これを受け継いでいくなり手不足が、深刻な社会問題となっている。コミュニティを活性化させるには、土地で生まれ育った者が伝統文化を受け継ぎ、楽譜のない踊りや音楽を継承することが必要である。

この両者の課題を解決するために、本村小学校はコミュニティ・スクールとしての良さを活かした動きに出た。令和2年度から、同じ中学校区にある西山小学校と玄洋中学校に声をかけて、学校・地域連携カリキュラム「ふるさと玄洋学」をスタートさせている。この総合学習としての「ふるさと玄洋学」の学びの中心に、平家踊りの継承を位置付けている。
平家踊りは、平家一門が敗れた壇ノ浦の戦いの地を郷土とする下関で、栄華の時をはかなくも閉じた平家の武士への鎮魂の思いを踊りで表現している。歴史的な土地柄であり、玄洋中校区には平家踊りの演奏者がたくさんいる。地域の伝統文化であり、踊りと太鼓、三味線や音頭のすべては、地元保存会の彦島連の皆さんが中核となっている。そこに、昭和59年、「本村小平家踊りを受け継ぐ子の会」は結成された。児童たちは、太鼓、三味線、音頭の3つの実技指導を受けている。すべてを児童たちだけで演奏できるのはこの会だけだそうだ。
「平家踊りを受け継ぐ子の会」は、取材時24名が参加していた。本村小学校からはそのうち16名で、会の中心となって活躍している(他に西山小4名、中学生4名)。16名の本村小学校の児童は、本村小学校全体の児童数の37%にあたる。教育課程において、生活科や総合的な学習の時間で、平家踊りを体験して関心が高まることで、興味をもった児童が本格的に技能を磨くために「平家踊りを受け継ぐ子の会」に入会する仕組みが出来上がった。
「平家踊りを受け継ぐ子の会」が結成40周年を迎えた令和7年、取材の機会に恵まれた。毎年2月には、小学校を卒業する児童が引き継ぎ式において、平家踊りの伝統を次の6年生にバトンタッチする。太鼓のバチが、先輩から後輩に受け渡された。法被を着た児童は、真剣そのもの。卒業生代表の挨拶では、「総合の学習で平家踊りを体験したことがきっかけで入会した。海外の人の前で踊れたことがうれしかった」と語った。次に指導をしていただいた保存会の指導者の皆さんへ、卒業生からの花束のプレゼントとメッセージが渡された。式の最後には、前田校長から卒業生に対して感謝状の授与、教育長からのお祝いメッセージが披露された。卒業生への前田校長先生からのメッセージでは、「40年間平家踊りを子どもたちで続けてきた、自分もその一員だという自信と誇りが感じられた。新しい伝統を築いていってほしい」と期待が寄せられた。


子どもの熟議、教職員の熟議、伝統をつなごうとする仲間の熟議
教師は、どの子にも学びの機会が与えられるようにと工夫することを考える。この熱意が児童に伝わると、彼らは自ら話し合って〝納得解〞を見つけようとする。その活動が〝子どもの熟議〞だ。「平家踊りを受け継ぐ子の会 引き継ぎ式」において、参加していない本村小学校の児童も、約半数が参加した。彼らがこの引き継ぎ式で、司会やプレゼンターなどに自ら進んで取り組んでいた。もともと「平家踊りを受け継ぐ子の会」だけでなく、在校生が話し合って皆でこの引き継ぎ式をどのように運営するか話し合ったという。
熟議の成果の一端を拝見できたのも、もともと本村小学校は「本村っ子熟議」において、学校運営協議会の委員の方と5・6年生が熟議を交わして、「みんなで考えよう 本村の未来」をテーマに「関わる力」を育てているからだ。学校独自の裁量の時間である「本村タイム」では、保護者も加わり、1・2年、3・4年、5・6年、保護者や地域による単元計画を立てる。スタートアップ熟議として、高学年は自分の考えをまとめ、考えを相手に伝え、相手の考えを最後まで聞き、相手の考えの良い点を認めて計画を作成している。子どもの熟議は、開かれたコミュニティ・スクールの中で世代を超えた熟議になっている。
また指導する教師たちも、熱い熟議を交わしている。2月下旬は、ちょうど玄洋中校区の小中学校が合同で、次年度に向けて「ふるさと玄洋学」のカリキュラムの見直しを行っている。令和6年度は、5月と翌年2月にカリキュラム・マネジメントミーティングとして(小学校と小学校、小学校と中学校で)実施し、また夏休み期間にはカリキュラム・マネジメント熟議として小中学校の教職員が同じテーブルで具体的な思いを交わしている。管理職においても、玄洋中校区で毎月1回の3校校長会、3校教頭会を実施して、学校・地域連携カリキュラムの進捗状況を管理している。指導する側は、児童や地域の方に任せてただ見守るのではなく、自分たちが熟議というものはどういうものかを経験し、ポイントとして押さえることを確認しているからこそ、迷いなく児童相互の熟議も進められるのである。
取材に伺ったときにはすでに令和7年度のスタートアップ熟議の予定が決定していた。5月下旬に3校の学校運営協議会委員の方や玄洋中学校1年生、西山小学校と本村小学校の6年生が参加する予定である。テーマは、「どのような玄洋学園をめざすか」だ。教職員の研修テーマは、地域の強みを活かした「ふるさと玄洋学」のブラッシュアップ、9年間を見通した学習指導で、その核に伝統芸能「平家踊り」の継承を位置付けている。
再来年の令和9年3月に玄洋中校区の3校を統廃合し、4月には玄洋中学校の場所に、施設一体型小中一貫教育校「玄洋学園」が開校することが決定したと伺った。この「本村小平家踊りを受け継ぐ子の会」は、「玄洋学園平家踊りを受け継ぐ子の会」にシフトする。
平家踊りの伝統も、150年続く小学校の伝統も節目を迎えている。次の段階への新たな一歩に向けて、引き継ぎ式や熟議で見せた児童たちのやる気が後押しをしているのだと実感した。「子どものやる気が大人を動かすのです」このことばを前田校長は、確信をもって語っている。


応募方法と重要なお知らせ
以上、博報賞審査員でもある北陸大学学長・東風安生氏による、第55回博報賞・文部科学大臣賞受賞の山口県下関市立本村小学校の活動レポートを紹介いたしました。
さて、第56回「博報賞」の応募は現在受付中です。応募には推薦者資格を有する第三者(教育長、校長会会長、教育関連団体代表者など)による推薦が必要となっています。自薦はできませんのでご注意ください。
応募締切: 2025年6月25日(水)
応募方法: 博報堂教育財団のウェブサイト(下記)から応募書類をダウンロードし、必要事項を記入の上ご応募ください。
リンク:博報賞 公式ウェブサイト
過去の受賞事例、選考プロセス、財団の活動内容など、さらに詳しい情報についても上記の公式ウェブサイトからご確認いただけます。
現場の先生方が培ってこられた独自の教育実践や革新的なアプローチは、次世代の教育にとって貴重な財産です。皆さんの実践知を社会に共有する機会として、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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