【新任教頭(副校長)必見】自走し成長する学校組織を作ろう。「ほうれんそうのおひたし」から発展させる学校経営

教頭(副校長)というポジションは、学校の要でもあり、教職員の良き先輩でもあります。よくビジネスシーンでは、部下に対応する心得を「おひたし」、組織運営の原則を「ほうれんそう」と呼びますが、これらは自走して成長していく学校組織を作るために不可欠な要素です。これらをうまく活用し、あなたの学校経営をどんどん進化させていきませんか?

【連載】がんばれ教頭クラブ
目次
1 自走する組織を作るための仕掛け
教頭は学校運営の要であり、教職員の頼れる先輩です。若手教職員が自ら成長したいと思えるような仕掛けをしていくことが必要です。
例えば自分のミスを正直に報告したのに、教頭が感情的に怒れば「もう報告しないほうがいい」と萎縮してしまいます。一方で、何も指摘せずにいると同じミスを繰り返してしまうかもしれません。
教頭は、ミスを振り返る機会を作りながら、改善へのステップを示す役割を担うことが求められます。
そのためには、教頭自身が常にフラットな感情で接し、部下の不安や悩みに気を配ることが大切です。そして、学校全体のビジョンを示し、職員がその方向に向かって力を発揮できる環境を整えていくことで、よりよい学校運営につながります。
その下支えになるのが、「おひたし」なのです。
2 「おひたし」を正しく使うための心構え
「おひたし」とは、部下に対する適切な関わり方です。
<お> 怒らない
感情的に叱るのではなく、冷静に事実を伝える。
<ひ> 否定しない
すべてを認めるのではなく、問題点を明確にする。
<た> 助ける
世話を焼きすぎず、自主性を尊重しながらサポートする。
<し> 指示する
押し付けるのではなく、選択肢を示して考えさせる。
「おひたし」を実践していく中では、特に「公平性」に注意をしましょう。
特定の部下に対して「なぁなぁ」だったり、逆に厳しく当たったりすると、組織全体のバランスが崩れます。部下職員はそういったことを見て感じています。公平な目線で評価し、適切な指導を行うことで、信頼関係が生まれます。
3 目指すのは「育成型アプローチ」
この「おひたし」によって目指すべきなのは、部下に対する「育成型アプローチ」です。
これは、単に指示を与えるだけではなく、教職員が主体的に考え、行動できるようにサポートすることを目的としています。具体的には、教職員に対して挑戦的な課題を与え、その進捗や結果をともに考えながら成長を促していきます。こうした取り組みを通じて、部下職員一人ひとりが自己の役割に対する理解を深め、やりがいを感じることができるようになります。
<「育成型アプローチ」のポイント>
問いかけを増やす
「育成型アプローチ」では、単に「それはダメだ」と否定するのではなく、「どうすればよくなると思う?」という問いかけを増やすことが重要です。このように問いかけを通じて、職員に自分で考えさせ、問題解決の方法を自ら見つけさせることが、主体的な成長を促す鍵となります。自分の考えを深めるための問いかけをすることで、職員はただ言われたことを実行するのではなく、自分自身で目標に向かって行動するようになります。
ビジョンを明確に伝える
さらに効果的な「育成型アプローチ」では、単に仕事の指示を出すだけではなく、「なぜこの取り組みが必要か」を職員にしっかりと伝えることが重要です。ビジョンを明確にすることで、職員はその目標や目的を理解し、それに向かってどのように取り組むべきかを具体的にイメージできるようになります。また、目標を明確に伝えることで、職員は自分の努力がどのように組織全体に貢献するのかを理解し、仕事への意欲やモチベーションが高まります。
成功体験を積ませる
職員が自己成長を実感できるためには、小さな成功体験を積み重ねることが非常に効果的です。最初から大きな成果を期待するのではなく、簡単な達成から始めて、徐々に難易度を上げていくことで、職員の自信とモチベーションが育まれます。
そして皆さんは、小さな成功体験を積み重ねていくことで最終的には大きな成果に繋がる、というところまで、部下にしっかり示してあげられるようにしましょう。
また、経験豊富なベテラン教職員に対しては、「これまでの経験を活かして、新しいことに挑戦してほしい」というメッセージを伝えることで、新たな役割に挑戦してもらうことができます。これにより、ベテラン職員の持っているスキルや知識を最大限に活用することができ、さらなる成長を促すことができます。新しい役割に挑戦してもらうことで、ベテラン教職員は再び自己成長を感じ、より高い意欲を持って業務に取り組むことができます。
「育成型アプローチ」は、教職員の主体性を引き出し、成長を促すために非常に有効な手法です。積極的に問いかけ、ビジョンを共有し、成功体験を積み重ねることで、教職員が自ら学び、成長する環境を作り出すことができます。教職員一人ひとりの成長を支援しながら、組織全体の成果を高めることができます。
4 シチュエーション別の具体的対応策
学校でありがちなシーンを想定してみます。
若手教員が授業で失敗したと話してきた場合
NG対応:「なんでそんなことをしてるんだ!」
と感情的に叱る。
OK対応:「報告してくれてありがとう。どんなところがうまくいかなかったと思う?」
と問いかけ、難しかった部分をいっしょに考えようと具体的な改善策に目を向けさせます。
ベテラン教職員がICT導入に後ろ向きな場合
NG対応:「時代の流れだから…やってください!」
と強制する。
OK対応:「これまでの経験を活かす方法はあると思うのですが、どう活用できそうですか?」
と意見を聞く。
保護者対応で中堅教員が困惑している場合
NG対応:「自分で何とかして!」
と突き放す。
OK対応:「どんなやり取りをしたの? 保護者の気持ちをどう考えた?」
とヒアリングして考えさせる。
このように、部下の状況に応じて「おひたし+育成型アプローチ」を柔軟に使い分けることが大切です。こういったことができていないと、部下職員が職員室に帰ってこなくなり、よほどのことがない限り管理職とのチャンネルを切ってしまいます。
5 教頭が目指すべき組織運営方法「ほうれんそうのおひたし」
教頭が学校組織を効果的に運営し、教職員と信頼関係を築くためには、「おひたし」の文化を徹底的に導入し、一人ひとりの声に耳を傾けることが不可欠です。このアプローチは、教頭自身が組織のファシリテーターとして、教職員を支え、学校全体の成長を促すものです。教頭がどのように「おひたし」を活用して、教職員との関係を築き、学校の運営を円滑に進めるかを考えることは、非常に重要です。教頭と教職員との良好なコミュニケーションが、学校全体の成長を支える基盤となります。
その上で、組織基盤づくりの大原則「報告」「連絡」「相談」<ほうれんそう>の3つの要素を効果的に機能させることです。それぞれの要素が機能することで、教職員の意思疎通と働きやすさが向上し、ひいては児童生徒の学びの質も高まることにつながります。
「報告」について
教員が現場で発生している状況を適切に報告できる仕組みを作ることは、学校運営の土台です。報告は単なる形式に留まらず、問題や課題を早期に発見し解決するための手段として活用されます。そのため、報告の内容が正確かつ具体的であることが求められます。言葉を変えれば、
「悪いことも包み隠さず正直に、いつでも伝え合えること」
です。ぜひとも管理職の皆さんは、教職員が報告しやすい環境作りをしましょう。気軽に報告できるような場を設けたり、会話の機会を増やすことも効果的です。
「連絡」について
組織として、情報の共有ルールを明確にして統一させましょう。
学校全体で使用する連絡手段を統一し、教職員全員が同じ方法で情報を受け取れるようにします。
メール、チャットツール、掲示板など、情報が一貫して伝わる手段を選ぶことが重要です。
また、重要な事項については、全員が見ているか複数回確認することが必要です。チャットツールは発言へのリアクションをスタンプでつけられたり、既読かどうかが分かる仕組みがありますので、それをうまく活用しましょう。
また、週に一度全職員を対象とした短時間ミーティングを開くことで、重要事項を確認し合うのもオススメです。
「相談」について
教職員が悩みを抱え込まず、気軽に相談できる環境を作ることは、教職員のメンタルヘルスを守り、組織全体の活性化にもつながります。教頭自身がオープンで親しみやすい姿勢を見せ、安心して相談できる雰囲気を作り出すことが大切です。
一人一人が抱える課題に適切に対応するためには、定期的に1on1ミーティングを設けることが有効です。
また、折りに触れ「問題ない?」「順調?」などと声をかけ、教職員が話しやすいキッカケを提供しましょう。
管理職は常に部下に対して、いつなんどき、何を話しかけても対応してくれる、という安心感を提供することが大切です。
◇
「ほうれんそうのおひたし」で部下との信頼関係や安定した連絡体系が作れたら、次は問いかけによる思考促進、具体的な目標設定、成功体験の積み重ねを組み合わせることで、教職員一人ひとりの意欲を高めていきましょう。
安心感とチャレンジする心の両輪を回す指導こそが、これからの教育現場で求められるリーダーシップです。教頭としての関わりが、教職員を、児童生徒を、そして学校の未来を豊かに育んでいきます。
写真/写真AC
【参考図書】
・学びを結果に変えるアウトプット大全/樺沢紫苑/サンクチュアリ出版
山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。