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あなたの学校では、具体的に決められている?学習評価と指導要録~シリーズ「実践教育法規」~

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田中博之

教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第36回は「学習評価と指導要録」について。新学習指導要領のねらいに沿った学習評価の方針は知っていますか?「主体的に学習に取り組む態度」が新たに加えられた重要なポイントです。

執筆/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#36

学習評価の在り方

中央教育審議会の教育課程部会から、2019年1月に「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」という文書が出されました。これは、新学習指導要領における「主体的・対話的で深い学び」に沿った新しい学習評価の方向性を定めたものです。

それに続いて、この「報告」を受けて、文部科学省は初等中等教育局長名で、「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」という文書を出し、新しい学習評価の在り方について全国の教育委員会や都道府県知事、地方公共団体の長などに周知、依頼しました。

「通知」が示す評価の課題

「通知」では、これまでの学習評価には次のような5つの課題があったと指摘しています。

●学期末や学年末などの事後での評価に終始してしまうことが多く、評価の結果が児童生徒の具体的な学習改善につながっていない

●現行の「関心・意欲・態度」の観点について、挙手の回数や毎時間ノートをとっているかなど、性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭しきれていない

●教師によって評価の方針が異なり、学習改善につなげにくい

●教師が評価のための「記録」に労力を割かれて、指導に注力できない

●相当な労力をかけて記述した指導要録が、次の学年や学校段階において十分に活用されていない

このような課題を解決するために、新学習指導要領のねらいを生かした学習評価の在り方の基本方針を、次の3点に定めました。

①児童生徒の学習改善につながるものにしていくこと
②教師の指導改善につながるものにしていくこと
③これまで慣行として行われてきたことでも、必要性・妥当性が認められないものは見直していくこと

ここでもっとも大切なことは、①の「学習改善につながるものにしていくこと」というポイントです。つまり、学習評価は、授業中での子どもの学習状況の見取りだけでなく、指導要録に記入する評価データや評価資料を集めることに加えて、子どもたちの学習が、より「主体的・対話的で深い学び」になるように改善されることにつながるものでなければならないという指摘です。

主体的に学習に取り組む態度

次に、「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」とともに公表された、新しい指導要録の参考様式について見てみましょう。この中では新たに、観点別学習状況の評価の観点として「主体的に学習に取り組む態度」が設定されました。

この評価の在り方については、文部科学省が2019年に出した「学習評価の在り方ハンドブック」の中で特徴づけられています。また、「主体的に学習に取り組む態度」は、「粘り強い取組を行おうとする側面」と「自らの学習を調整しようとする側面」の2つからなることを示し、添付されている図表のように特徴づけています。

評価の観点及びその趣旨

先述の「通知」とともに公示された別紙4「各教科等・各学年等の評価の観点等及びその趣旨」に小学校及び中学校の例示が、そして別紙5に高等学校の例示がなされています。

文部科学省「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」別紙4に、各教科の具体例が示されています。どの教科でも、第3観点は「主体的に学習に取り組む態度」となっています。

各学校においては、これらの参考資料をもとにして、新しい学習指導要領のもとでの学習評価の在り方を具体的に策定することが必要になります。

『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正

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