新学習指導要領時代に求められる学級経営力とは?

どんな大規模校も、あるいは小規模校も、学校は一つひとつの学級の集合体として成り立っています。ゆえに、学校をよくするということは、それぞれのクラスの運営状況を向上させていくことにほかなりません。時代が令和となり、新学習指導要領がスタートするこの時代に求められる学級経営とはどのようなものか、考えてみます。

脱靴場
撮影/金川秀人

「学級崩壊」をどう未然に防ぎ、学級経営の水準を保っていくか

授業中に子どもたちが私語をしたり、立ち歩いたりして授業が成立しない。子ども同士のいじめやけんかなど、トラブルが絶えません。担任が自信を失い、指導への意欲を持つことができない。教師への不信感から、保護者との関係も悪化する……。一般的に「学級崩壊」といわれるこのような状況は、教師にとって、学校にとって、そして何よりも子どもたち自身にとって不幸な状況であり、絶対に避けなければならない事態です。

学級がうまく機能しない状況

  1. 就学前教育との連携・協力が不足している事例
  2. 特別な教育的配慮や支援を必要とする子どもがいる事例
  3. 必要な養育を家庭で受けていない子どもがいる事例
  4. 授業の内容と方法に不満を持つ子どもがいる事例
  5. いじめなどの問題行動への適切な対応が遅れた事例
  6. 校長のリーダーシップや校内の連携・協力が確立していない事例
  7. 教師の学級経営が柔軟性を欠いている事例
  8. 学校と家庭などとの対話が不十分で信頼関係が築けず対応が遅れた事例
  9. 校内での研究や実践の成果が学校全体で生かされなかった事例
  10. 家庭のしつけや学校の対応に問題があった事例

  11. いわゆる『学級崩壊』について~『学級経営の充実に関する調査研究』(最終報告)の概要~」(2000年/文部科学省)より

学習であれ生活であれ、学校でのさまざまな活動の基本的な単位である「学級」。その学級一つひとつの経営状況は、そのまま学校全体の経営状況に影響する大きな要素であり、ゆえに健全な学校経営をめざす上で、教師一人ひとりの学級経営力を高めることはきわめて重要なテーマです。

その上、学級経営をめぐる環境は年々複雑さを増しています。子どもの多様化や、保護者のニーズの高まり、そして新学習指導要領への対応などの教師自身の負担増加。さらには「働き方改革」の中で、学級の子どもと向き合う時間をどう確保していくかという問題もあります。全国的に教員の若年化が進む中、学校全体として学級経営の水準を一定に保っていくことが大きな課題となりつつあります。

学級担任と組織の両輪で、学校としての学級経営力を高める

とはいえ、教師一人ひとりの学級経営力を高めることは、そう簡単にできることではありません。そもそも、教員養成課程においても「学級経営」そのものについて学ぶ機会は少なく、現場においても学級の状況はさまざまです。「これ」という一つのやり方で対応できるものではなく、経験豊富なベテランであっても、ある年突然、学級経営につまずくということが起こりうるのです。

国立教育政策研究所生徒指導研究センターが2005年にまとめた報告書では、こうした学級経営の難しさを捉えた上で、学級運営や生徒指導においても学校としての組織的・計画的な取り組みが必要であるとし、その視点として以下の5つを挙げています。

①多様な視点を通した児童理解の深化こそ基本。

②学級・学校内の豊かな人間関係の構築、自己指導力を高める取り組みが大切。

③学校における生徒指導体制の確立が重要。

④学校・家庭・関係機関・地域等の開かれた連携と協働の推進が重要。

⑤学校評価等の活用、教育委員会のサポートが大事。

学級運営と生徒指導の関連図
学級運営等の在り方についての調査研究」報告書(2005年/国立教育政策研究所生徒指導研究センター)より

つまり、学級担任においては個々の児童への理解を深化させつつ、学校全体としては生徒指導体制を確立させることで学級経営と生徒指導の相互支持・促進を生んでいくことが重要であるということです(上図参照)。

折しも、令和という新しい時代がスタートし、小学校より順次新学習指導要領が全面実施となるこのタイミングは、これまでの学級経営への取り組みを見直し、改善していく絶好の機会と言えます。学力向上、学校力向上の土台としての学級経営の重要性を再認識し、子どもと教師が生き生きと学校生活を送るための学級経営のあり方を考えてみたいものです。

構成・文/葛原武史(カラビナ)

『総合教育技術』2020年2月号より

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