「苦手な子どもがいる」そう感じてしまう自分を否定しないで
教師たるもの、全ての子どもを好きでいなくてはならない。と思う人が多いことと思います。しかし、「苦手」と感じてしまう、その感じ方まで否定する必要はないのではないでしょうか。
心理カウンセラーとして30年以上対人関係などをテーマにセミナーやカウンセリングを行い、小学校教師からの相談も数多く受けてきた石原加受子さんに、教師の、人にはなかなか言いづらい悩みについてアドバイスをいただきました。
執筆/心理カウンセラー・石原加受子

目次
子どもに苦手意識を持つのは大人げない?
教育者として、平等や公平を教える立場であるために、「誰に対しても、差別をしてはならない、公平でなければならない」ということを自分に課してしまうあまり、 自分の感情や気持ちを抑えたり、後回しにしたりしてしまう先生たちが少なくありません。
けれども、実際の場で、いつも冷静さを保ち、誰に対しても穏やかな気持ちで接して、公平であろうとするのは難しいものです。
ある30代の男性の先生は、
「子どもらしくないA君が、苦手でたまらない」
という心情を話してくれました。
「私が子どもたちに指導しているときも、A君だけが冷ややかで、私の動揺が見透かされているように思えてならないのです」
A君が、何か極端な態度や言動をとるわけではないのですが、
「彼と目が合うと、ついそらしたくなってしまいます。子どもに苦手意識をもつなんて大人気ないと思われそうで、誰にも言っていないのですが、A君が欠席しているとき、ほっとして、肩の力が抜けている自分がいます」
というのです。
自分の「感じ方」を否定しないで!
ある年配の先生は、「私自身は、贔屓しているつもりはないのですが、子どもたちからすると、特定の子を贔屓しているように見えるようなのです」
と言います。
「もちろん、できるだけ公平であるように心がけているのですが、正直、私だって人間ですから、好き嫌いがありますし、苦手に思う子どももいます。親しみをもってくれる子どもには、嬉しくなりますし、拒否されればへこみます」
まったくその通りです。むしろ、時と場合によっては大人よりも子どものほうが辛辣で、歯に衣着せない言い方をすることがあって、打ちのめされるほど傷つくこともあるでしょう。
そんな子どもたちに対しても、公平であろうとしたり、冷静に対処しようとしたりすることは望ましいことですが、自分自身が人間として、子どもたちに対して感じる「自分の感じ方」まで否定することはありません。
むしろ、どんな立場であっても、それが仮に否定的な感情であっても、自分の感情を感じることは大事にしていたいものです。
というのは、自分の感情を感じないで、義務感や責務感だけで公平に対応しようとすると、逆に、問題が起こりやすいこともあるからです。