小3特別活動「よくかんで食べることの大切さ」指導アイデア
前文部科学省視学官監修による、小3特別活動の指導アイデアです。1月は、学級活動(2)エ「よくかんで食べることの大切さ」の実践を紹介します。
よく噛んで食べることの大切さを理解するとともに、自己の食事の仕方を改善していこうとする実践的な態度を育んでいくことをねらいとしています。学級での話合いを生かして、自分に合った目標を意思決定できることをめざします。
執筆/神奈川県川崎市公立小学校教諭・藤原和博
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
日本体育大学教授・橋谷由紀
目次
年間執筆計画
4月 学級活動(3) ア 3年生になって
5月 学級活動(1) 係を決めよう
6月 学級活動(2) ウ ぼうさいマスターになろう
7月 学級活動(1) なかよし集会をしよう
9月 学級活動(3) ウ 家庭学習パワーアップ大作せん
10月 学級活動(1) 係活動発表会をしよう
11月 学級活動(1) クラス運動会をしよう
12月 学級活動(1) がんばったね集会をしよう
1月 学級活動(2) エ よくかんで食べることの大切さ
2月 学級活動(3) イ スッキリそうじ~みんなのためにきれいに~
3月 学級活動(1) ありがとう集会をしよう
学級活動(2)エ について
学級活動(2)「エ 食育の観点を踏まえた学校給食と望ましい食習慣の形成」について、学習指導要領には、次のように示されています。
給食の時間を中心としながら、健康によい食事のとり方など、望ましい食習慣の形成を図るとともに、食事を通して人間関係をよりよくすること。
子供たちが自分自身の食生活を見直し、自ら改善して、生涯にわたって望ましい食習慣が形成され、食事を通してよりよい人間関係や社交性が育まれるようにする内容です。友達と楽しく食事をすること、健康によい食事のとり方、給食時の清潔や食事環境の整備などの改善について、身近な事例を通して考え、自己の課題に気付き、より具体的な目標を立てて取り組むことができるようにしましょう。
これまでの学習と専門職員との関連について
食育の観点から考えると、1年生では、まず給食にはたくさんの栄養がバランスよく含まれていることを知ることが大切です。好きなものばかりを食べたり、苦手なものを残したりするのではなく、給食をしっかり食べることで、体に栄養を蓄え、元気に丈夫になっていくことをおさえます。2年生では、噛むことの効果を確認します。2年生は、食材やメニューについて、健康や成長にどのような効果があるのかをより詳しく知り、よく噛んで食べることで体にどのような効果があるのか、そしてどのように噛むことがよい噛み方なのかを子供たちが理解し、できるようにします。
よく噛んで食べることが自己の健康や成長に影響があることを知っておくことで、3年生での学習でよく噛んで食べることの必要性を考えながら、その目的を達成するための食事の仕方に考えが及ぶようになります。3年生の子供たちのなかにも、よく噛んで食べるように促された経験があることが予想されます。しかし、給食時の子供たちの様子を見てみると、食材や給食のメニューによっては、あまり噛まずに食べていたり、食事中の会話が弾み、時間が迫ってくると急いで口の中に入れ、牛乳や汁物で流し込んだりする姿があります。よく噛んで食べることで、自己の健康への影響だけでなく、よく噛んで食べるための食事の仕方についても確認します。
食に関する指導に当たっては、栄養教諭や学校栄養職員の専門性を生かしつつ、養護教諭などの協力を得て指導に当たることも必要です。本題材のように、よく噛んで食べることの指導では、よく噛むことが私たちの体にどのようなよい影響があるのかを漠然と理解している子供がいると考えられます。
そこで、栄養教諭や学校栄養職員などから専門性を生かした助言をしてもらったり、話合いを通して子供たちから出された解決方法を価値付けてもらったりして、子供たちが自分に合ったより具体的な目標を意思決定するなど、実践への意欲を高められるようにしましょう。
本題材では、よく噛んで食べることの大切さを理解するとともに、自己の食事の仕方を改善していこうとする実践的な態度を育んでいくことをねらいとしています。
学級での話合いを生かして、自分に合った目標を意思決定できるようにしましょう。
学級活動(2)の一連の学習過程について
事前の指導、本時の指導、事後の指導の一連の学習過程について、学習指導要領解説では、「①問題の発見・確認」、「②解決方法等の話合い」、「③解決方法の決定」、「④決めたことの実践」、「⑤振り返り」、「次の課題解決へ」と示されています。
また、意思決定に向けた本時の学習については、「つかむ」「さぐる」「見つける」「決める」の4つの段階の学習過程を重視しています。子供たちの成長やよさを認め合ったり、話合い活動の場を設けたりすることで個々の考えや可能性を広げ、強い決意をもって実践できるようにすることが大切です。
【つかむ】……課題の把握
➡︎適応や食習慣について、本時の課題をつかみます。
【さぐる】……原因の追求
➡︎課題の原因や解決する必要性などについてさぐります。
【見つける】…解決方法の話合い
➡︎みんなでよりよい解決方法や努力することなどについて話し合います。
【決める】……個人目標の意思決定
➡︎学級で話し合ったことを生かして、自己の課題を解決するために努力すべき具体的な個人目標を決め、実行への強い意思をもちます。
事前指導
事前に普段の食事や食事の仕方についてアンケート調査を行います。ここで、題材への関心を高めるとともに、課題をつかみやすくします。
【資料1】「よくかんで食べることの大切さ」アンケート
本時の展開
つかむ
アンケートの結果から気付くことについて話し合う
アンケート結果を提示し、多くの子供たちが「よく噛んで食べている」と回答していることを共有できるようにします。また、「よく噛んで食べている」意識があったものの、実際は噛んでいる回数が少なかったり、普段から噛む意識をもって食事をしていなかったりすることに気付くことができるようにしましょう。
よく噛んで食べることは大切であると理解しているつもりでも、実際はあまり噛まずに食べている現状を実感することで、実践への意欲を高めることができます。さらに、よく噛んで食べようと思ってはいるものの、噛まずに食べていることの理由には、友達との会話に夢中になり時間がなくなって、急いで食べてしまっているなどがあることに気付けるようにすることがポイントです。
食事のときに、よく噛んで食べていると答えた人が多いね。
でも、噛む回数が少ない人やあまり噛まない人もたくさんいるね。
わたしは家の人によく噛んで食べるように言われるけど、あまり噛まずにのみ込んでしまっている気がする。
ぼくも普段あまり噛むことを意識して食べていないな。
よく噛んで食べることは大切だと聞くけれど、噛むことってどうして大切なのかな。
さぐる
これまでの自分の食習慣を振り返り、課題の原因や解決する必要性などについてさぐる。
①これまでの食に関する指導や家庭での指導を振り返り、よく噛んで食べることの必要性について話し合う
3年生までの学校生活において、学級活動を通した食に関する指導、よく噛んで食べることの必要性について聞いたことや学んだことを振り返るようにします。
お米をよく噛んで食べていると、甘くなっておいしく感じるよ。
食べ物が小さくなってのどにつまらないようになるね。
唾液が出て、虫歯になりにくいって教えてもらったことがあるよ。
②栄養教諭や学校栄養職員の話から「よく噛んで食べる」ことのよさを知る
食に関する指導を行う際は、栄養教諭や学校栄養職員の協力を得て指導に当たることも必要です。より専門的な知識をもった大人が話すことで、子供たちへの説得力が増し、子供たちが課題を解決する必要感をより強く感じられるようになります。栄養教諭や学校栄養職員が常駐していない場合などには、事前に録画しておき、本時で活用することも考えられます。
③普段の食事の仕方について考え、話し合う
ここで、改めて普段の自分たちの食事の仕方について考えるようにします。これまでの食に関する指導や各家庭で言われたことのある経験を振り返ったり、栄養教諭や学校栄養職員の話を聞いたりして、思ったことを話し合います。
よく噛んで食べることは大切だと理解しているものの、実際にできていない原因をさらにさぐります。よく噛んで食べることの必要性に加え、よく噛むために食べる時間の確保や牛乳や汁物で流し込まないなどの食事の仕方も意識できるようにしましょう。
よく噛んで食べると、食べ物の栄養が体に吸収されやすくなるんだね。
よく噛むと、だ液がたくさん出て、虫歯予防になるんだね。
見つける
よく噛んで食べるためには、どのようにすればよいか考え、話し合う
具体的な個人目標の意思決定を行うために、よく噛むためにはどのようなことをしていくとよいのかを話し合います。具体的な行動をイメージすることができる手立てとなるよう、「よく噛む」「食事の仕方」など項目を提示し、整理しながら板書することがポイントです。
わたしは、家の人から一口30回噛むように言われているので、いつも30回噛むようにしています。
ぼくも、○○さんと同じで、一口30回噛むようにしたいです。今まで口いっぱいに食べ物を入れていたので、一口を小さくしたいです。
ぼくは、右側だけで噛んでいたので、左側でも噛むようにして、左右バランスよく噛んでいきたいです。
わたしは、友達との話がもり上がってしまって、最後に急いで食べてしまいます。○分までは食べる時間と決めて食べるようにします。
※「グループで話し合い、発表したものを掲示したり板書したりして終わり」にせず、学級全体で話し合い、多様な解決方法に気付いたり、課題に合った解決方法を見付けたりすることができるようにします。
※栄養教諭や学校栄養職員は、子供たちから出された解決方法のよさを認めたり、必要により付け加えたり、子供たちから出なかった方法などを知らせたりします。
決める
よく噛んで食べるために、これから頑張ることを決め、ワークシートに書く
学級で話し合ったことを生かして、よく噛んで食べるために、個人目標を意思決定し、学習カードに書きます。
学級担任と栄養教諭等は、机間指導を行い、必要に応じて助言を行うようにします。 この学習カードには、担任や保護者等のコメント欄も付けておくことで、一人一人の思いを価値付けたり、取組を応援したりすることができるようにすると効果的です。
【資料2】「よくかんで食べることの大切さ」めあてカード
※家庭の状況等により、家の人からのメッセージが難しい場合には「家の人などから」とするか、「教師から」のみにしましょう。
板書例
事後指導
振り返る
自分の決めた目標や実践方法について、振り返る
1週間程度取り組み、給食後や帰りの会で振り返りの場を設定することが考えられます。
食に関わる内容の場合、家庭での実践も大切です。学年だよりや学級だよりなどで取組を知らせて協力を得るようにしたり、子供たちが努力し、頑張っている様子を家庭に伝えたりして、連携を図ることも大切です。 振り返りカードには、教師や保護者からの励ましや称賛のメッセージを書いてもらうことで、子供たちの実践や努力を価値付けるようにするとよいでしょう。その際、子供たちの置かれている状況等に十分留意し、項目を「先生から」だけにすることも考えられます。
【引用・参考文献】
・『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説(特別活動編)』 文部科学省 東洋館出版社
・『みんなでよりよい学級・学校生活をつくる特別活動 小学校編』 文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究センター 文溪堂
・『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 小学校 特別活動』 文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究センター 東洋館出版社
構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈
監修
安部恭子
帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
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