小4特別活動 「『学校をきれいにしよう大作戦』をしよう」指導アイデア
前文部科学省視学官監修による、小4特別活動の指導アイデアです。12月は、<学級活動(1)「『学校をきれいにしよう大作戦』をしよう」>の実践例を紹介します。
これまで、学級目標の実現に向け自分たちで学級活動を計画し、実践する楽しさや充実感を実感してきた子供たち。2学期のまとめとなる12月は、「学級みんなで楽しむ・学級生活をよりよくする」という意識とともに、高学年を意識し学校全体を視野に入れた活動にも目が向いてくる頃です。これまでの活動や自分たちの成長を受け、高学年に向けたチャレンジとなるような一歩を力強く踏み出す自発的な活動として、学級活動(1)の実践を紹介します。
執筆/青森県公立小学校教諭・滝本由佳
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
青森県公立小学校校長・河村雅庸
目次
年間執筆計画
4月 学級活動(3) ア 4年生になって
5月 学級活動(1) 係を決めよう
6月 学級活動(2) ウ 歯ぴかぴか大作戦
7月 学級活動(3) ウ 見直そう自分たちの読書
9月 学級活動(1) オリジナルチャレンジ集会をしよう
10月 学級活動(1) 4年生仲良し集会をしよう
11月 学級活動(2) エ よりよい給食のマナー
12月 学級活動(1) 『学校をきれいにしよう大作戦』をしよう
1月 学級活動(1) 2年生と笑顔いっぱい集会をしよう
2月 学級活動(3) ア 10歳の節目
3月 学級活動(1) 4年生がんばったね集会をしよう
これまでの活動について
学級目標の振り返り
写真は、「上学年として頑張りたい」「みんなが活躍できるクラスにしよう」という子供たちの思いを受けて決まった学級の目標「チャレンジ! 一人一人が活やくする4の3!!」です。
年度当初、子供たちと話し合って、「学級目標の実現のために「『4の3 〇〇作戦!』で進めていこう!」ということになり、1学期には「スポーツ作戦!」について話し合い、実践を行いました。
そして1年の折り返しとなる9月に、学級の様子について、子供たちがどのように感じているのかのアンケート調査を行いました。その後、アンケート調査の結果を受けて、今後の学級会の議題としてどんなことが提案できるのか、みんなで考えてみました。
① アンケートの様子
【アンケート例】
【アンケート集計結果】
② アンケート集計結果を受けた、学級での話合い(9月)
この前みなさんにとった学級目標に関するアンケート結果です。
集計結果から、どんなことが分かりますか?
チャレンジすることについては、半数以上の人が取り組めているね。
一人一人が活躍するということは、もう少しだと思っている人が多いね。私もこれから頑張ろう。
もっとみんなでどんな活動に取り組んだら、学級目標のような学級生活に近付いていけるのかを考えてみましょう。
どんなチャレンジができるかな。何かめあてをもって新しいことにみんなで挑戦したいな。
何かにチャレンジして、それができたらビンゴになるというチャレンジビンゴはどうかな。一人一人が楽しく挑戦できると思うな。
私は一人一人がチャレンジして頑張ったことをみんなで振り返れば、活躍にもつながると思います。
いいね。
5年生になるのが近付いてきたよね。今の5年生のように学校のために何かしたいな。学校をきれいにするのはどうかな。
そうだね。学校のためになることをみんなで話し合って、活動したいね。
秋になったら、みんなで落ち葉拾いをしたらどうかな。
だったら2学期の終わりに近付く12月に、年末に向けてそうじをするのはどうかな。きれいな学校だと、みんなが気持ちよく過ごせると思うんだ。
※今までの「仲良く」や「楽しく」を意識した活動から「上学年だから」「学校のために」と視野が広がり始めた場が捉えられ、高学年への心の準備の高まりが感じられました。
チャレンジビンゴだったら、学級目標の実現に向けてみんなでチャレンジしたいことを決めて取り組むことができそうだね。
みんなで一緒に頑張りたいね。
大そうじ作戦は、みんなで一緒にめあてに向かって頑張れそうだからいいんじゃない?
いいね!!
こうして、取り組むこととして「チャレンジビンゴ作戦」、みんなで取り組むこととして「大そうじ大作戦」を行うことになりました。
「4の3 チャレンジビンゴ作戦」の実践
チャレンジしたいことやまだできていないことなどから自分がチャレンジしたいことを決め、ビンゴカードに書きます。チャレンジしたら水色シール、達成できたら金シールを貼ります。教師は、一人一人の活躍と挑戦だけではなく、互いに励まし合ったり、よさや頑張りを認め合ったりすることで学級目標に示した学級生活に近付いていくことができることを伝え、取組の様子を励ましていきました。
「4の3 チャレンジビンゴ作戦」で、友達に応援してもらってうれしかったな。また1つ学級目標に向けて、ステップアップできた気がする。
次は「学校をきれいにしよう大作戦」だ。
事前の活動
9月に行った学級目標の振り返りアンケート集計結果を受けて選定された議題「『学校をきれいにしよう大作戦』をしよう」を学級全員で再度確認し、計画委員会で学級会の準備をしていきます。
計画委員会は、話合いに必要な一連の活動計画を立てて運営するための組織です。
学級会を効果的、効率的に進めていくためには、計画委員会を輪番制で行い、話合いに向けた準備や司会、記録等の役割を分担して、学級みんなが学級会の計画や運営を経験できるようにするといった工夫が必要です。
一般的には、司会と黒板記録、ノート記録の役割を担当する子供を「司会グループ」、それに提案者と教師を加えて「計画委員会」を組織します。
学級会の準備
①活動計画を作る
●役割分担する
●提案理由を深める
(提案者の思いを共有し、生かすようにする。学級目標を踏まえる)
●日時、場所、時間などを話し合い、「決まっていること」として明確にする。
●話し合う内容を決める。
(1 掃除場所をどこにするか、2 よりよい作戦となるための工夫について)
②学級会カードの作成
計画委員会で確認した「議題・提案理由・決まっていること・話し合うこと」を学級会カードに記入していきます。
③朝や帰りの会で学級全員へ伝える
学級会カードを配り、事前に意見を書いてもらいました。学級の子供一人一人が学校のみんなのために働く内容を考えてもらいます。
議題や提案理由は司会グループから伝えて共通理解をしておき、意見を記入した学級会カードを集めておくことで、事前に学級のみんなが考えていることを把握することができます。
※紙での学級会カード記入以外に、ICT端末を活用することもできます。
端末内に、学級会コーナーを作成し、そのページに各児童が直接打ち込むことで意見の整理がしやすくなり、時間短縮をすることにつながります。
「さあ、学級会当日に向けて!」
学級会カードをもとに、学級みんなの意見を計画委員会で整理をして、短冊を作成しました。
出されている意見が多い場合など、必要に応じて意見を集約するようにします。
そして、当日の進行について、打ち合わせていきます。誰が、どの場面で、どのように話したらいいか、どのような意見が出そうかなど、意見をまとめるために気を付けることについて確認していきました。
事前に書いた短冊を提示しておき、子供たちが目を通しておくようにすることで、自分が出した意見とほかの友達の意見を比べて考えることができます。どの子供も自分の考えをもって話合いに臨むことができるだけでなく、「出し合う」にあまり時間をかけず、「くらべ合う」に時間をかけて意欲的に話し合うことにもつながります。今回は、事前に計画委員会で学級会ノートに書かれた意見をまとめて、短冊に書いて提示しておきました。また、質問があった場合は帰りの会などで確認し合って事前に共通理解を図り、本時は「くらべ合う」段階から行うことにしました。
本時の活動
●本時のねらい
上学年として学級だけではなく学校のために働く「学校をきれいにしよう大作戦」の内容と工夫について話し合い、決めることができる。
●議題
「『学校をきれいにしよう大作戦』をしよう」
●提案理由
1学期には上学年になって新しい気持ちで、みんなで頑張ろうと思える会としてスポーツ作戦について話し合い、みんなでスポーツを楽しむことができました。また、2学期には学級目標を振り返り、新しいことにチャレンジするチャレンジビンゴで、一人一人が成長することもできました。今度は、上学年として学級だけではなく学校のみんなのために働き、みんなで一緒に頑張ることで、みんなが活やくできて、もっと学級のみんなの仲が深まるようにしたいと考え、提案しました。
●決まっていること
・「4の3 そうじウィーク」として1週間(5日間)行う。
・昼休みの時間に、グループで日ごとに違う場所を掃除する。
・場所は5つ。
●話合いのめあて
学校のみんなのためになる掃除の場所と工夫を考えよう。
話し合うこと① 学校のみんなのためになる、掃除場所を決める
【出し合う】
(司会)では、「学校をきれいにしよう大作戦」で、どんな場所を掃除していけば、学校のみんなのためになると思うのか、出された意見を確認していきます。
※事前アンケートをもとに計画委員会で検討・集約した掃除場所の短冊を黒板に張り出します。
【板書】学級会スタート時の様子
(司会)出されている意見のほかに、新しい意見はありますか?
ぼくはC棟の入り口と階段がいいと思います。C棟の入り口と階段は外から落ち葉やごみが吹き込みやすいみたいでよく落ちているし、上がったり下がったりしながら掃除をしなければいけないから、下の学年には難しいと思うからです。
事前に準備した短冊を掲示して、確認してから新しい意見を付け加えることで、「出し合う」に時間をかけずに、「くらべ合う」に時間をかけてしっかり話し合うことができます。
新しく出た意見は、その意見が提案理由に合っている場合はその場で短冊に書き、付け足して提示していきます。なぜその場所を掃除する必要があるのかという理由が大切なので、司会役の子供には、理由がない発言の場合は理由について聞くように、事前に指導しておきましょう。
【くらべ合う】
(司会)それでは掃除場所については、これらの場所の中から決めていきます。
次に、より「上学年らしく」「学校のためになる」を考えてどの場所を掃除したらよいかについて意見を言ってください。
ぼくは、渡り廊下が汚れているから、掃除したらいいと思います。給食の運搬でこぼしてしまうことが多いのか、よく汚れていて、いつも気になっていました。
そうだね。下学年には、食缶が重いのだろうね。運ぶのに精いっぱいだから、こぼすことも多いと思うから、ぼくも掃除してきれいにしたほうがいいと思います。
私は、ほかの学年の子が教室に入ったときに「この教室はきれいだな」と思ってほしいから、まずは自分たちの教室を掃除したらいいと思います。
私は、校庭がいいと思います。まだ落ち葉が落ちているし、広いから担当する学級の人たちは掃除が大変そうだからです。
(司会)校庭は広いので、特にどの辺りですか?
校舎の周りです。風で飛んできたごみが多くたまっているのを見たことがあるからです。
私は、特別教室の1階多目的ホールや2階多目的ホールもいいと思います。多くの学年が使う場所なので、きれいにしておけば、使う人みんなが気持ちよく使えると思うからです。
提案理由を見てみましょう。学校のために、上学年としてみんなで一緒に「学校をきれいにすることができる作戦」です。学校のみんなにとって、きれいになるとうれしい場所を考えましょう。
ぼくは玄関の掃除もやったらいいと思います。学校に来たお客様を出迎える場所をきれいにすることが、学校のためになると思うからです。
それは、玄関を掃除する、ということですか?
はい。
私も玄関掃除に賛成です。「きれいな学校だね」と言ってもらえるように、学校の顔となる玄関を掃除したら、来た人も私たちもすっきりすると思います。
付け足しです。外から学校に入る玄関出入り口と、入ってからの下足箱周辺とで分けて、しっかりと掃除するのはどうですか?
私は、玄関を掃除するのに賛成です。「学校をきれいにしよう大作戦」らしくていいと思います。外からも中に入ってからも、きれいだと朝から全校みんなが気持ちいいと思います。
(司会)では、「玄関を掃除する」に決めてもいいですか?
いいです!
(司会)下足箱周辺は、いつもの掃除でこれからもしっかりやっていきましょう。自分たちの教室という意見に賛成が少ないようです。どうですか?
私は、提案理由にあるように、「上学年として学校のみんなのためになること」が大切だから、みんなが使う特別教室がいいと思います。
ぼくも、学校のためになる場所と考えれば、自分たちの教室ではなくて、特別教室や校庭が、いろいろな学年の人が使うから、きれいにしたほうがいいと思います。
私も、せっかく「4の3 そうじウィーク」で学校のみんなのために掃除に取り組むから、学校全体を見て掃除場所を考えていったらいいと思います。
(司会)では、今回は教室以外の場所を掃除することにしていきましょう。
ぼくは、年末だし、みんなが日中過ごすことが多い学校の中の掃除に力を入れたいです。
賛成です。特別教室は毎日多くの学年が使う場所だから、学校のためになります。
私も普段できない場所を掃除すると大掃除になると思います。
私は、廊下のかべと床のすきまにほこりがたまっているのを見たので、そういう日頃はやらないところをやるといいと思います。
ぼくは壁みがきとか床みがきもできそうだと思います。クレンザーを使ったら、水ぶきでは落としきれない汚れもとれるからです。
特別教室では、隅のほうやカーテンの後ろにほこりが多いです。「そうじウィーク」の5日間で、いろいろな特別教室を順番に回って掃除していくといいかもしれません。
私も○○さんの意見の特別教室を掃除するに賛成です。特別教室を使うたくさんの学年の人に喜んでもらえそうだからです。
※「上学年として」の視点で見つめ直すことで、意見をブラッシュアップして考え直すことができ、活動イメージを共有することができました。
このように、「上学年として」や「学校のため」「年末の時期」ということに注目しながら場所を決めていきました。
話し合うこと② よりよい活動にする工夫
(司会)「学校をきれいにしよう大作戦」がよりよい活動になるようにする工夫を考えたいと思います。どんな工夫をすれば、みんなの気持ちが1つになって、よりよい活動になるかを話し合いましょう。
ぼくは、みんなで「かけ声」をかけてから、そうじ大作戦を始めると気持ちが1つになると思います。
私も賛成です。みんなでやっている感じがします。
〇〇さんの意見に似ているんだけど、私はチームで「かけ声」をつくるといいと思います。
「おそうじ隊」というネームプレートを作って、それを付けて掃除したら楽しくできると思います。
ぼくもネームプレートに賛成です。それなら全校にもアピールすることができて、いいと思います。
終わった後にポスターにまとめて、呼びかけるのもいいと思います。
どんな掃除をしたか、どんなごみがどのくらいあったのか、どんな気持ちになったのか、もポスターにのせたらいいと思います。
ビンゴみたいにしたら、楽しく取り組めると思います。
学級全体としての取組になるように、掃除場所が違ってもみんなで共通でできることについて、意見をまとめていきます。学校全体が、掃除への意識が高まるように上学年として考えられる取組にも挑戦させていくといいでしょう。
話し合うこと③ 分担をする
決まったものの中から、自分が掃除する場所を決めていきます。人数に大きな偏りが出るときは、声をかけて調整するようにしました。学校のみんなのことを考えたり互いの気持ちを尊重したりしながら活動に取り組んでいくことで、高学年への意識が育っていきます。
事後の活動
①「学校をきれいにしよう大作戦」の実践
実践に取り組む期間を、「4の3 そうじウィーク」とみんなで名前を付けました。同時刻での活動内容になるため、校庭での活動では技能主事の協力のもと、ごみを拾ったり落ち葉を集めたりしました。
●廊下や階段の床の汚れ落とし、特別教室のストーブの後ろ、トイレの隅々など、普段の掃除ができていないと子供が感じているところを大掃除しました。
【校舎の周り】
【廊下】
②実践後の振り返り
活動後には、学級目標を意識した新たなチャレンジとして頑張れたことや、一人一人が活躍できたと思うことについて振り返りをしました。そして、子供たちの達成感をより高めるよう、みんなで一緒に同じ時間に、自分たちが考えた「学校のみんなのためになること」を実践できたことにより、高学年に向けた気持ちが高まったことを価値付け、励ましました。
また、学習者用タブレットを活用し、【学級のあゆみ】として写真や振り返りカード、子供からのコメントを集めて掲示するのもいいでしょう。活動を共有することで、互いを認め合い、次への意欲につながります。
また、学級だよりや授業参観・懇談会などで子供たちの頑張りや成長についてお知らせするとよいでしょう。
構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈
監修
安部恭子
帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
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著/安部恭子 著/平野 修 著/清水弘美
ISBN9784098402106