子供たちといっしょに読みたい 今月の本#8 日本の伝統文化を知る本
連載8回目のテーマは、「日本の伝統文化を知る本」を紹介します。知っているようで知らない世界が広がる日本の伝統文化、伝統工芸です。グローバルな今の時代こそ、自分たちの日本の文化を知ることが大切ではないでしょうか。日本の伝統文化に興味をもつきっかけになるような本を紹介します。子供たちの1人読み、先生が読む、読み聞かせなど学級の実態に合わせてください。
監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり
目次
絵本図鑑
低学年も入りやすい絵本形式の本は、内容とともに絵も見どころです。
『日本の伝統文様をさがそう3 身近なものから調べる文様』
文・絵/熊谷博人
大月書店刊
江戸時代に花開き、現在に息づく伝統文様を紹介するシリーズ(全4巻)の第3巻。登下校の歩道、学校の教室や図書室、商店街など、身近な場所で見られる幾何学文様などを取り上げています。
松岡司書のおすすめポイント
「文様」というとふだん接することが少ないというイメージですが、身近な場所に根付いていることがよく分かります。身近にあるものと伝統とを組み合わせた視点が面白いと思います。文様や色に子供たちも楽しく接することができるでしょう。
『英語で日本を紹介しよう① 日本の学校と生活』
監修/居村啓子
ポプラ社刊
外国の人にやさしい英語で日本を紹介できる5巻シリーズの第1巻。外国の人と接することが増えてきた今、外国のことを教えてもらい、「日本のことも伝えたい」、そんな子供たちの願いをかなえるために、外国との違いにも触れながら、日本の子供たちの学校と家庭での生活を簡単な英語で紹介します。
松岡司書のおすすめポイント
国際交流の機会が多くなった子供たちが英語で日本のことを紹介するときに役立ちます。日本の文化などは、日本人自身があまり知らないことがあるので、日本のことを知りながら、簡単な英語の表現も分かります。
『すもうのずかん』
絵/オゼキイサム 監修/藤井康生
Gakken刊
日本の国技「相撲」の基本が分かる相撲ずかん! 本場所の1日、まわしの締め方、格付、相撲のルールやマナー、行司・呼出・床山といった大相撲を支える人たちについてなど、大人も知らない相撲の知識がかわいいイラストとともに満載。
松岡司書のおすすめポイント
伝統的なスポーツを知るよいきっかけになると思います。相撲をやったことのある子も詳しいルールなどを知らないことがあるので、ルールやマナーなどを知るきっかけになるでしょう。かわいいイラストがたくさん掲載されていて、情報量が多いので、楽しみながら相撲の知りたいことが分かります。
写真絵本
写真を見ながら、伝統工芸のことがよく分かります。いろいろなものがつながっていく世界を楽しんでください。
『和ろうそくは、つなぐ』
文・写真/大西暢夫
アリス館刊
和ろうそくができるまでをたどっていく写真絵本。職人の仕事や材料は次から次へとつながり、捨てるものがありません。そして、季節に沿っているのです。
松岡司書のおすすめポイント
「和ろうそく」という工芸品を子供は知らないかもしれません。その和ろうそくができる過程で出てくる様々な材料を探っていく視点が面白いと思います。搾りかすや芯がどうつながっていくのか。藍染めや和紙などの産地も登場します。日本の伝統工芸品は物がむだなく全部生かされていることがよく分かります。
読み物
高学年向きの読み物です。伝統技術にチャレンジしている姿や伝統工芸がつなぐ出合いに、子供たちの世界が広がります。
『天の蚕が夢をつむぐ 大島紬ものがたり』
著・文/谷本雄治
フレーベル館刊
日本が世界に誇る大島紬は、世界遺産登録された鹿児島県・奄美大島の伝統的な織物。奄美大島で大島紬の織元をしている南修郎さんは、還暦を機に、「100%奄美産の大島紬」の着物をつくることにチャレンジします。「伝統」と「革新」をテーマにしたドキュメンタリー。
松岡司書のおすすめポイント
大島紬はもともと分業でつくられていた織物で、それらを全部自分で手をかけてつくるという情熱が伝わってきます。着物は着る機会が減っていますが、この本をきっかけに着物を身近に感じることができるでしょう。小学4年生の国語で伝統工芸のことを学習しますので、そのときにもすすめたい内容です。
『ぼくたちはまだ出逢っていない』
作/八束澄子
ポプラ社刊
いじめに悩む陸と、自分には居場所がないと感じる美雨。いつものようにさまよい歩いていたとき、ショーウインドウに飾られた器が一瞬きらめくのを見た美雨は、その美しさに心を奪われます。それぞれに自分のアイデンティティを探してたどり着く「漆」がつなぐ新たな世界とは……。
松岡司書のおすすめポイント
物語はフィクションですが、京都で実際の日本の伝統工芸品に出合うというところが現実味を帯びていて面白いと思います。伝統工芸の「金継ぎ」に注目してもよいでしょう。また、主人公たちと同じ感覚で、「1歩踏み出したら世界が広がる」ことを感じてほしいですね。
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松岡みどり司書からのメッセージ
日本の伝統工芸、伝統文化はとてもジャンルが広く、知らないことやものが多い印象があります。ものづくりやその背景を知ることで、興味・関心がわくきっかけになると思います。子供たちにも伝統工芸や伝統文化の世界があることを伝えてみてください。ここでご紹介した本は、著者が「これってどうなのだろう?」と興味・関心があって突き進んでいる思いがそれぞれの本から伝わってきますので、子供たちが伝統工芸や伝統文化について調べるときのエネルギーにつなげてみてください。
読書や本の情報が満載
ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/
取材・文・構成・撮影/浅原孝子
授業で使える312冊の絵本を紹介
著/齊藤和貴(京都女子大学教授)
司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよく分かります。
B5判/112頁
ISBN9784098402212
〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)
京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。