【相談募集中】いじめや暴言、授業妨害で教室内の安心、安全が守られていない状況です
いじめや暴言、授業妨害が蔓延し、教室内の安心、安全が守られていないことに困っている先生からの相談が、「みん教相談室」に届きました。ここでは、元山形県公立学校教頭の山田隆弘先生からのアドバイスをお届けします。
目次
Q.いじめや暴言、授業妨害で教室内の安心、安全が守られていない状況です。立て直そうとしてきたけれどことごとく失敗に終わり、1年の半分が過ぎてしまいました
クラスの中でいじめや授業妨害、担任や仲間への暴言があり、教室での安心、安全が守られていない状況です。
1学期は2人の男児(A,B)が不適応な行動を起こしていたのですが、2学期になり、つられる児童が増えつつあります。管理職とも相談の上、教科を限定してAとBの取り出し授業を行おうとしたのですが、その保護者から「取り出しは差別だ」と言われ、取り出すことができなくなりました。また、「うちの子が言うことを聞かないのは、先生を信用していないからだ」とも言われました。2人は「親に言えば先生を黙らせることができる」という考えになり、その後さらに担任への暴言や仲間へのいじめが増えていきました。
いじめを受けた2人の児童(C,D)は、現在教室に入ることができずに別室登校しています。運動会にも参加できませんでした。CとDの保護者は、いじめをしたAとBが教室にいてうちの子が教室に入れないという理不尽な状況が許せないという思いをもっており、担任として非常に心が痛いです。AとBは、CとDが教室に入れないことに対して「弱虫だ」「出てきたらぼこぼこにしてやる」とみんなに聞こえる声で言うことで、周りの子がCとD側に付けないようにしています。
また、「先生は差別しているよな」「先生の言うことなんか聞くなよ」「先生が嫌いな人は手を挙げて」などと言って、周りの子を支配しようとしています。
正直、AとBの暴言やしぐさに恐怖を感じることがあります。そのひるみが、いじめと授業妨害を増長させたのではと責任を感じています。AとBは、自分が好きな男の先生や圧倒的に怖い先生には反抗しません。反抗するのは私を含めた気に入らない先生や女性の先生に限定しています。
まずはCとDの安心、安全が守られること、そして日々の授業が通常に行われるようになること、それを願って日々策を考えています。これまでの経験を生かして立て直そうとしてきましたが、自分が打ってきた手がことごとく失敗に終わり、1年の半分が過ぎてしまいました。
長文になってすみません。どうか、ご回答をよろしくお願いします。
(ペンギン先生・50代女性)
A.多角的な視点からの検討と、学校全体での取組と関係各機関との連携が不可欠です。具体的な対応策を考えていきましょう
大変難しい状況におかれているのですね。このような経験は多くの教員が直面する課題であり、わたしも同じような経験がありますので、あなたの心労はよく理解できます。まず、ご自身が恐怖を感じていること、そしてこれまでのご尽力が実を結ばずに苦々しい思いをされていることに関して心が痛みます。
この状況を打開するためには、多角的な視点からの検討と、学校全体での取組と関係各機関との連携が不可欠です。いくつかの視点と具体的な対応策を考えていきましょう。
1 現状の整理と分析
まず、いじめの状況を正確に把握する必要があります。いじめの種類、頻度、場所、加害者・被害者を特定することです。そして、状況の悪化の度合いなどを具体的に記録していきます。A,B,C,Dの各児童の家庭環境、学校での様子、過去のトラブルなど、関連する情報をできうる限り収集していくことが大切です。
2 当面の対応策
①安全確保
児童の安全確保として、C,Dが別室登校をしなければならないことは現段階ではやむを得ません。まず、学校の人的リソースを充てて学習支援や心のケアを提供します。さらに、保護者との連携を強化し、定期的に面談を行って状況を共有し、対応策を練り直します。可能であればスクールカウンセラーなどの専門家の意見を聞き、個別の支援計画を作成することが有効です。
②加害児童への対応
加害児童への適切な対応が最重要です。保護者へ状況を伝え、家庭での指導を依頼します。なかなか応じてくれない場合やうまく進まないことが予想されますが、あきらめずにコミュニケーションを続けることが大切です。学校では、A,Bの行動の背景にある原因を探り、具体的な指導を行います。できれば専門家による行動療法や思考パターンを変える指導を取り入れ、アンガーマネジメントを通じて感情のコントロールを学ばせることも必要です。
また、集団で行動することで不適切な行動がエスカレートすることが多いため、問題児童はできるだけ離して生活させ、一人ひとりに向き合っていくことが求められます。
こういった事案の場合、家庭内の問題やトラブルが影響している場合もあるため、必要に応じて行政の福祉担当者や児童相談所などに相談し、専門的な支援を依頼することが有効です。
③強い教職員間の連携
定期的な会議を行い、情報共有と連携を深めます。具体的には、ホワイトボードなどを使って実態や対策、担当者などをまとめ、明確にします。管理職には、定期的に状況を報告し、支援を求めることが重要です。特に、保護者との関係を円滑に進めるためには、管理職と密に連携し、積極的に協力を仰ぐことが大切です。
3 長期的な視点での対応
学校全体でいじめ防止に関する規程を見直していきます。さらには、全教職員へのいじめ防止や対応に関わる研修を実施し、スキルアップを図ります。また、保護者への啓発活動を強化し、場合によっては、管理職を交えた保護者会を開催することも有効です。さらに、当該学級や学年に対して、フリー参観の機会を提供したり、PTA役員への協力依頼をしたりすることも効果的です。
4 担任ご自身の心のケア
日常的に同僚に相談し、共感を得たり、アドバイスを求めたりすることは心の負担を軽減します。また、教職員向けの相談窓口を活用し、専門家のアドバイスを受けることも有効です。そして何より、リフレッシュの時間を確保することが大切です。いろいろなことを忘れる趣味や運動を通して気分転換を図り、心のリセットを心がけてください。
いじめ問題への対応は一時的な感情的反応ではなく、長期的に、客観的な視点を持って冷静に対処することが必要です。教職員は、自らが感情労働を行っていることを自覚し、自身の感情をコントロールしながら対応することが求められます。いじめの問題は簡単に解決するものではないため、根気強く取り組む姿勢が必要です。また、周囲の人々と協力しながら進めることが重要であり、自身の心のケアも忘れずに行うことも大切です。
いじめや暴言については、様々な意見があると思いますが、重要なのは、これらを重い罪として認識することです。この認識を社会全体で共有することが必要です。いじめの問題は学校だけでなく、保護者の責任も大きいと考えます。家庭での教育やコミュニケーションも、児童の行動に大きな影響を与えるからです。
この問題に対処するためには、強力な対応策が求められます。教育関係者だけでなく、社会全体が協力し合い、いじめや暴言を根絶するための取組を進めることが重要です。私たち一人ひとりが意識を持ち、行動することで、よりよい社会を築いていけると信じています。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。