【相談募集中】反発してくる児童で学級が乱れ、かなり悩んでいます
教師歴12年目の相談者から「みん教相談室」に相談が寄せられました。反発をしてくる児童によって学級が乱れてしまい、立て直しに悩んでいるそうです。これに回答したのはフリーランスティーチャー・田中光夫先生。その内容をこちらでシェアします。
目次
Q. 反発してくる児童によって学級が乱れてしまいました
なかなか言うことを聞かず、常に反発してくる児童がいます。教員経験12年を過ぎてきたなかで、学級が乱れていることにかなり悩んでいます。 かなり精神的にはきてますが、一緒に組んでいる若手のためにも休むわけにはいきません。管理職にも学級経営相談していて、状況は把握していただいていますが、人手が足りません。
(アルト・30代男性・小6担任)
A.子どもを変えるのではなく、ご自身を変えることにシフトしてみませんか
私は現在、教員生活23年目です。そんな私でも、今もアルトさんと同じような悩みを抱えています。今までも教員人生を振り返ると、「うまくいっているなぁ」と感じていたときほど、実はどこかでくすぶっている火種をスルーしてしまっていて、その後非常に苦労したのを思い出します。シェイクスピアの言葉に「慢心は最大の敵」というのがありますが、アルトさんのように「今、こんなことに悩んでいます」と素直に相談できること自体、とても素晴らしいことだと思います。
私も30代の頃、指示に従わず傍若無人に振る舞う子に振り回され、学級の運営がうまくいかないことに悩んだ時期がありました。そのときに相談した尊敬する先輩から
「学級経営がうまくいくなんてのは不思議なこと、めったにないことなんじゃない? だって、毎年構成するメンバーも違うし、担当する学年によって発達段階も異なるでしょ。子どもとの相性もある。私も長年担任教師やってるけど、うまくいった年の方が少ないんじゃないかな。田中さんの『うまくやろう』『いいクラスを作ろう』と肩に力が入っている姿をよく見るけれど、たかだか10年ちょっと経験したぐらいで満足いく成果が出せるような仕事じゃないんだからさ、『うまくやってやろうなんておこがましい!』って思うよ。」
と指摘されたのを今でも思い出します。私が、当時難しさを感じていたのは、思春期を迎えた女子との関わり方でした。まだ子どもたちとの年齢も近く、親近感をもって接していけば子どもたちも同様に接してくれるのではと思っていました。しかし、それは私の思い込みで、子どもたちからすると私は「細かいことをいちいち指摘するおじさん教師」だったのです。
30代の頃を振り返ると、高学年に向けて「規律」「しつけ」にうるさい教師だったのだと思います。私に反発する子に何らかの原因があると考え、今までにその子を担任してきた歴代の担任に話を聞いて回りました。すると「とても厳しい父親」の存在がわかりました。家庭で毎日厳しく父親から接せられ、学校で私にも同様の関わりをされたら、それは反発するしかなかったはずです。「あの子に原因があるのではなく、私の側に原因があったのだ」と気づき、関わり方を変えました。無理に積極的に関わろうとせず「口を出さない」「見守る」「目をつぶる」を意識するうち、「なんかタナセン変わった?」と向こうから声をかけてくれるようになりました。
心の距離を縮めるには関わる機会の「頻度」がものをいうと考えます。小さい関わりの機会をたくさん設けることが、時間はかかりますが子どもとの距離を縮めるための秘訣かなと思います。「あいさつを毎日意識して重ねる」「ノートにちょっとしたコメントをつける」程度でも、積み重ねるうちに変わってくるはずです。
私は常日頃、子どもを子ども扱いせず、「小さいだけで大人と同じ」と思って関わるよう心がけています。「うるせぇ、死ね!」「うざいんだよ」と子どもから言われて、「そんなこと言っちゃだめでしょ!」とその場で返すのは、同じ土俵・リングに上がるのと一緒です。暴言を吐かれたり反発されたりしたら、余計な一言を付け加えたりせず「とても落ち込んでいる様子、雰囲気」を演じます。
子どもは「大きなお世話」をされるのをとても嫌がります。自分でできていないことを他者から指摘されると、素直に受け止められずに「反発」として表現しがちです。
「宿題やったの?」→「今やろうと思ってたんだよ!」
「スマホいじるのもうやめなさい!」→「今やめようと思ってたんだよ!」
というシーン、よく見られますよね。「あなたのためを思って」の一言が子どもにとっては重たい場合も。なので、すぐに反応せず、その場では冷静に過ごし、少し時間を空けて「あのとき私はこう感じたよ」「あなたはどう感じていたのかな」と落ち着いた雰囲気の中で対応するようにしています。「即対応」が良いこともあります。あくまでケースバイケースです。「この方法でうまくいく!」という答えは提示できませんが、まずは「大人の側が深呼吸して、落ち着いた対応を」というのを常に心がけてみてはいかがでしょうか。
多くの教師は、様々なアプローチを取り入れては、あの手この手を使って「子どもを変えよう」とします。しかし、大人でさえそう簡単に変わらないのに「子どもなら変えられる」というのはまったくもって安易な思い込みです。結局、変えられる、コントロールできるのは「自分自身」しかないのだと思います。自分という原因が変われば、おのずと未来の結果も変わるはずです。その一つひとつの積み重ねで、学級はより良い方向に向かうと自分に言い聞かせてきました。
「自分自身を変える」というのはとても難しいチャレンジです。人なんてそう簡単には変わらないものという前提で、私自身の体験から話しますが、
①変わろうとしている人に近づく
②自身の概念を崩してくれる本に出合う
この2つを常に意識しながら生活するなかで「気づき」が得られれば、自分自身を変えることができると考えます。
①変わろうとしている人に近づく
私は運よく職場の同僚に恵まれ、「この先生のようになりたい!」「この先生の実践から学びたい!」と、頻繁に授業を参観させてもらい、自分の学級に取り入れることができました。学外の力ある実践家教師の学級にもよく足を運びました。その時代その時代の子どもたちの実態に合った実践を研究・開発している先生がたにとても多くの影響を受けてきました。今では、自分が先輩の側として手本となれるよう、積極的に授業公開を行うなど努めています。自分を変えるには、変わろうとしている人に近づくのがよいです。
②自身の概念を崩してくれる本に出合う
「十年ひと昔」といいますが、おそらく今はもっと早いスピードで社会は変化しています。自分が「これってこういうことだよね」と考えていたことが、すでに古い考え方になっていることもしばしばです。ですから、新しい考え方に前のめりで触れようとする姿勢が大切と考えます。その方法の一つが読書です。
自分の中にある「これってこういうことだよね」という概念を崩してくれる本や著者に出合うことは、自分を変化させるうえでとても貴重な機会です。「でも、どの本を読んだらいいか分からない」というのも正直なところです。そういうときは、身近にいる尊敬できる人に「最近どんな本を読みましたか?」と聞いて回っています。
私の概念を崩してくれた本を紹介します。
・教室マルトリートメント(川上康則著)
・学校に行けない「からだ」(諸富祥彦著)
この2冊に出合い、「あぁ、自分の子ども理解の程度はなんと低いものだったのか」と気づかされました。ぜひ手に取ってみてください。
今回の相談を受け、アルトさんはすでに「変わろうとしているのだ」と感じます。一人で悩まず、同僚の先輩や後輩、同期の仲間、学校外の先生にと、遠慮なく相談したり頼ったりを続けてください。数年後に振り返ったとき、「あのとき相談できたから、今の自分がいるのだ」と、成長を実感できるはずです。応援しています。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。