個別最適な学びと協働的な学び、授業に取り入れていますか? ~シリーズ「実践教育法規」~

連載
シリーズ「実践教育法規」

田中博之

教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第22回は「個別最適な学びと協働的な学び」について。近年、教育現場ではスタンダードとなっている「個別最適な学び」と「協働的な学び」。これらを実践するために、教員ができることを今一度見ていきます。

執筆/小野 まどか(植草学園大学発達教育学部講師)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#22

個別最適な学びと個に応じた指導

「個別最適な学び」と「協働的な学び」というキーワードは、2021年1月26日中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」(以下、答申)にて、今後実現すべき学びとして示されました。これら2つの学びが提言された背景には、新型コロナウイルスの国内感染拡大を要因として新しい生活様式や休校措置が求められ、それに伴う教育の在り方や子どもたちの学びに対する危機感が指摘されたことにあります。

この反省のもと示されたのが「子供がICTも活用しながら自ら学習を調整しながら学んでいくことができる」ようにしていくことであり、そのためには「個別最適な学び」の実現が必要であると提言しています。

それでは、「個別最適な学び」とはどのような学びを指すのでしょうか。従来より、「個に応じた指導」の必要性は指摘されてきたところですが、今回の答申において、「個別最適な学び」と「個に応じた指導」を次のように整理しています。すなわち、教師視点から整理した概念が「個に応じた指導」であり、「個に応じた指導」を学習者視点から整理した概念が「個別最適な学び」であることが示されています。

「個別最適な学び」と「協働的な学び」のイメージ図

また答申では「個に応じた指導」は「指導の個別化」と「学習の個性化」から成ることが示されています。まず、「指導の個別化」は、「教師が支援の必要な子供により重点的な指導を行うことなどで効果的な指導を実現することや、子供一人一人の特性や学習進度、学習到達度等に応じ、指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行うことなど」が示されています。つまり、集団に対して行う一斉指導とは異なり、個別に指導を行ったり、個別に指導方法を変えたりすることで、一人一人に効果的な指導を行うことが求められています。一方、「学習の個性化」は、「教師が子供一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することで、子供自身が学習が最適となるよう調整する」ことが示されています。つまり、一律に学級の子ども全員が同じ学習課題に取り組むのではなく、一人一人の興味・関心に応じてそれぞれが異なる学習課題に取り組むことができるように工夫することが求められています。以上の「指導の個別化」と「学習の個性化」を教師視点から整理した概念が「個に応じた指導」であるとされます。

2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」の姿

2つの学びを一体的に充実させていく

今回の答申において求められているのは先にも述べた通り「個別最適な学び」だけではありません。もう一つのキーワードである「協働的な学び」は「個別最適な学び」と一体的に充実させていくことが求められています。

「協働的な学び」は2017・2018・2019年改訂学習指導要領において示されている「主体的・対話的で深い学び」にも関わるキーワードです。答申では「探究的な学習や体験活動などを通じ、子供同士で、あるいは地域の方々をはじめ多様な他者と協働しながら、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、様々な社会的な変化を乗り越え、持続可能な社会の創り手となることができる」ように「協働的な学び」を充実させることの重要性を示しています。

『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正

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