カリキュラム・マネジメントとは? どんなことをするものなの?~シリーズ「実践教育法規」~
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- シリーズ「実践教育法規」
教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第21回は「カリキュラム・マネジメント」について。新学習指導要領にて示された新たなキーワードである「カリキュラム・マネジメント」。その役割を理解しやすいよう、PDCAサイクルを用いて解説します。
執筆/小野 まどか(植草学園大学発達教育学部講師)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)
【連載】実践教育法規#21
目次
教育活動の質の向上を図る
カリキュラム・マネジメントは2017・2018・2019年改訂学習指導要領(以下、新学習指導要領)によって示された新しいキーワードです。簡潔に述べれば、新学習指導要領に示されている取り組みを実施することによって、持続的に各学校の教育活動の質の向上を図ることがカリキュラム・マネジメントの目的であるといえます。ここでは、具体的にどのような取り組みが求められるのかをより理解するために、同図表の文面を3点に分けて解説していきます。なお、カリキュラム・マネジメントを理解する上ではPDCAサイクルの流れが重要となるため、図表のイメージ図を用いながら解説していきます。
教育課程を編成・実施し評価に基づく改善を行う
まず、1点目にあげられるのは、児童(生徒)や学校、地域の実態を適切に把握し、教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくことです。この作業は、図表で示したPDCAサイクルのうちのPlanの段階であり、各学校で教育課程の編成を行う段階です。教育課程の編成には年間指導計画や時間割の作成等が含まれますが、この作業をするためには児童や学校、地域の実態を適切に把握することが求められます。その上で、各学校の教育目標を設定し、それを実現するために必要な教育内容は何かを選定していくことになります。
なお、各学校で教育課程を編成する際に把握するべき児童(生徒)や学校、地域の実態とは、例えば、これまでの学習内容の習得度合いだけでなく、特別な配慮・日本語指導が必要となる児童(生徒)の有無、不登校児童(生徒)への配慮等があげられます。また、当該学校の施設設備の状態や教職員体制、これまで培ってきた文化(校風)や、その土地特有の文化、地域人材、チーム学校として支援や連携体制の構築が可能な機関・団体等も重要な情報となります。加えて、選定した教育内容を年間指導計画として組み立てていく際には、各教科や領域で学ぶ内容を関連させあうような教科等横断的な視点で組み立てていくことが求められます。
2点目にあげられるのが、教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくことです。これは図表における編成した教育課程を実施するDoの段階と、評価を行うCheckの段階、改善を図るActionの段階が含まれています。これまで教育活動の評価が行われる一方で、改善が図られているのかという懸念が指摘されてきました。これに対し、評価については学校教育法や同法施行規則によって学校の教育活動や学校運営の状況の自己評価と結果公表が義務づけられていましたが、今回の新学習指導要領によって改善を図ることが明示されたといえます。カリキュラム・マネジメントの実現のためには、評価をして終わりではなく、評価を受けて改善を図ることが求められるのです。
最後に、3点目にあげられるのが、教育課程の実施に必要な人的または物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことです。これは図表における必要な人的または物的な体制を確保するPlanの段階と、その体制について改善を図るActionの段階が含まれています。編成した教育課程を実施するには、専門的な教職員や地域の人材、教材等が必要となります。それらを確保した上で教育活動を行い、その後よりよい教育課程への実現のために改善を図ることが求められます。
以上の3点に取り組むことで、組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図ることがカリキュラム・マネジメントの目的とするところです。特に、これまで以上に、改善をいかに図るかが求められているといえます。
『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正