空気を読んで空気になろう‼️ 教員のための研究授業参観のコツ

連載
マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

元山形県公立学校教頭

山田隆弘

教員どうしがお互いの授業を参観し、学び合う研究授業。わが国独自の教育文化です。これは、各教員の授業力向上、そして全体的な教育の質の向上につながります。しかし、参観者の存在が児童や授業者に与える影響も無視できません。特に児童にとっては、普段と異なる環境で授業を受けることになり、心理的な負担を感じる可能性があるでしょう。研究授業を参観する際に、どうすれば児童への負担を最小限に抑えられ、効果的な参観ができるのでしょうか。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

授業参観は空気になるような気持ちで

研究授業は大切なイベントです。授業者にとっても参観者にとっても、後の授業研究や改善に活かすための大事な材料となります。そのためには、日常的な学習環境での、授業者と児童たちの真の姿を観察する、ということが大前提だと言えます。
児童や授業者の注意を逸らさないようにしなければなりません。参観者は「空気」のように存在するように心がけ、静かに、かつ控えめな態度で参観しましょう。
これは、授業者や児童たちをよく知っている場合でも同様です。例えば児童の集中力が途切れたときなど、授業の流れをサポートしたい気持ちがわきあがっても、ぐっと我慢してください。授業の流れの中で、児童に質問したりするのも慎むべきです。
授業者の意図した授業の流れを尊重し、授業の自然な流れを乱さないように気をつけることで、誰にとっても実践的で有意義な授業研究にすることができます。

参観者としての、参観の心得

参観する時は、以下のような心得が重要です。

⑴ 視覚的配慮

① 服装と身だしなみ
ア 派手な色や柄の服は避け、落ち着いた色合いの服装を心がける
イ アクセサリーは最小限にし、光を反射するものは避ける

② 位置取り
ア 児童の視線を遮らないよう、また掲示物がみえなくならないように立つ
イ 基本的に教室の後方や側面に立ち、児童からなるべく見えないようにする
ウ 授業者の動線を妨げないように注意する
エ 窓際に立つ場合は、できるだけ影が黒板に落ちないよう配慮する

⑵ 聴覚的配慮

音を立てない工夫
ア 履物の音に注意し、静かに歩く(上履き持参がベスト)
イ やむを得ず椅子や机を動かすときは、慎重に慎重を重ねて
ウ ハンカチを持参。咳やくしゃみをするときは、音を抑えるため活用する

会話と発言
ア 参観中の私語は何であれ厳禁。必要な場合は筆談で
イ 質問や確認などは、必ず授業後に
ウ メモを取る際は、ペンの音に注意する

電子機器の使用
ア 携帯電話やスマートフォンは必ず音の出ない状態にする
イ カメラのシャッター音やフラッシュは必ず無効にする
ウ タブレットやノートPCを使用しなければならない場合は、キー入力音に注意する

⑶ 臭覚的配慮

ア 香水やコロンなどの強い香りは控える
イ 衛生的な服装をし、汗のにおいなどがしないようにする(におい発生の予防をする)

⑷ 心理的配慮

① 表情と態度
ア 無表情や厳しい表情は避け、柔らかな表情を心がける
イ うなずきや微笑みなどの反応は控えめに
ウ 腕組みなどをしたり、首をかしげたり等、批判的に見える行動は慎む
エ 授業者が参観者を意識しないよう、目配せ等も控える

児童と同じ気持ちで
ア 笑いの場面、神妙な場面など場面に応じて同化する
イ 授業者の発問や指示を児童と同じように受け止めていく

③ 児童への心理的影響の最小化
ア 特定の児童を凝視しない
イ 児童の行動や発言に対して、過剰な反応をしない。自然に見守る
ウ 近くの児童が緊張しているように感じられる場合は、距離や立ち位置を考えて対処する

授業参観後の心得

⑴ 授業直後、教室内での教員同士の議論は控える

⑵ 児童が退室または下校するまで、「空気」の状態を維持する

⑶ 授業者へのフィードバックは、適切な時間と場所で行う

⑷ 児童にインタビューをしたい場合は、必ず授業者の許可を得る

  <児童へのインタビュー例>
「今日の授業で一番おもしろかったのはどのシーンでしたか?」
「難しかったことは何ですか?」
「もっと知りたいと思ったことは何ですか?」
「今日の授業で新しく学んだことは何ですか?」
「授業の中で、もっと詳しく説明してほしかった部分はありますか?」
インタビューは強制せず、児童の自由意思を尊重。児童のプライバシーに配慮し、個人を特定する情報は慎重に扱う。

⑸ 一礼をして教室を出るなど、敬意を払うことを忘れずに

⑹ 授業後の研究会では、授業の良かった点を具体的に伝え、授業者の自信につながるようなコメントを心がける。改善点を指摘する際は、授業者の感情に配慮し、建設的な提案として伝える。さらに、授業者の努力や工夫を認め、それを言語化して伝えるように心がける

研究授業の参観は、単に授業を観察するだけでなく、自己成長の機会でもあります。より深い学びにつながる参観を目指していきたいです。一人ひとりがより深い学びにつながる参観を目指すことが、教育全体の質向上に寄与することになります。「忍法 空気の術!」を是非会得してください。

イラスト/フジコ


山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。


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