学習指導要領②【わかる!教育ニュース #56】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第56回のテーマは「学習指導要領②」です。
目次
今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会の論点整理6
次の学習指導要領を巡る議論に向け、文部科学省の有識者会議が、「増やす改訂」からの転換を掲げる論点整理(参照データ)をしたことを前回取り上げました。今回は、6つに整理された論点を読み解きます。
1つ目は、社会像の分析と今の指導要領の評価。不登校、特別支援教育の対象、外国籍など、子どもが多様化した社会で、それぞれの強みを伸ばし、資質や能力を育む重要性を説いています。
現行指導要領については、資質や能力を育む視点に「主体的・対話的で深い学び」を打ち出したことを評価しました。ただ、指導要領の趣旨を実現するには、教員の多忙化やなり手不足などが壁になっていると指摘。過度な負担感が生じにくい方策を考えるよう促しました。
次に、これから求められる力を記しています。「学習の基盤の資質・能力」としている、言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力は、どの教科にも共通する必要な力で、中でも、今後重みが増すと見ている情報活用能力の充実策を訴えました。1人1台端末やクラウド環境などデジタル学習基盤も、「今後の学びを支える重要インフラ」ととらえ、活用を前提に学びの方向性を示すよう求めています。
3つ目は、各教科の目標や学習評価について。「主体的・対話的で深い学び」は維持するとともに、教員の裁量を広げるよう提案しています。学習評価では、「主体的に学習に取り組む態度」の意味が明確でないがために、「勤勉さ」で判断するケースも見られるとし、子供が主体性を発揮できる観点で考えるよう促しました。
次に、多様化した子供たちそれぞれの強みを伸ばすためにも、教育課程の編成や、個々の子に応じた教育課程の実施が柔軟にできるよう訴えました。今ある特例制度を活用しやすくし、教科ごとの授業時数、年間の最低授業週数、授業1コマ当たりの時間などを、学校の考えで弾力的に進められるよう検討を求めています。
続いて、教員の負担解消について。原因を丁寧に分析し、「指導要領が定める学習量」「教職員定数」といった部分的な視点でなく、全体を見渡した改善策を議論するべきだとしています。総授業時数は「現在以上に増やすことがないよう検討すべきだ」と明記し、「増やす改訂」からの転換を掲げました。
最後に挙げた論点は、指導要領のねらいを現場と共有することです。今後の中央教育審議会での審議状況をウェブや動画で発信し、分かりやすい資料の公開を提案。改訂への経過を透明化し、新しい指導要領について、保護者も含めて誰もが理解できるよう工夫を求めました。
論点整理では最後に、今後の社会で求められる力を養う学びの設計には、学校関係者だけでなく、社会的な合意が欠かせないと指摘しています。そもそも、子供に何を学ばせるかは、国に任せず、市民が決めるものだ、という視点に立ち、中教審の議論を注視していきましょう。
【わかる! 教育ニュース】次回は、11月15日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子