小学生のケンカ仲裁:質問箱に一日平均30件の人気教師の答えとは?
インスタグラムの質問箱には、全国の先生方から一日平均30件の質問が寄せられるという、京都教育大学附属桃山小学校教諭の樋口万太郎先生に、よく聞かれる質問と、その答えについて教えていただきました!
執筆/京都教育大学附属桃山小学校教諭・樋口万太郎
目次
「Bが泣いているからAが悪かろう」という先入観が危険な理由
「児童のケンカについて、ポイントを教えてください」という質問は、とても多く寄せられます。
まず大前提として、「児童のケンカを指導するときには、先入観を持たないこと」が全てです。
例えば、AとBがケンカをしていて、Bが泣いていたとします。
「Aはいつも暴れているから、きっと今回もこの子が悪い」
「Aはいつも悪口を言っているから、きっと今回もこの子が原因だろう」
「Bは泣いているから、Aはきっとひどいことを言ったのだろう」
「この前のケンカでは、Aが原因だったから・・・・」
このような先入観はとても危険ということです。
泣かせた子、暴力を振るった子、悪口を言った子が、いつでも悪いわけではありません。暴力を振るったり、悪口を言ったりすることは良いことではありませんが、その子にも理由があるのです。その子なりの抵抗するための方法なのかもしれません。そういったことに大人が気づいてあげないと、子どもたち同士では気づくことができません。
しかし、先入観があるとそのような理由に気づくことができない可能性があります。
先入観があると、態度に出ます。言葉に出てしまいます。表情に出てしまいます。だから、できる限り「先入観」を捨てたいものです。とはいっても、先生も人間です。完璧な存在ではありません。先入観をゼロにすることはとても難しいものです。
教師は、ひたすら「ロボット」になりきる
そこで、私は徹底的に「第三者」の存在になろうとします。自分の気持ちなどは一切「無」にするのです。ロボットになるようなイメージです。これがポイントです。
その上で、ケンカになった理由や自分の思いを、当事者それぞれに聞きます。当事者同士で好き勝手に話をさせることは絶対にしません。必ず教師が間に入ります。
でも、子供たちがケンカの原因や自分の思いを話しているときは、基本的には話を遮ることはしません。そして、話の途中で叱ることはしません。今後ケンカの指導をするときに、子供たちは原因や思いを語ってくれなくなる可能性があるからです。「第三者」になりきらないと、このようなことはできないことでしょう。教師は「まだ話したいことはない?」「自分の思っていることを全て言っていいんだよ」などと言って、子供たちに全てを吐き出させるように務めます。
メモをとってケンカの経緯を見える化
またケンカの原因を記録として残すために、メモをしていいかと子供たちに聞いてからメモを取るようにしています。子供が話したことを時系列にまとめ、自分が悪かったところなどを明らかにしていきます。そのメモは子どもたちも見ていいようにしています。見ることで、自分の勘違いがあったとか、ケンカになった原因に自分たちで気づくことができるようになります。
その上で、「先生はこう思うんだけど、どう思う?」といった話をすることもあります。
ケンカ指導最大の目標は「ごめんね」ではない
ケンカの指導は、「形だけの仲直り」を目標とせず「お互いが納得する」ことを最大の目標としています。「ごめんね」と言っても納得していなければ、意味がありません。
普通のケンカであれば、指導は短く行うように意識するのがよいでしょう。でも、短くすることを意識しすぎると納得のいかない話合いになるケースもあります。
いつどこで行うかについても、一概には言えません。すぐに行う時もありますし、落ち着かせたい場合は、少し時間をおいてすることもあります。ケンカしている子同士に決めさせる時もあります。教室の後ろに呼んで指導する時もあれば、廊下に出て行うこともあります。もちろん、命の危険があるような場合にはその場ですぐに叱りますし、いじめの可能性がある時には長期的な計画が必要です。
子供たちやその時の状況から、ケンカの指導の最大目標である「お互いが納得する」をかなえるためにどうするのがベストなのかを考え、臨機応変に対応できるようになりたいものです。