子供たちで問題を発見し解決したと実感できる授業 【全国優秀教師にインタビュー! 中学校編 中1〜中3を見通す! 「高校につながる英・数・国」の授業づくり #4】

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全国優秀教師にインタビュー! 中学校編 中1〜中3を見通す! 「高校につながる英・数・国」の授業づくり
全国優秀教師にインタビュー! 中学校編 中1〜中3を見通す! 「高校につながる英・数・国」の授業づくり #4
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全国学力・学習状況調査の数学で長年、非常に良好な結果を示し続けてきている福井県には「授業名人」と呼ばれる優秀教師認定制度があります。そこで、今回からは福井県の数学の授業名人である、福井市明倫中学校の片谷祐樹教諭に、ご自身の授業づくりを象徴する単元・授業とその裏側にある考え方について聞いていきます。

片谷祐樹教諭
福井市明倫中学校・片谷祐樹教諭

片谷教諭の考え方が象徴される授業は「多角形の角」

取材の最初に、片谷教諭が最も自分の考え方を象徴すると考える授業について尋ねました。すると以前、北陸四県数学教育研究大会(北四と呼ばれ、毎年4県もち回りで大会を開催している)で公開を行った、2年生の「図形の調べ方」の単元の7/15時となる、「多角形の角」に関する最終時の授業を紹介してくれました。

「実はこの単元全体の冒頭となる、『角と平行』の導入では、点を1つ、2つと増やしていくことから点が線になり、線が面(図形)になるというところから学習を進めています。この授業を含む『多角形の角』についての学習では、5点まで点を増やして自由に図形を作らせることから始めました。このように5点まで増やしていくと、教科書に示されているすべての形(三角形、四角形、ブーメラン形、ちょうちょ形、五角形など)を作ることができるのです。その自分たちが作った図形について、どんな特徴があるかを調べていこうという学習の流れにしました。

その中で三角形が出てきたら、『三角形の内角の和は180度。じゃあ、なぜ180度になるの?』ということで、自分たちが身に付けてきた直線は180度ということを使って説明をしてきています。じゃあ、『四角形は?』と考えるときには、三角形の内角の和は180度ということが使えるようになり、さらに五角形、六角形となってそれが一般化されていきます。

そのような『多角形の角』の学習の最後がこの授業です(資料参照)。この授業では、これまでに調べてきた図形を見せながら、まず各自5点を結んで自由に星形を描かせてから内角の和を予想させます。すると、これまでの学習から180度と予想する子、360度という子がおり、数学が苦手な子の中には(おそらく見た目が美しいから?)100度という子供もいます。そこで実際に分度器を使って測ってみると180度になっているので、『じゃあ、180度になることを証明してみようか』と投げかけ、まず個々で考えていくのです」

(資料)指導案

指導案

「何もない状態で考えさせるのは苦手な子供にとってはむずかしい」

ただし、何も考える手がかりがないまま証明していくのは苦手な子供にはむずかしいため、既習を使って証明することができる図形の性質をアイテムとして提示。まず個別に考え、さらに独力では証明がむずかしい子供もいるため、各グループに分かれて考えを整理し、発表していったと言います。

「何もない状態で考えさせるのは苦手な子供にとってはむずかしいため、三角形の外角や平行線の性質など、これまでの学習で説明することができたもの(子供たちが納得できた証明)で角を移動していくための方法(あるいはそのヒントになるもの)をアイテムとして示し、それを意識しながらまず独力で証明を考えていきます(移動された先の角a、bなどの印はアイテムには示していない)。

そこからグループになって、各個人の証明(あるいは途上の子供は使おうとしているアイテムや考えの方向性など)を出し合い、グループごとに1つの方法を整理してホワイトボードに書いて、発表していきました。ちなみに①〜③までの考え方は、5つの角を1つの三角形の中に移動していく方法をとっており、④は直線に移動していくものです。当然のことですが、いずれも三角形の内角の和と直線が180度になるという、それまでの学習を使って証明します。

実際に各グループからの発表では、(それまでの学習の)後半でやった②ブーメラン形や、補助線の引き方も学習した後だったので、④平行線の性質が多く出てきました。③ちょうちょ形のような2つの角をたしたもの(b+d)を移動してくるようなアイテムを使うグループは少なかったですね」

そこから改めて、最初に自分が描いた星形の図を使って、「ああ、この考え方はいいな」と思った方法を使って、星形の内角の和が180度になるという説明を整理し、結論は同じでも多様な方法で求めることができることを確認して授業を終えた、と話します。

授業の様子
各グループで選んだ証明方法について、アイテムを使いながら説明していく子供たち。

「自分たちが発見したことって、すごい」「自分たちって、できるんだ」

このような授業説明をする中でも、何度も「この単元では」という言葉を使う片谷教諭。やはり単元としての構成を工夫するからこそ、子供たちが主体的に学習に取り組みながら、なおかつ自分たちで問題を発見し解決したと実感(実際には、教師の側の明確な意図による単元構成によって、そのように仕向けられているのですが)し、自信がもてるのだと話します。

「この単元は、最初に説明したように、点を増やしながら、それらをつないで図形を作る、『点つなぎ』の遊びを使って進めていきます。その子供たちが作った図形について調べていく中で、学ぶべき内容がすべて学べるようになっているので、子供たちは自分たちで授業を進めているという気持ちになります。自分たちで作った図形を使いながら学習が進んでいくし、自分たちが見付けたことが次の学習の根拠になっているわけですからね。

そういう学習を繰り返していくと、『自分たちが発見したことって、すごい』『自分たちって、できるんだ』『数学っておもしろいかも』と思ってくれます。そのような学習過程を大事にしたいと考えています」

では、その単元構成とはどのようなものなのでしょうか。次回は、この授業を含む「図形の調べ方」の単元構成について紹介していくことにしましょう。

【全国優秀教師にインタビュー! 中学校編 中1〜中3を見通す! 「高校につながる英・数・国」の授業づくり】次回は9月27日公開予定です。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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