「MOOC」とは?【知っておきたい教育用語】

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【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】
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情報技術(IT)の発達によって、教育の在り方が大きく変化しています。MOOC(ムーク)もその変化の一つです。MOOCによって、世界各国の大学の講義がどこにいても受けられるようになりました。

執筆/創価大学大学院教職研究科教授・宮崎猛

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インターネット上で世界中の講義を無料で受けられるMOOC

【MOOC】
MOOC(Massive Open Online Course)は、広く公開されたオンライン講座で、世界の有名大学の講義をどこからも視聴することができるプラットフォーム。大規模性(Massiveness)、公開性(Openness)、オンライン(Online)、コース(Course)を基本的な特徴とするもので、無料での提供が基本になっている。複数形のMOOCs(ムークス)と表記されることもある。

「MOOC」という用語は、2008年にカナダの大学の公開講座で使われたのが最初といわれています。2011年にスタンフォード大学から配信された「人工知能入門」が、世界中から多くの学習者を集めたことによって世界的に認知されるようになりました。2013年には、アメリカ版MOOCに加え、フランス・ドイツ・中国・日本などの諸言語圏で母国語を中心に地域MOOCが開設されました。

日本版MOOCである、JMOOC(ジェイムーク)は、2013年に日本語での提供を目的として一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会によって設立されました。

MOOCが登場した背景

MOOCは、情報技術の発展によって可能になったものであることはいうまでもありません。科学技術の進展による平等で豊かな社会の実現には、住んでいる場所や貧富の差などに関係なく知や技術が人々の間で共有されることが望まれます。

これまで高等教育は、一部の人々に占有されてきたという側面があります。ところが、MOOCでは、インターネットに接続することができれば国境を越えて誰でも高度な教育を受けることができます。年齢の制限もありません。MOOCは、高等教育を受けられず、就職機会に恵まれなかった人々にとって有益な機会となり得るものなのです。また、変化の激しい現代は、雇用流動性が高く、知識や技能は常にその更新が求められます。生涯教育としても機能するといえるでしょう。こうしたニーズに応える形でMOOCは生まれ、発展してきました。

MOOCの特徴

MOOCは、これまで行われてきた公開講座とは異なり、一つのコースとして提供され、コースの目標、内容、評価方法などのシラバスが明示されているのが一般的です。また、数多くの受講者(数千人から、場合によっては数万人)規模の受講者がいる場合でも、その多くでは参加者同士での交流や講師への質疑が行われています。

修了の証明や単位なども認定されます。つまり、MOOCでは、高等教育そのものが提供されているといえるでしょう。ハーバード大学やスタンフォード大学など、世界トップの大学が講座を提供しており、多くの人にとって本来手の届かなかった大学の講義を受けることができることも魅力となっています。

MOOCの課題

MOOCの広がりとともに、その質の保証も重要になってきました。有名大学は、そのブランド力で受講者を増やすことができます。一方でMOOCの一つのコースを最後まで受講する参加者は10%程度ともいわれています。専門性は何よりも重要ですが、モチベーション維持のための難易度や、サポート体制の確立などが求められています。大学のブランド力だけではなく、社会や参加者のニーズに沿った内容と教育方法の提供が課題となっています。

「ハーバード大学の授業が無償で受けられる」などと喧伝された一時のような話題性はなくなってきているように思われます。MOOCが目指している、「誰でも高度な教育を受けることができる」「興味のある学問をいつでも学ぶことができる」といった学習機会の重要性は、色あせるものではありません。地道に基盤を形成していくことが求められるでしょう。また、今後は高等教育だけではなく、初等中等教育版のMOOCも期待されるところです。

▼参考資料
山田恒夫(PDF)「MOOCとは何か ポストMOOCを見据えた次世代プラットフォームの課題」2014年
文部科学省(ウェブサイト)「MOOC等を活用した教育改善に関する調査研究
IT業界まるわかりガイド(ウェブサイト)「MOOC(ムーク)とは?世界で注目されている学習方法でスキルアップ」2023年2月22日

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