図工のアイデア出しに困っている児童はいませんか? こんな方法でサポートしてみよう!
高学年の単元では、木を描いたり、建物を描いたり、自分のお気に入りの場所を描いたりと、風景を描く内容が出てきます。しかし、いざ描き始めようとしても、
「何を描けばいいか分からない」
「どこを描けばいいか分からない」
と真っ白の画用紙を見つめてうなだれている児童をちらほら見かけます。そのようなとき、これから紹介する2つの方法を試してみてはいかがでしょうか?
題字・イラスト・執筆/埼玉県公立小・中学校教諭 坂齊諒一
連載【いちばん楽しいアート】#06
方法を紹介する前に、児童がすぐに描き始められない理由を考えてみましょう。例えば、4年生「木々を見つめて」という単元で木を描くとします。そのとき児童の頭の中には、
「現実の木に近いものを描くのかな?」
「うまく描きたいな!」
「友達と比べて絵を描くことが下手だから、いやだなぁ」
という考えが無意識に生まれます。理由は様々あれど、傾向として大体が技術面に関することで悩んでいます。
「そう思ってしまうよね。気になるよね」
とその気持ちに寄り添いつつも、この悩みから脱却させられるかどうかがポイントです。
小学校の図画工作では、写実的に描く力を高めるという内容は学習指導要領に載っていません。描きたいと思った絵を描く、表現できるようにすることが求められます。
また、何か一つ描くものが決まったとしても、決まったものだけしか描かずに終わってしまうこともあります。そこから広がりがなく、
「木は描けたけど、その他は分からない」
「建物だけを描いてもう満足」
という状態に陥りやすいです。解決するためには、絵を描き始める前にアイデアやイメージをたくさん膨らませておく必要があります。
1 ストーリーから考える
4年生の「木々を見つめて」の単元を例に考えてみましょう。フィクション、ノンフィクション関係なく、この木にまつわるお話を考えます。
そこには5つのW(When:いつ Where:どこで Who:誰が What:何を Why:なぜ)を入れるようにすると、子どもたちが絵を思い描きやすくなります。
【ストーリーの例】
あたりが薄暗くなる頃。集合場所は丘の上にある高い木の下です。荷物を持ってウキウキしている友達が満面の笑顔で丘を登っていきます。
「僕は線香花火が楽しみなんだ! 落とさずに最後までできるといいな」
「手持ち花火をたくさん持ってきたよ! 両手に持つのが楽しみだな!」
と待ちきれない様子です。木の下にはもう何人か待っています。涼しい風が吹いて、木の葉がさらさらと揺れています。木もこれから行われる花火が楽しみなようです。
花火から赤、青、緑、黄色の火花が出ています。その火花に合わせて木も踊っているようです。カラフルな火花に照らされて、木の葉っぱが虹色に輝いています。
どうですか? こんなふうに、そのときの状況や細かい設定を考えておくと、頭の中に情景が浮かんできやすくなりませんか?
2 目立たせたいものの周りに何があるか考える
ある程度現実に即した絵を描く場合には、お話を考える方法は難しいと思います。その場合には、最初に、描きたいものの周りに何があるかを観察して、気に留めるように促してあげましょう。
例えば、椅子に座った友達の絵を描く場合、絵に描く対象の
●遠くに何が見える?(窓があるなら、窓の向こうにはどんな景色が見える?)
●近くには何がある?(椅子やカバンなど、身の回りのものはある?)
●周りに他の人や動物はいる?
●手前には何かある?(机が前にあるなら、その上に何か載っている?)
と、絵に描く対象を中心とした周りにあるものを観察するようにしましょう。
周りの状況が分かっていない状態で描き始めてしまうと、描きたいものだけ描いて、他はわからないので白紙のまま、ということになりやすくなります。
どちらの方法も、アイデアを出したり、完成を想像しやすくしたりするためのものです。試してみてはいかがでしょうか。
【著者プロフィール】
坂齊諒一●さかさいりょういち
1991年埼玉県生まれ。文京学院大学人間学部児童発達学科卒業。埼玉県公立小学校教諭として7年間勤務した後、2022年に一旦退職。翌年度から小学校、中学校教諭として勤務しながら、フリーランスイラストレーターとして活動を始める。企業や教育委員会からの依頼で絵を描きつつ、教員の働き方や図工の授業について研究をしている。