図工の時間、絵を描くことが嫌いな子にどう対応したらいい?

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何事も一定数嫌い、もしくは苦手と感じている人はいます。絵が嫌いな人に対して「好き」にさせるところまでは出来なくても、絵を描いている間に感じている「嫌い」という気持ちを少しでも軽くしてあげたいところですね。
児童の気持ちに寄り添うための提案です。

題字・イラスト・執筆/埼玉県公立小・中学校教諭 坂齊諒一

【いちばん楽しいアート】#03

まず、どこに嫌いと感じさせる原因があるのかを考える必要があります。「気持ち」の面なのか「技術」の面なのかがはっきりすると、対応がしやすくなります。

絵を描くための技術面で嫌いな場合

「何色を使えばいいか分からない」「線を綺麗に引くことができない」「遠近感を出すことができない」などの技術が足らないことによるものに関しては、先生が技術を見せる、もしくは教えることが必要です。しかし、教える中で重要なことがあります。それは、

「方法をいくつか示し、児童がその中から選ぶ」という過程を踏むこと、
「自分が納得して選んだ方法で上手に描けたなと思える経験をする」ということ
です。例えば、

ここに影を付けたいけど、方法が分からないので教えてください。

そこに影を付けたいんだね。工夫しようとしていていいね!
3つ方法が思い浮かんだよ。

水をたっぷり含ませた暗い紺色で影の部分を塗る。
水を少し含ませた薄い白で光の当たっているところを塗る。
影を付けたい部分の色を濃くする。

私はこう思うよ。この中から選んでもいいし、今の話を聞いて別の方法が思い浮かんだらそれでも大丈夫だよ。自分で決めて描いてみて。また困ったら教えてね。

このように私は会話を進めます。その後少し時間を空けて、
「さっきの悩みはどうなった?」
と声を掛けて必ず見届けをしましょう。
これにより、
「描かされたのではなく自分で決めて描けた」
という経験と
「悩んでいた時よりもよく描けた」
という達成感を得ることができます。
もし、児童が失敗だと感じていたとしても、他責にならないことが大切です。

絵を描くことが、気持ちの面で嫌いな場合

絵を描くのが嫌いな理由は様々です。絵を描く行為自体が嫌い、上手に描けないから嫌い、上手に描けない自分を受け入れられない、友達と比べて下手だから嫌い、楽しくない、面倒くさい、友達にどう思われているか不安になるから嫌い、などあります。
しかし本来、図工はあらゆるものを自由に使って作ったり、描いたり、表現したりする時間であり、誰かと比べて技術の有無を判断したり、他の人の目を気にして作るものではありません。
そのことを児童と共有すればいいわけです。つまり、気持ちの面で絵を描くのが嫌いな場合は、誰でも児童を元気づけることができます。
「そのように思ってしまう気持ちはよくわかるよ」と寄り添いながら、私は以下のように伝えます。

上手い下手について気にしてしまう気持ちは分かるよ。苦手だなとか、上手くできないなと思っているものに向き合うことは、大変だよね。
そんな中で、絵に向き合っているあなたは凄いよ!
また、先生は『上手に描きましょう』なんて言ってはいません。あなたが描きたいと思って描いたものが見たいよ!

今回紹介した方法は、ほんの一例に過ぎませんし、人の気持ちや意識を変えることはとても難しく、複雑で、時間のいるものです。
しかし、教師側が児童のあらゆる表現をいったん受け入れ、そこから考えていこうという姿勢を示し続けたり、「先生が自分の悩みに向き合ってくれている」という気持ちを児童が感じたりする図工の時間になれば、少しずつでも空気が変わっていくと信じています。

楽しく絵を描く

坂齊諒一

【著者プロフィール】
坂齊諒一●さかさいりょういち
1991年埼玉県生まれ。文京学院大学人間学部児童発達学科卒業。埼玉県公立小学校教諭として7年間勤務した後、2022年に一旦退職。翌年度から小学校、中学校教諭として勤務しながら、フリーランスイラストレーターとして活動を始める。企業や教育委員会からの依頼で絵を描きつつ、教員の働き方や図工の授業について研究をしている。

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