小学校の教室で「子どものストレス」をゼロにするために。やってみよう、ストレスマネジメント教育

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ストレスフリーの教室をめざして
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春日智稀
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コロナ禍を過ぎ、「アフターコロナ」と呼ばれる今の社会ですが、子どもたちの周りにはストレスがいっぱいです。「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によれば、いじめの重大事態や不登校児童生徒数が増加の一途を辿っています。そんな学校現場では、教師も子どもも「ストレス」を正しく理解し、適切に対処する力を身に付けさせることが求められます。今回は、学校現場の視点から「子どものストレス」について考え、学級でできるストレスマネジメント教育についてまとめました。

【連載】ストレスフリーの教室をめざして #01

執筆/埼玉県公立小学校教諭・春日智稀

1 そもそもストレスって?

そもそもストレスとは何でしょうか。「ストレス」という言葉は、もともと物理学の用語で「外からかかる圧力による歪み」を指す言葉として用いられていました。これを、「ストレス学の父」と言われたカナダのハンス・セリエ博士が精神医学に導入し、広く一般的に認知されるようになりました。

ストレスは、「ストレッサー」と「ストレス反応」の2つに分けて考えることができます。

ストレッサーとは、ストレス反応のもとになるものです。物理的ストレッサー(騒音・高温など)・化学的ストレッサー(化学物質による刺激など)・生物的ストレッサー(細菌・花粉・ほこりなど)・心理社会的ストレッサー(人間関係など)などがあります。

ストレス反応とは、ストレッサーに対して生じる心とからだの変化のことです。この反応は人によって様々で、心理面・行動面・身体面に生じてきます。同じストレッサーであっても、ストレス反応が生じる人とそうでない人がいます。

ストレッサーについて
ストレス反応について

2 プラスとマイナスのストレス

ストレスは、すべてが悪いものではありません。
例えば、
「同じチームに自分と同じくらいの実力をもったライバルがいる。あの人に勝たないとメンバーに入れない」
という状況は、本人にとっては
「メンバーに入れなかったらどうしよう…」
とマイナスに働くこともありますが、
「あの人に負けないようにたくさん練習しよう!」
とプラスに働くこともあります。つまり、その人の「見方・考え方」ひとつでプラスにもマイナスにもなるのです。

プラスとマイナスのストレス

3 学級でできるストレスマネジメント教育

学級でできる授業には、どんなものがあるでしょうか。
動作とイメージによるストレスマネジメント教育〈基礎編〉(冨永良喜・山中寛 編著/北大路書房)では、「ストレスマネジメント教育」として次の4つの段階を提唱しています。

ストレスマネジメント教育の4段階

第1段階では、「ストレスとは何か?」を学びます。子どもは、そもそもストレスを自覚していないことも多いため、正しい知識を身に付けることが必要です。ここでは、ストレスをボールに例えて説明すると分かりやすいです。ボールをへこませるものが「ストレッサー」、元に戻ろうとするのが「ストレス反応」です。事前にアンケートを取っておき、「ストレスはだれでも経験しているもの」、「ストレス反応は人によってさまざまであること」などを導入で確認できるとよいでしょう。

第2段階では、自分のストレス反応に目を向けます。どんなことをストレスだと感じるか、そのときどんな反応が出ているかに気づかせます。授業ではこれまでの生活を振り返り、イライラしたり不安になったりした経験を想起させます。これは「ストレス反応」ですので、その背景には元になる「ストレッサー」があることを確認します。

第3段階では、ストレス対処法を習得します。ストレス対処は「コーピング」とも呼ばれ、コーピングの種類が多様であれば、ストレスとうまく付き合うことができると言われています。例えば、リラクゼーション法、呼吸法、イメージ法などがあります。小学校高学年以降では、自分の認知(ストレスの捉え方)をストレスの少ないものに転換する活動もよいでしょう。学級活動で行う場合には、ペアやグループでたくさんのコーピングアイデアを出したり、養護教諭やスクールカウンセラーにT2として参加してもらい、先生のコーピングを紹介したりすると、多様な考えにふれることができます。

第4段階では、ここまでに学んだストレス対処法を日常生活で活用します。自分に合うものとそうでないものがありますので、まずはいろいろな対処法を試してみて、自分で効果が実感できるものを使うとよいでしょう。家庭の協力を得て、親子で考えられるとさらに効果的です。例えば「コーピングカード」を用意して、期間を決めて「ストレスを感じた場面」と「コーピング」を記録しておきます。期間後に自分の取組を振り返ることで、学んだことを定着させることができます。

※改めてストレスに気づくことで、これまでにはなかった反応を示す子どももいます。適切なフォローをしましょう。

これらの「ストレスマネジメント教育」は、学級活動や総合的な学習の時間、道徳など、教科横断的に実施することができます。また、朝の会や帰りの会など、短時間で実施することもできます。

4 子どもがSOSを出せる 大人がSOSに気付く

子どもがストレスを感じて一人では対処できないときには、SOSを出せるようにすることが大切です。まずは「人に相談する」ことです。友達でも先生でも家族でも構いません。だれかに話すだけで、心のモヤモヤが晴れることがあります。そのためには、日頃から良好なコミュニケーションを取っておくことが必要です。学校であれば「学級経営」、家庭であれば「家族の雰囲気」をより良くしましょう。

とは言え、子どもは「じっとがまん」していることもあります。そんなときには、周りの大人がSOSに気付いてあげることも大切です。サインとしては、感情(イライラ・不安・よく泣く)・行動(学校に行きたがらない・何にも興味関心を示さない)・身体(頭痛・腹痛・食欲不振)・学業(成績の低下・集中できない)などがあります。日頃からよく子どもたちを観察し、些細な変化に気づいてあげることが大切です。

イラスト/坂齊諒一

【参考引用資料】
令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査/文部科学省
※『動作とイメージによるストレスマネジメント教育<基礎編>』/冨永良喜・山中寛編著/北大路書房

<プロフィール>
春日智稀(かすが・ともき)
2015年より埼玉県公立小学校教諭。体育主任・生徒指導主任・研究主任・教務主任などを担当。
日本生徒指導学会 日本学校教育相談学会 会員。

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