現役教員兼イラストレーターが提案! 適切な声掛けで、図工の授業を最高に楽しい表現活動の場にしよう!

関連タグ
いちばん楽しいアートバナー

みなさん、図工の指導は好きですか? 「私には絵心がないから苦手だなぁ…」とか「未経験なのに図工の専科を担当することになってしまった!」など、苦手意識や不安を持っている先生も多いのではないかと思います。しかし、ポイントを押さえれば、図工の授業は決して難しいものではありません。むしろ児童生徒とワクワク盛り上がれる時間になりますよ。そんなコツを、現役教員として小・中学校の図工を指導しながら、プロイラストレーターとしても活躍している坂齊先生に聞いてみましょう。今回は授業での効果的な声掛け法についてです。

題字・イラスト・写真・執筆/埼玉県公立小・中学校教諭 坂齊諒一

図工の授業の声掛け

図工の授業中の声掛けは難しいですよね。私も未だに悩みますが、大きく分けて4つの声掛けがあると考えます。そして、どのような声掛けを増やしていけば良いか、今までの経験から固まってきたものがあります。

① 児童の「見てほしい」という気持ちを満たす声掛け
② 児童の「作り方が分からない」を解決する声掛け
③ 児童の「何を作ればいいか分からない」を一緒に考える声掛け
④ 児童の「素敵な表現」を見つけたこと知らせる声掛け

主にこの4つの声掛けがあると考えます。児童の気持ちを満たし、技術的な問題を解決し、一緒に悩み、その結果できた作品や表現を見届ける、という流れです。

ここで重要なことは、①〜③は児童から、④は教師から始まるということです。極端に言い換えれば、①〜③は児童から声をかけられるまではせず、④の声掛けをたくさんする、ということです。

授業をしていると「技法を教える」ことに偏りやすいです。なぜなら「このように描きましょう」「このように作りましょう」とある程度明確なことを伝える方が楽だからです。加えて、予定されている美術展などがあった場合にはさらに拍車がかかることでしょう。それはあくまでも教師側の都合なので、児童に感じさせてはいけないところです。また、自分が作っている作品に「もっとこうした方がいい」と言われた時、ご自身はどう感じるでしょうか?教えてもらいたいと思って言われた場合ならまだしも、何も望んでいない時に言われるアドバイスほど野暮ったいものはありません。

では、子どもの仕草や発言からどのように声掛けをすればよいか具体的に考えてみましょう。今までの経験から図工の授業中によくある発言は以下の通りです。

「これ見てください!」→ 
「この描き方、作り方がわかりません。」→ 
「これからどうすればいいですか?」→ 

この3つです。

「これ見てください」という旨の発言があった時には「上手いね!」という技術の良し悪しだけにならないような返答をしましょう。「ほんとだ! 〇〇みたいだね!」「いいねえ。丁寧に描こうとした気持ちが伝わってくるよ」など、児童の発言をそのまま認めるように返答できると、児童の気持ちは満たされやすいです。またそれに加えて、④の声掛けの内容も伝えらるといいですね。

「この描き方、作り方がわかりません」という旨の発言に対しては、いくつか方法の提案をします。いくつか描き方、作り方を示して最終的な判断は子供にさせることが重要です。例えば、絵で影を付けたい場合で考えてみましょう。「太陽の位置はどこにあるイメージかな?」「そこに太陽があるなら影はこちら側にできるよ。ただ、リアルに描く事が全てではないから、どこに影を描くかは自分で決めてね」「参考になるように先生が影を描こうか?」など、最終的な決定は子どもに委ねるような声掛けをしましょう。

「これからどうすればいいですか?」という旨の発言に対しては、慎重にならなければなりません。この発言は自分の表現活動の内容を自分で考えていないので、相手の考えを引き出すような返答が必要です。まずは、「自分の作品作りの内容は人に決めてもらうものではなく、自分で決めるもの。自分で決めたものを作ることは楽しいことだよ」と伝えます。次に、「今の所のイメージはある?」「自分の好きなものと組み合わせてみるのはどう?」「どんな雰囲気の絵にしたい?その雰囲気を出すためには何があったらいいかな?」など自分の考えを言いやすくなるような質問を投げかけましょう。そこから会話を広げて話しているうちに、子どもの中でイメージが固まりやすくなります。

手の工作

どれも大切な声掛けですが、今回は④の声掛けを少し深掘りしてみましょう。④の声掛けは「もっと作りたい」「もっと作品を見たい」「もっと楽しみたい」という気持ちを伸ばすものです。具体的に例を用いて考えてみましょう。これは私が授業中に児童と一緒に作った作品です。これに対して「素敵な表現」を見つけたことを知らせるために、どのように声をかけますか?

「手の厚みがよく表現出来ていていいね!」「指の曲がり具合の表現がすごいね!」でもいいのですが、ここから更に突っ込んで相手との会話を1ラリーでも入れられるといいです。例えば「この表現はどうやって思いついたの?」「今にも動き出しそうな手の形をしているね。どうすればこの形にできるの?」など作品に関する疑問を投げかけてみましょう。そうすると、児童は「自分の作品は素敵な表現ができたんだ」「先生に興味を持ってもらえた」「なんだか分からないけど見てもらえて嬉しいな」と感じ、自然と作品作りに意欲的になりやすくなります。また、悩んでしまって作品が作れない子、図工が苦手で嫌いだという子に対しても声を掛けられます。「悩んでいるんだね。いつでも相談乗るよ!」、「先生は頑張っている〇〇さんを知っているよ」や「〇〇に見えるね。あれー、違った? じゃあ、何を描いているのか教えて!」など、声掛けの工夫は無限大ですね。

教師が技法を教えることも必要ですが、基本は「児童が楽しんで表現活動をする」ことです。声掛けに悩んだらまずは児童の表現の「素敵」を見つけて声に出してみましょう。こちらの予想を上回る表現が生まれるかもしれませんよ。

声掛けする先生

坂齊諒一

【著者プロフィール】
坂齊諒一●さかさいりょういち
1991年埼玉県生まれ。文京学院大学人間学部児童発達学科卒業。埼玉県公立小学校教諭として7年間勤務した後、2022年に一旦退職。翌年度から小学校、中学校教諭として勤務しながら、フリーランスイラストレーターとして活動を始める。企業や教育委員会からの依頼で絵を描きつつ、教員の働き方や図工の授業について研究をしている。

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
関連タグ

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました