保幼小連携&情報共有 おさえておきたい大切なポイントとは

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兵庫県公立小学校校長

俵原正仁

幼稚園・保育所・こども園と小学校との引継ぎ会、情報共有会で取り入れたい実践法を俵原正仁先生が提案。おさえておきたい大切なアドバイスやポイントを参考に、子どもへの愛を共有した有意義なやり取りに努めましょう。

執筆/兵庫県公立小学校教諭・俵原正仁

たわらはら・まさひと●1985年兵庫教育大学卒。座右の銘は、「GOALはHAPPY ENDに決まっている」。好きなお節は、栗きんとんです。著書は、『若い教師のための1年生が絶対こっちを向く指導!』(学陽書房)他。

引き継ぎ会・情報共有会 成功の秘訣は…

スーパー保育士と呼ばれ、現在、こどもコンサルタントとして活躍している原坂一郎氏は、幼稚園・保育所・こども園と小学校との引継ぎ会・情報共有会(以下、引継ぎ会)について、次のように述べています。

名目は単なる「情報共有」「連携」かもしれませんが、園としては「探り」「調査」にしか思えず、ついついいいカッコをしようとします。結果、正直に話すと学校や子どもたちに迷惑をかけそう、と思うものは過少に話す傾向があります。学校の先生の方から「ありのままを話してもらう方が助かる」というニュアンスで言うと、安心して「本当のこと」を話してくれます。キーワードは、子どもと同じく「安心感」です。

『若い教師のための1年生が絶対こっちを向く指導!』学陽書房 俵原正仁、原坂一郎著

つまり、引継ぎ会を成功させるためのはじめの第一歩は、幼稚園や保育所・こども園の先生方(以下、園の先生)に安心して話してもらうための雰囲気づくりということになります。

園の先生に安心して話してもらう

まず、会の最初に、園の先生方に笑顔になってもらいましょう。話の導入で、その園の卒園児の頑張りを話すのです。

そう言えば、去年の引継ぎで名前が出ていた内藤くん、すごく頑張っていますよ。

この間も、生活科の『むかしのあそびをたのしもう』の授業で、とても上手にコマを回していたんですよ。『内藤くん。上手だね』と声をかけたら、『幼稚園の時に、たくさん練習したから』と、嬉しそうに答えてくれました。

子どものことをほめられて、嫌な顔をする先生はいません。きっとニコニコ笑顔になるはずです。場の空気は和やかになります。

ふたを開けたら、てんやわんや……(汗)

私の勤務校では、年によって若干増減はあるものの毎年10ほどの幼稚園、保育所・こども園から新入生がやってきます。複数の園と引継ぎ会を行わなければいけない場合、話を聞く側が意識しておかなければいけないポイントがあります。

それは、それぞれの幼稚園や保育所によって『先生方の気になる基準が違う』ということです。

例えば、絵本の読み聞かせに力を入れているA幼稚園の場合、絵本を読んでいる間、椅子に座って話を聞くことができないHくんの行動は、気になる行動として上がってくるのですが、竹馬や一輪車など戸外での運動遊びに力を入れているB保育所からは、Hくんと同じようなタイプのMくんがいたとしても、話題に上ってくる可能性は低くなります。つまり、小学校側では、Mくんについてはノーマークの存在として認識されるのです。

そして、その認識のままクラス分けを行った結果、4月になって、ふたを開けてみると、じっくり話を聞くことが苦手なHくんとMくんが同じクラスになり、てんやわんやの大騒ぎになることがあります。

新学期が始まり、通達のなかった子でてんやわんやになることも

そうならないためには、小学校側から全ての園に対して、共通の基準を示さなければいけません。先の例の場合なら、「椅子にじっと座って話を聞くことが難しいお子さんはいますか?」と尋ねるのです。このように聞けば、B保育所の先生も、「Mくんという活発で元気な子がいるのですが、じっと話を聞くことは苦手です」と、Mくんのことを教えてくれるはずです。こうすることで、教師が欲しかった情報を集めることができるのです。

できれば、このような聞きたいことを、前もって各園に伝えておくことができれば、当日の話合いはよりスムーズに進みます。

聞きたいことを前もって園に伝えておくとよい

また、お話し好きの園の先生がいる場合、ある話題で盛り上がってしまい、ふと気付けば、一つの話題だけで予定終了時刻間際になってしまうことがあります。保幼小の交流が目的であれば、それでもよいのですが、引継ぎ・情報共有という点で言えば、これではいけません。

園によって情報の偏りが出ないように、あらかじめ聞きたいことをリストアップしておく必要があります。小学校側がイニシアティブをとって、リストアップした項目を尋ねていくことで、全ての園から共通した内容の情報を引き出すことができるのです。

具体的には次のような項目です。

□健康状態で気になる子はいないか?
□食物アレルギー等の配慮がいる子は?
□交友関係で気になることはないか?
□家庭での様子、家庭の事情
□就学にあたり、気を付けておいた方がよいと先生が感じていることはないか?
 ・挨拶や身支度の様子
 ・生活上のきまりを守る様子
 ・話を聞く時の様子
 ・集団活動や遊びの様子 ……等

このような項目を聞き取りシートという形でまとめて、引継ぎ会に持っていきます。状況が許せば、あらかじめ依頼状と共に各園に配っておいてもよいかもしれません。

そして、当日は、これらの項目の他に、もう一つ、必ず聞くことがあります。それは、「何か大きなトラブルはありませんでしたか?」ということです。園児同士、保護者同士の大きなトラブルがあった場合、しっかり聞いて、意識して手立てを打っておかないと、同じようなトラブルが再発することがあります。幼稚園で大きなトラブルがあったことを知らずにクラス分けをして、入学式当日「何で、あの子と同じクラスなんですか?」というクレームが来たこともあります。4月からのスタートをあえてマイナスから始める必要はありません。

「何か大きなトラブルはありませんでしたか?」は、トラブルを未然に防ぐためのキラーワードなのです。

時には、園の先生から次のような質問をされることもあります。

小学校入学までに何かやっておかなければいけないことってありますか?

正直、2月や3月にこのようなことを聞かれても、「もう遅いわ!」というのが本音なのですが、ニッコリ笑顔で次のように答えます。

1.きちんと話を聞けるようにしてほしい
2.立ったまま靴を履けるようにしてほしい

「話を聞けるように……」については、説明の必要はないと思います。1か月そこらでクリアするのは非常に難しいミッションだということは、もちろん分かった上であえて言うのです。

「立ったまま靴を…」については、私もベテランの先生に教えていただいたことなのですが、その理由を聞いて「なるほど!」と舌を3回半巻きました。外靴から上靴に履き替える度に、1回1回座って履いている子は、全体の動きから1歩も2歩も遅れてしまうのです。年長組になったら、座らずに立ったまま靴を履く練習をしている園も多いようですが、確認の意味も込めて、伝えておいた方がよいと思います(一年生入学説明会で、保護者に話すこともお勧めします)。

幼児指導要録「書庫に直行」になってませんか

小学校に指導要録があるように、幼稚園や保育所にも、幼稚園幼児指導要録や保育所児童保育要録(以下、要録)があります。要録を送付することは、学校教育法施行規則並びに保育所保育指針に定められているため、100%小学校に届いているのですが、送付されたものを受け取って、そのまま書庫に直行ということもあるようです。

意外と学校の先生は、この要録をじっくりと見ていないのです。口頭で引継ぎをして、それで十分だと安心しているのかもしれませんが、要録が届いたら、引継ぎ会で得た情報を頭に入れた上で、必ず目を通してください。園の先生方の思いが詰まっています。しっかり受け止めて、小学校での学びにつなげましょう。

・話の冒頭でその園の卒園児の頑張りを伝える
・事前に各園へ聞き取りシートを配布する
・トラブルを未然に防ぐためのキラーワード「何か大きなトラブルはありませんでしたか?」
・園から要録が届いたら必ず目を通すこと

イラスト/大橋明子、横井智美

『教育技術 小一小二』2020年1月号より

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